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動物愛護管理指針見直しに対する要望書

動物愛護管理基本指針の見直しに際し、2月22日、環境省へ以下の要望事項を申し入れしました。(2013.5.19掲載)


平成25(2013)年2月22日

環境省自然環境局総務課
動物愛護管理室 御中

「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」
(動物愛護管理基本指針)見直しへの要望

 昨年改正された動物愛護管理法の理念が十分に運用に反映されるよう、以下の通り「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」(以下、基本指針)の見直しを要望いたします。

【具体的な施策への追加要望事項】
以下は、新たに具体的な施策として追加していただきたい事項です。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

1.殺処分の削減については、数値目標だけではなく、「質」の担保を

殺処分を半減させるという目標については、数値達成だけではなく、「質」の担保にも重点をおくように記載を改めることを要望します。数の達成を主眼とするあまり、安易な譲渡先の選定が行われている実態があります。その結果、飼育放棄や繁殖によって譲渡先から再び動物が行政の収容施設に戻ってきたり、ネグレクトなどにより適正に飼養されないのでは意味がありません。譲渡に際しては、簡単な講習を受ければよいというだけではなく、譲渡先の選定基準をつくる必要があります。抽選も適切ではないとするべきです。

また、譲渡される犬猫には不妊去勢手術が徹底されるべきであり、譲渡前の手術の推進や、譲渡後の追跡調査などにも重点を置くべきことを明記してください。そのためには、動物愛護推進員の活用や地元動物愛護団体との連携を行う点についても盛り込む必要があると考えます。

さらに、昨年の法改正によって行政が引取り拒否をできるようになったことから、引取り拒否後に動物がどう扱われるのか、福祉の担保について懸念する声があります。しかしその一方で、新たな飼養者探しを促すことなどによって命をつなぐことのできる事例があることも事実です。引取り拒否についても、あくまで事例ごとの判断を丁寧に行い、適正に運用すべき旨を明記してください。また、単に拒否するだけではなく、その後の支援についても、動物愛護推進員や動物愛護団体との連携などによって、充実を図っていく必要があることを明記してください。

さらに引取り拒否に関しては、どういう場合に引取り拒否をできると国が定めたのか、その意図するところを自治体窓口で平易に説明できるようなチラシを環境省が作成し、適正飼養の推進が図られることを要望いたします。

2.自治体の動物収容施設・設備の最低基準と、運営に関する基準の策定を

 自治体の動物収容施設の中には、未だ劣悪ともいえる施設が存在します。また、譲渡対象の動物は冷暖房のある部屋に入れるなどするが、譲渡対象とならなかった動物は劣悪な状態に置く自治体もあります。地方自治体は、動物の所有者・占有者を指導する立場でもあり、まず自らの動物の飼養について、早急に改善を行う必要があるのではないでしょうか。
特に、夏場、冬場の温湿度管理については、動物の生命の確保・健康の維持の面から早急に数値設定を定めるべきであり、最低限必要な設備の基準や、休日の給餌給水体制などを含めた運営基準などと併せて、国が明確な基準を策定することを基本指針の具体的な施策の中に盛り込むべきだと考えます。

3.「動物の処分方法に関する指針の解説」の見直しと、殺処分方法の改善を

殺処分が科学的に最も安楽であるとされる方法で行われているかどうかは、動物の福祉にとって最重要課題のひとつであり、多くの国民が関心を寄せる問題です。しかし、国の定める「動物の殺処分方法に関する指針」は内容が具体的ではなく、具体的な手法については、日本獣医師会が発行する「動物の処分方法に関する指針の解説」にゆだねる形になっています。同解説は最新の科学的知見が反映されたものとは言い難く、内容を見直し、だれもが入手できるよう再発行を行う必要があります。日本獣医師会と連携し、この解説を改訂するとともに、国として殺処分方法の改善に取り組むことを、具体的施策として基本指針の中に盛り込んでください。

4.犬と猫、特に猫に対し、不妊去勢手術の徹底を図る施策を

改正法第七条に、「動物の所有者は(中略)繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない」との規定が盛り込まれたことに伴い、より一層、犬猫への不妊去勢手術の徹底を図る必要が出てきています。

特に、猫の引取り数・処分数の減少を図るためには、飼い猫への不妊去勢手術の徹底が必要であり、自治体が義務化に近い施策を図れるよう、基本指針にも、不妊去勢手術はほぼ義務である旨の記載がなされることを要望いたします。

また、飼い主のいない猫に対する不妊去勢手術の助成についても、行うことが望ましい旨を記載してください。

5.動物取扱業の監視強化と、具体的な数値基準の策定を

 今回の法改正においては、犬猫等販売業を含め、新たな業規制が盛り込まれました。それらの施策を適正に運用することを基本指針に明示するとともに、業の取消、もしくは期間を区切った営業停止措置等について、積極的・弾力的に制度を活用し、いわゆる劣悪業者の営業を許さない方針で指導監視に挑むよう、基本指針の内容を改めてください。

現行の地方自治体の指導監視の考え方では、改善して適正に登録させることに主眼が置かれていますが、そのために貴重なマンパワーが割かれ、結果として改善にも至らない事例が多くみられます。

基準に至らない業者は営業できないことを徹底させるため、具体的な数値基準の策定と、時代に合わせた基準の随時見直しを行うことも基本指針の中に定めてください。

6.第二種動物取扱業の適正な運用について

法改正によって、第二種動物取扱業が新たに創設されたことから、基本指針にもその適正な運用についての記載をすることが必要となっているかと思います。ただし、衆議院の委員会決議・参議院の附帯決議にもあるとおり、殺処分頭数の減少に寄与している多くの動物愛護団体の活動を阻害することなく、動物愛護とは名ばかりの多頭飼育現場の指導にあたる必要があると考えます。

また、動物の数が基準に達しないなどの理由から第二種動物取扱業にあたらない業活動についても、不適切な飼養実態等が見られる場合には、十分な指導・監視を行うことが望ましい旨を盛り込むよう、要望いたします。

7.実験動物について、自治体による指導・監視体制の構築を

今回の法改正においては、実験動物の取り扱いについて何ら進展がみられず、多くの国民が落胆する結果となりました。また、一部の動物実験関係者からも、このままでは日本は国際社会に取り残されると、危惧の声が聞かれます。

しかし、すでに基本指針の中には3Rの普及などの施策が定められており、その前提として地方自治体が動物実験施設について飼養規模等の把握を行うことに、何ら問題があるとは思えません。ぜひ、法改正で実現できなかったことの一部が実行されるよう、地方自治体は動物実験施設の把握を行うべきことを基本指針に盛り込んでください。

また、以下の点についても、具体的施策として盛り込んでください。

・最低限、不適切事例に対する行政的な窓口がどこなのかの検討を行うべきであり、そのための体制づくりを早急に構築する。
・「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」を見直し、内容を国際レベルに引き上げる。
・国際的なガイドラインの動向や、動物福祉に関する最新の動向についても、適宜周知を図る。

8.産業動物の飼養保管基準を改正し、家畜福祉に関する意識向上を

 すでに基本指針の中に盛り込まれているところではありますが、産業動物の飼養及び保管に関する基準の見直しに早急に取りかかっていただきたいと思います。

 また、狂犬病予防に関連して厚生労働省と連携があるのと同じように、家畜福祉の観点から、農林水産省や自治体の家畜保健衛生所と連携をとり、業界団体等にも周知徹底を図ることのできる体制づくりを同時に進めていただきたいと思います。

 国際的には、バタリーケージ廃止などの動きがあり、この分野における日本の意識があまりに低いと感じます。

9.動物虐待罪の条文が改正されたことに伴う周知徹底を

 法改正によって、動物虐待罪に新たに「酷使」「健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること」「疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと」「排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設(中略)において飼養し、又は保管すること」が追加されました。

いわゆるネグレクトを対象とした条文が加わったことは画期的と考えますが、運用がなされなければ意味がありません。予防及び取締り強化のためにも、周知徹底と適正な運用を図るべきことを基本指針の中に盛り込んでください。

10.警察との連携強化について明示を

 改正法第四十一条の四(地方公共団体への情報提供等)の中に、自治体の動物愛護行政と都道府県警察との連携の強化について国が必要な助言等を行うべきことが盛り込まれました。動物虐待罪等については、まだまだ警察の意識も低く、現場での周知徹底が図られているとは言い難い状況にあります。警察との連携についても、基本指針の中にぜひ記載をしてください。

11.災害時の動物の救護の対象を全ての飼養動物に

 東日本大震災を受け、今回の法改正では、自治体の定める動物愛護管理推進計画に災害時における動物の適正な飼養及び保管を図るための施策を盛り込むことが定められました。国の基本指針には、既に災害時対策の項目が定められているところではありますが、その内容の強化は、動物を飼育していた被災者のみならず被災動物に心を痛める多くの国民が期待するところとなっています。

地域防災計画には、必ず動物の救護に関する規定を盛り込むものとし、家庭動物の同行避難の原則を実現できるよう、事前に計画を定めるべき旨を盛り込んでください。

また、被災するのは、展示動物や実験動物、畜産動物も同じです。これらの動物たちについても、災害時の対応について体制整備を行うべきことを明確に記載してください。

【現行の条文の修正要望】
※以下は、現行の基本指針の文言に関する修正の要望です。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

第1 動物の愛護及び管理の基本的考え方
(動物の愛護)
※全体に個人の哲学が前面に出ている印象があり、偏りのない内容に見直すことを要望いたします。

<現行>
「動物の愛護の基本は、人においてその命が大切なように、動物の命についてもその尊厳を守るということにある。」
<要望>
命あることのみを動物愛護としないでほしいと考えています。人において最低限の生活を保障する「福祉」の概念があるように、人に飼育される動物についても、基本的な生活の質の保障が必要だということを示すべきだと思います。また、虐待を受けたりしないことも重要です。命だけではなく、動物の健康・安全が守られることを含めて、動物愛護としてください。

<現行>
「動物の命に対して感謝及び畏敬の念を抱くとともに」
<要望>
動物に対しては、親しみの気持ちも持ちますし、動物の犠牲に対しては、申し訳ないと思う気持ちも抱きます。「感謝及び畏敬」と限定する表現は、人の感情に対する押し付けを感じますので、もっと幅広い表現に修文していただけますよう、よろしくお願いいたします。
※「合意形成」の部分で、「国民が動物に対して抱く意識及び感情は、千差万別である」と述べていることと矛盾しています。

<現行>
「人は、他の生物を利用し、その命を犠牲にしなければ生きていけない存在である。」
<要望>
ここでいきなり、「他の生物」と動植物全般に話が広がっているのは不自然に感じます。「人のために犠牲にされる動物もおり」といった、現状の描写にとどめるべきです。

(動物の管理)
<現行>
「動物の命を尊重する考え方」
<要望>
ここも、命だけではなく、「動物の命や生活の質を尊重する考え方」としてください。

<現行>
「動物の係留」
<要望>
近年の家庭動物と人のあり方から考えて時代遅れな表現であり、「動物の逸走防止」等の表現に改めることを要望します。「犬のつなぎっ放しは虐待」との意識を広めていくべきでもあり、係留ありきの表現は避けてほしいと思います。動物の逸走防止策は「係留」に限りません。

(合意形成)
<現行>
「狩猟等の動物の捕獲行為」「外来生物の駆除、動物の個体数の調整」
<要望>
そもそもこれらの行為の対象となる動物は、動物愛護管理法の対象外となっており、ここに例示することで誤解を招く可能性を感じます。主に別の法律が所管する人と動物の在り方については言及せず、削除するほうがよいのではないでしょうか。

<現行>
「畜産等における動物の資源利用」
<要望>
 単に「……動物の利用」と改めていただきたいです。畜産動物も「命あるもの」であり、動物愛護管理法においては、モノ扱いの表現はふさわしくないと考えます。

第2 今後の施策展開の方向
1 基本的視点
(4) 施策の実行を支える基盤の整備

<現行>
「動物愛護管理施設等の拡充」
<要望>
施設の拡充だけではなく、「運営水準の向上」も含めてください。立派な施設があっても、管理面が充実していないために生かせていない現状もあります。

(6) 実験動物の適正な取扱いの推進
①現状と課題

<現行>
「生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なもの」
<要望>
環境省は「動物実験の内容には踏み込まない、内容については判断する立場ではない」とのことですが、そうであるならば、「必要不可欠」とも言えないはずです。これでは、内容に立ち入ってしまいます。
また、動物実験が必要不可欠か否かは議論のあるところであり、そのこと自体がこの指針の「合意形成」の部分で述べられているので、ここで指針が一方の立場を支持するのは矛盾します。この部分の削除を強く求めます。

以上

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