トクホの動物実験

体に良いイメージで売られている「トクホ(特定保健用食品)」マークつきの食品。

手広く宣伝が行われるその裏で、数多くの動物実験が行われ、動物たちが犠牲になっているのをご存じでしょうか。

消費者庁は、特定保健用食品の申請において動物実験の実施を必須とはしていないとは言っており、人間が食べてきた食経験が十分にあれば制度上、動物実験は不要なのですが、それでも現実には多くの動物実験が行われています。

つまり、「人類が食べてきたからそれなりに安全」というレベルの食品ではなかったものがトクホにはある、ということになります。(完全にノーリスクの食品はそもそも存在しません。)

icon 特定保健用食品(トクホ)とは?

特定の保健の用途を表示して販売することができる食品のこと。医薬品のような治療効果はうたえませんが、「お腹の調子を整える」、「血圧が高めの方に適する」、「コレステロールが高めの方に適する」、「血糖値が気になる方に適する」、「ミネラルの吸収を助ける」、「食後の血中の中性脂肪を抑える」、「虫歯の原因になりにくい」、「歯の健康維持に役立つ」、「体脂肪がつきにくい」、「骨の健康が気になる方に適する」といった表現を用いることができます。

トクホとしてマークを付けて販売するためには、製品ごとに食品の有効性や安全性について審査を受け、国の許可を受ける必要があります。

icon 商品ごとの動物実験の情報は、このサイトでチェック!

特定の保健の用途をうたうための新規成分については、消費者庁から食品安全委員会に諮問が行われ、食品安全委員会が安全性について評価を行います。(食品安全委員会は有効性については評価せず、安全性だけを評価します)

その評価結果を見ることができるのが、下記のサイト。ここに挙げられている商品は、商品名をクリックして詳細ページへ行き、「通知文書」を開けると、動物実験の結果の概要を知ることができます。一部詳細が載っていない商品がありますが、それぞれ出典もついているので、社内文書や外部委託先の報告書であったり、論文の著者が申請した企業の研究員等であったりすれば、その企業が動物実験を行ったことは間違いなしです。

ただし原料メーカーの論文や、大学等の研究者の論文が根拠になっている場合等もありますし、食品添加物として認められているので記載省略となっているもの等もあります。

新規性のあるものは上記のサイトに掲載されているものに限られ、一度許可が出た成分についてはほかの企業が使ってよい運用になっているそうですが、下記の国立健康・栄養研究所のサイトを見ると、食品安全委員会の評価を受けていない製品についても企業が独自の動物実験結果を掲載している事例があります。こちらのサイトの情報も念のためチェックしましょう。

情報は企業側が提出したものを使用しているとのことで、例えばこのような事例があります。

  • 太子食品工業「カルシウムとうふ」:
    食品安全委員会の評価書リストにはないので新規性はなかったはずだが、「ラットによるCPPの経口投与による急性毒性試験を行った」とあり、試験受託会社であるハンチントンライフサイエンスの研究所(Hantingdon research center)の報告書を出典として示している。(同社がハンチントンライフサイエンスに試験を委託したものと考えられる)
  • 明治「おなか活力タブレット」「おなか活力プロフェック」「明治おなか活力ミルク」:
    食品安全委員会の評価書リストにはないので新規性はなかったはずだが、マウス、ラットを用いた実験を行っており、外部(北里研究所の試験受託部門)へ委託したと思われる毒性試験報告書が出典として示されている。

ちなみに、上記サイトには安全性等のデータがない商品もありますが、特定保健用食品のうち「規格基準型」とされるものは、「この成分なら、これをうたってよい」ということを先に国が定めており、個別に動物実験を行う必要はありません。

また、残念ながら、上記サイトに載っているのは製造・販売者側から情報提供があった商品のみなので、許可を受けた製品の一部について情報が得られるにすぎません。

「知りたいのにわからない!」と思ったときは、ぜひ動物実験を行っているかどうか直接企業に聞いてみてください。今は動物の苦痛より利益をあげられることが優先になっている企業が多いと思いますが、消費者からの声が届くことで変わっていくかもしれません。

icon 特定保健用食品申請における動物実験とは?

制度上はどのような形で動物実験が求められているのでしょうか? 

消費者庁次長通知「特定保健用食品の表示許可等について」(平成26年10月30日付け消食表第259号)別添2「PDF 特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」の「2 審査申請書の添付資料」に下記のとおり記載されています。「in vivo 試験」が動物実験のことです。

(4)食品及び特定の保健の目的に資する栄養成分に係る保健の用途及び一日当たりの摂取目安量を医学的及び栄養学的に明らかにした資料

以下に掲げる資料を添付する。

また、適切な条件の下で行った試験結果に基づくものであり、かつ、再現性のあるデータの提出に努めること。

ア in vitro及び動物を用いたin vivo試験

関与成分のin vitro及び動物を用いたin vivo試験により、関与成分の作用、作用機序、体内動態を明らかにするための資料を添付する。なお、作用機序については、当該資料により明らかにされていなくても、作用機序に関する試験が適切になされていれば条件付き特定保健用食品の有効性を確認する資料として用いることができるが、この場合、ヒトを対象とした試験(以下「ヒト試験」という。)のデザインは無作為化比較試験である必要がある。

これらの試験結果は、統計学的に十分な有意差を確認できるものでなければならない。

なお、関与成分に関し、ヒト試験において、その作用、作用機序、体内動態に関する知見が得られている場合には、当該資料の添付により、in vitro及び動物を用いたin vivo試験を省略することができる。

(中略)

(5)食品及び特定の保健の目的に資する栄養成分の安全性に関する資料

以下に掲げる資料を添付する。

また、適切な条件の下で行った試験結果に基づくものであり、かつ、再現性のあるデータの提出に努めること。

なお、特定保健用食品(規格基準型)については、原則として、ヒト試験により過剰摂取時の検証を行い、有害事象の有無等を確認することのみをもって当該資料として差し支えない。

ア in vitro 及び動物を用いた in vivo 試験

安全な摂取量を確認するための基礎資料とすることを目的とする。

食品等としてヒトが摂取してきた経験が十分に存在する物であって、合理的な理由があるものは、in vitro 及び動物を用いた in vivo 試験の添付を省略することができる。

食品等としてヒトが摂取してきた経験が十分に存在しない物については、「保健機能食品であって、カプセル、錠剤等通常の食品の形態でない食品の成分となる物質の指定及び使用基準改正に関する指針について」(平成 13 年3月 27 日付け食発第115号厚生労働省医薬局食品保健部長通知)別添「保健機能食品であって、カプセル、錠剤等通常の食品の形態でない食品の成分となる物質の指定及び使用基準改正に関する指針」のⅣの3の(6)安全性に関する資料と同等の資料を必要とする。なお、それぞれの毒性試験について標準的な実施方法は、「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針について」(平成8年3月22日衛化第29号厚生省生活衛生局長通知)の別添の第Ⅴ章を参照すること。

そして、上記にある「(6)安全性に関する資料」の内容が以下の通りです。(動物を使う試験を太字で強調)

(6)安全性に関する資料

 保健機能食品であってカプセル、錠剤等通常の食品形態ではない食品の成分となる物質についての安全性評価は、物質として評価を行うものであり、(1)、(2)及び(4)について留意する必要がある。また、ビタミン類、ミネラル類については、(3)についても原則として検討することが必要である。

(1)毒性に関する資料
ア)毒性試験は、ヒトの摂取様式に基づき投与方法等を検討し適切に実施されなければならない。また、毒性試験データの信頼性を確保するため、これらの試験は医薬品の安全性試験の実施に関する基準等、適切なGLP(Good Laboratory Practice)に従って実施されなくてはならない。
イ)各々の毒性試験についての標準的な実施方法は、衛化29号第V章に示されている。
 しかし、本来、すべての物質について一律の試験方法を定めることは合理的でなく、また、今後とも科学技術の進歩に応じ新しい試験方法の開発が行われることも考えられるので、得られた所見が物質の安全性評価に資するものである限り、必ずしも衛化29号に示された方法に固執するものではない。
 例えば、OECDガイドライン、米国FDAガイドラインに準拠した試験は、物質の安全性評価にとって基本的に問題ないものと考えられる。
ウ)90日間反復投与毒性試験をげっ歯類1種又は非げっ歯類1種について実施した場合には、それぞれに相当する動物種に係る28日間反復投与毒性試験の実施を省略することができる。
エ)1年間反復投与毒性試験、発がん性試験を各々所要の動物種について実施した場合には、1年間反復投与毒性/発がん性併合試験を実施する必要はない。
 また、1年間反復投与毒性/発がん性併合試験をげっ歯類1種について実施した場合には、1年間反復投与毒性試験及び発がん性試験のげっ歯類1種について試験の実施を省略することができる。
オ)要請する品目の分解物及び混在する不純物の安全性についても、必要に応じ検討を行う。

(2)体内動態に関する資料
ア)ヒトが摂取した場合の生体内における吸収、分布、代謝、排泄を推定するため、体内動態に関する動物を用いた試験を実施する。従って、動物試験結果をまとめるのみでなく、ヒトにおける体内動態や有害な作用の発現の推定等について考察を行わなくてはならない。
イ)体内動態に関する試験の標準的な実施方法も、衛化29号第V章に示されているが、その取扱いについては、上記(1) イ)に述べた毒性試験の場合と同様である。

(3)ヒトにおける安全性に関する資料(省略)
(4)一日摂取量に関する資料(省略)

また、食品安全委員会では平成16年に新開発食品専門調査会が「特定保健用食品の安全性評価に関する基本的考え方」という文書を公表しており、以下の考え方で安全性について評価を行っています。

(2)in vitro 及び動物を用いた in vivo 試験等

in vitro 及び動物を用いた in vivo 試験等において、安全性に係る用量-反応関係、毒性所見等の幅広い情報を得ることにより、ヒトにおける影響をある程度まで推察することが可能となることから、これらの試験等は、当該食品又は関与成分の安全性を確認しておく上で重要である。また、これら毒性試験の検体に関する情報(例えば、当該食品の製造に用いられる関与成分か否か等)についても必要である。

特に、これまでヒトによる十分な食経験がないか、又は乏しいと判断される場合には、当該試験により、安全性について十分評価することが必要である。
 
in vitro 及び動物を用いた in vivo 試験等に関するデータ・情報

  • 原則として、次の試験データ
    -遺伝毒性試験データ
    -単回経口投与試験データ(急性毒性)
    -28日間又は90日間反復経口投与試験データ
  • 必要に応じて、1年間の長期経口投与試験、抗原性試験、アレルギー誘発性に関する試験、繁殖試験、催奇形性試験、発がん性試験等のデータ
  • その他、許容量(値)を設定する場合には、例えば、添加物等の国際許容値等に関するデータ等
  • 関与成分が微生物の場合には、抗生物質耐性遺伝子等のプラスミドトランスファーの可能性についての情報等

※ 試験データについては、ヒトに外挿した場合も考慮し、検査異常値、剖検所見での異常等について十分考察されていること。

icon 守るべき動物実験指針は、どれ?

第190回国会で提出された質問主意書の答弁書によれば、これらの動物実験を行う機関が守るべき国の動物実験指針は特に定められていないとのこと。しかし、「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」に定められた内容を踏まえることが望ましいとのことです。

また、これらの動物実験実施機関が実際に同指針を守っているかどうかを調査するべきは消費者庁とのことですが、実際にはそのような調査は行われていません。


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