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農薬の登録申請時に求められる動物実験

■農薬とは……

農作物を害する病害虫(菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス)の防除に用いられる殺菌剤・殺虫剤等の薬剤や、農作物等の生理機能の増進もしくは抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤等の薬剤のことをいいます。

そもそも生物を殺す等することが目的の薬剤でありながら、使用時・使用後の安全性も担保しなければなりませんから、販売前には多くの動物実験の試験結果が求められることになります。

■農薬に関係する規制の概要

農薬は「農薬取締法」によって登録制になっており、新たに販売する際には、農薬登録申請書のほか、下記の試験結果と農薬の見本を添えて農林水産大臣に登録申請をしなければいけません。この登録申請は農林水産消費安全技術センターが受け付け、農薬の品質、薬効・薬害、安全性等について検討します。

また、「食品安全基本法」に基づき、内閣府の食品安全委員会がリスク評価(食品健康影響評価)を行い、ADI(1日摂取許容量)等の設定が行われます。さらに厚生労働省が、その数値と食品の摂取量から、「食品衛生法」に基づいて残留農薬基準を設定し、この基準を満たさない食品の製造、販売は規制されます。また、作物残留、土壌残留、水質汚濁について、環境省が農薬登録保留基準を定めており、これらの基準を超えて残留する場合には登録が保留されます。農薬の中でも特に毒性が強いものについては、「毒物及び劇物取締法」により製造、販売、取扱が規制されます。

農薬は銘柄ごとの登録が必要なので、同一有効成分であっても、剤型や含有量が異なれば、別途登録が必要となっています。同じ有効成分の農薬でも、製造メーカーが違えば別途登録が必要で、2015年3月末時点での農薬登録件数は4,361件、有効成分数は565成分。登録の有効期間は3年で、継続して販売する際には、有効期間内に再登録の申請を行う必要があります。

このほか、新たな知見により人や動物に被害を及ぼす恐れがあると判断された場合、農林水産大臣は農薬の使用範囲・使用方法の変更、もしくは登録の取消を行うことができます。

■農薬の登録申請時に必要なデータ

農薬の登録申請には、以下のような試験成績の提出が求められています。

(1)薬効に関する試験成績
適用病害虫に対する薬効に関する試験成績(農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物等に対する薬効に関する試験成績)

(2)薬害に関する試験成績

  1. 適用農作物に対する薬害に関する試験成績
  2. 周辺農作物に対する薬害に関する試験成績
  3. 後作物に対する薬害に関する試験成績

(3)毒性に関する試験成績

これらの試験については、「農薬の毒性及び残留性に関する試験の適正実施に関する基準」(GLP:Good Laboratory Practice)に合致して行われたかどうかも確認されます。

※動物を用いる試験について、( )内に概要を記載しました。
※すべての試験が必ずしも必要ではなく、試験成績の提出を要しない場合についても定めがあります。

急性毒性試験:主に農薬使用時の安全な取り扱い方法を確立するために用いられる

  1. 急性経口毒性試験成績
    (げっ歯類、通常ラットを1群につき5匹用い、強制単回経口投与して、少なくとも14日間観察する)
  2. 急性経皮毒性試験成績
    (ラット、ウサギ、モルモット等哺乳動物のうち1種以上用い、1群5匹程度とし、毛を剃った背部に塗布、少なくとも14日間観察する)
  3. 急性吸入毒性試験成績
    (1種以上の哺乳動物、通常ラットを用い、1群5匹程度とし、吸入装置で4時間暴露し、少なくとも14日間観察する)

刺激性試験:被験物質を動物の皮膚または目に投与して、刺激性を調べる試験

  1. 皮膚刺激性試験成績
    (3匹以上の白色ウサギを用い、毛を短く剃った背部に4時間塗布し、30分または1時間、24時間、48時間、72時間後の皮膚の症状を観察する。)
  2. 眼刺激性試験成績
    (3匹以上の白色ウサギを用い、点眼し、1時間、24時間、48時間、72時間後における目の症状を観察する。持続性の角膜障害等があれば、21日後まで観察する。)

皮膚感作性試験:被験物質を動物の皮膚に投与して、皮膚感作性(かぶれ)を調べる試験である。

  1. 皮膚感作性試験成績
    (モルモットを用い、動物数は少なくとも10匹(対象群:少なくとも5匹)で皮内注射による初回感作、次いで貼付による再感作を行う方法のほか、動物数を少なくとも20匹(対象群:少なくとも10匹)とし、初回感作、再感作とも貼付する方法の2つの方法が示されている。)
  2. 急性神経毒性試験成績
    (げっ歯類、通常ラット雌雄各10匹以上を用い、投与経路(経口、経皮、吸入)を選択して行い、神経系への通常の特徴が明確になるよう14日間観察する。)
  3. 急性遅発性神経毒性試験成績
    (投与群、対象群ともに6羽以上の雄のニワトリを用いる。このほか、陽性対象群では3羽以上を用い、強制単回経口投与後21日間の観察を行う。)

亜急性毒性試験:中長期的影響を調べる試験

  1. 90日間反復経口投与毒性試験成績
    (げっ歯類1種(通常ラット1群当たり雌雄各10匹以上)および非げっ歯類(通常イヌ1群当たり雌雄各4匹以上)を用い、通常混餌又は飲水投与する。長期に暴露する恐れがないと認められる場合には1種。)
  2. 21日間反復経皮投与毒性試験成績
    (ラット、ウサギ、モルモット等哺乳動物のうち1種類以上を用い、毛を剃った背部に1日6時間塗布する。)
  3. 90日間反復吸入毒性試験成績
    (1種以上の哺乳動物、通常ラット1群当たり雌雄各10匹以上を用い、1日6時間、吸入装置で暴露させる。)
  4. 反復経口投与神経毒性試験成績
    (げっ歯類、通常ラット1群当たり雌雄各10匹以上を用い、90日間または1年間、通常混餌又は飲水投与する)
  5. 28日間反復投与遅発性神経毒性試験成績
    (投与群、対象群とも6羽以上の雌の鶏を用い、連続強制経口投与する。最終投与終了後14日間の観察を行う。)

長期毒性

  1. 1年間反復経口投与毒性試験成績
    (げっ歯類1種(通常ラット1群当たり雌雄各20匹以上)、非げっ歯類1種(通常イヌ1群当たり雌雄各4匹以上)を用い、通常混餌又は飲水投与を行う。1種は発がん性試験と併合して実施できる。)
  2. 発がん性試験成績
    (げっ歯類2種以上、通常ラット1群当たり雌雄各50匹以上のラット及びマウスを用い、ラットでは24カ月以上、30カ月以内、マウスでは18カ月以上24カ月の間、混餌又は飲水投与で行う。)

生殖発生毒性試験

  1. 繁殖毒性試験成績
    (二世代にわたって投与し、生殖機能及び出生児の生育に及ぼす影響に関する知見を得ることを目的としている。)
  2. 催奇形性試験成績
    (妊娠中の母動物が暴露された場合の、胎児の発生・発育に及ぼす影響、特に催奇形性に関する知見を得ることを目的とする。げっ歯類1種以上(通常ラット)および非げっ歯類(通常ウサギ)の合計2種以上を用いる。データの解釈が十分できる妊娠動物数を用い、着床から分娩予定日の前々日までの期間に、原則として連続強制経口投与を行う。1種は繁殖毒性試験と同種・同系統の動物とする。)
  3. 変異原性に関する試験成績
    (遺伝子の突然変異、染色体の構造異常・数的異常の誘発性の有無を調べる。試験は、細菌を用いる復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験、げっ歯類を用いる小核試験を1例ずつ。)

急性中毒症の処置を考える上で有益な情報を得る試験

  1. 生体機能への影響に関する試験成績
    (各検査項目に適した動物種を用いる。)

動植物体内での農薬の分解経路と分解物の構造等の情報を把握する試験

  1. 動物代謝に関する試験成績(通常ラットを用いる)
  2. 植物代謝に関する試験成績
  3. 家畜代謝に関する試験成績(2種の動物を用いる。反芻動物1種と家禽1種)

環境中での影響をみる試験

  1. 土壌中動態に関する試験成績
  2. 水中動態に関する試験成績
  3. 水産動植物への影響に関する試験成績
    (コイまたはメダカを用いる魚類急性毒性試験、魚類(ふ化仔魚)急性毒性試験、ミジンコ類急性遊泳阻害試験、ミジンコ類繁殖試験、魚類急性毒性・ミジンコ類急性遊泳阻害共存有機物質影響試験、ヌマエビ・ヌカエビ急性毒性試験、ヨコエビ急性毒性試験、ユスリカ幼虫急性遊泳阻害試験、藻類生長阻害試験など、毒性に関する試験。)
  4. 水産動植物以外の有用生物への影響に関する試験成績
    (ミツバチ影響試験、カイコ影響試験、天敵昆虫等影響試験、鳥類影響試験(強制経口投与試験、鳥類混餌投与試験))
  5. 有効成分の性状、安定性、分解性等に関する試験成績
  6. 環境中予測濃度算定に関する試験成績

(4)残留性に関する試験成績

  1. 農作物への残留性に関する試験成績
  2. 土壌への残留性に関する試験成績
  3. 環境中予測濃度に関する試験成績
  4. 家畜代謝に関する試験及び家畜への残留性に関する試験成績
    (2種の動物を用いる。反芻動物1種と家禽1種)

参考:

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