アメリカ 健康科学推進法と実験動物福祉

アメリカには、農務省所管の動物福祉法とは別に、1985年成立の健康科学推進法(Health research Extension Act)もあり、実験動物についてはこの法律にも規定があります。

 健康科学推進法“Animals in Research”に関する規定

まず、NIH長官には以下の点についてガイドラインを定めることが求められています。

  • 医科学研究・行動研究において使われる動物のケア
  • それらの研究に使われる動物に対する適切な処置、すなわち、
    • 精神安定剤、鎮痛薬、麻酔薬、筋弛緩剤の適切な使用と、適切な安楽死
    • 術前・術後の獣医学的・看護的ケア
    • 次に定める動物実験委員会の組織と運用

そして、上記のガイドラインを遵守するために、この法律に基づいて配分される研究費(NIHおよび国立の研究機関のものを含む)を利用する医科学研究・行動研究を行う場合、いかなる機関も動物実験委員会を設置しなければならないと定められています。

  • 委員会の置かれる機関の長によって指名され、人数は少なくとも3名。必ず部外者と獣医学博士を含む。
  • 少なくとも半年に一度は、適切な動物のケアや取り扱いのために上記ガイドラインが遵守されているかどうか、あらゆる動物実験区域・施設における動物の取り扱いについて評価を行う
  • 上記ガイドラインに基づく記録を行う。
  • 少なくとも毎年1回、NIH長官に以下のものを提出する。(i)確かに評価が行われたこと。(ii)評価で見つかったガイドライン違反すべて。委員会により注意を受けた後も続いている違反も含む。

そして、このガイドラインを満たさず、それを指摘されたのちも改善しないとNIH長官が認めた場合、研究費や契約をは停止もしくは取消しとしなければなりません

実験動物の人道的取り扱いと使用に関する公衆衛生局方針

また、この法律のもとに定められたのが、いわゆるPHS方針、「実験動物の人道的取り扱いと使用に関する公衆衛生局方針(Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animals)」であり、動物実験委員会の行うべきことについての詳細や、NIHの動物福祉局(OLAW:Office of Laboratory Animal Welfare)の責務について定められています。

動物福祉法と健康科学推進法の比較

法律動物福祉法健康科学推進法
下部法令動物福祉法施行規則PHS方針
所管農務省動植物検疫局(APHIS)保健福祉省公衆衛生局(PHS)―
NIH動物福祉局(OLAW)
対象範囲温血動物
(実験用のマウス・ラット・鳥類を除く)
生きた脊椎動物
適用範囲繁殖業者、販売業者、展示業者、研究施設健康科学推進法のもとにNIHや国立の研究機関から研究費を得る機関
監視少なくとも年1回の事前通告なしの査察施設訪問もありうる

アメリカの動物福祉法と実験動物施設についてはこちら

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