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人と動物のキメラ作成 アメリカNIHの動き

アメリカでは、国の研究資金配分機関であるアメリカ国立衛生研究所(NIH)が、ガイドライン“NIH Guidelines for Human Stem Cell Research”によって、人以外の霊長類の胚盤胞に人の多能性幹細胞を入れて人と動物のキメラをつくることは禁止していますが、それ以外の動物については特に定めがありませんでした。(ただし、生殖細胞になりうるヒト多能性幹細胞を導入した動物を掛け合わせる交配は禁止です)

また、NIHから資金を得る場合にはこのルールが適用されますが、それ以外についても特にルールがなく自由であり、民間の資金で研究が行われてしまっている状況です。

そういった形で研究が進められている状況を受けて、NIHでも方針に変化が生じるかもしれない動きが、2015年以降アメリカでも見られます。一応、倫理や動物福祉上の懸念があるからとは言っているのですが…

そのため、現在はNIHでは、日本でいうところの動物性集合胚に近い研究への資金提供は停止されています。

2015年9月23日 モラトリアムとして動物性集合胚研究を禁止

霊長類以外の胚を用いるキメラモデルについてさらなる政策規定が必要かどうかを検討することとなり、その検討が終わるまでの間、動物の胚に人の多能性幹細胞を入れる研究に対して資金提供を停止する旨の通知が出されました。

霊長類だけではなく、人以外の脊椎動物全ての胚が対象です。(厳密には、ヒト以外の脊椎動物の原腸形成以前の段階の胚にヒト多能性細胞を導入する研究に対する助成を停止)

2015年11月6日 ワークショップ開催

モラトリアム後、方針変更の前段階としてワークショップ”Workshop on Research with Animals Containing Human Cells”が開催されました。

ネット中継されたワークショップの概要をレポートしてくださった方がいるので、以下にご紹介します。全体の流れは以下の通りとのことです。倫理や動物福祉の検討が必要になってきたと言いながら、これではまったくやる気がないことが見え見えです。

ワークショップ概要

1.ES細胞研究を否定したブッシュ大統領の年頭所信表明演説の後、大きく状況が変わった。
2.iPS細胞やCRISPRなどの技術革新が、それである。
3.倫理問題と同時に、臓器移植を待つ患者のことも、忘れてはならない。

パネラーには、福祉側の代表者として、国際的な動物実験施設の認証団体であるAAALAC Internationalと、NIHの中にある動物福祉を担当する部局であるOLAWの代表者が座っておりましたが、彼女らは、キメラに関する動物実験は、他の動物実験と大きな差はないとスタンスを表明し全く反論しませんでした。

会議の最後に、一人だけ、技官風の男が立ち上げり、未来に何が起こるかはわからない。人間の遺伝子が動物に入ることで、実験による苦悩をより強く感じる動物が誕生しないとはいえない!と意見を述べました。丸一日の会議で、たった1分だけの出来事でした。

2016年8月4日 NIHガイドライン改正案パブリックコメント開始

NIHガイドラインの改正に関するパブリックコメントが行われました。

人以外の霊長類の胚(胚盤胞期の終わりまで)にヒト多能性幹細胞を導入する研究には助成しないという点と、これ以外の動物の胚、胎仔、成体への導入を禁止する規定はないが、NIH運営委員会での検討が必要な研究として以下を定めるような内容になっています。

  • ヒト以外の脊椎動物の原腸形成までの胚にヒト多能性幹細胞を導入する研究
  • ヒト、げっ歯類以外のほ乳類の原腸形成以降の胚にヒト細胞を導入し、動物の脳に相当な寄与又は機能的修正が起こりうる研究

一見厳しくなったように見えますが、NIHはこれらの研究の重要性を説く立場です。

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