動物の遺棄は犯罪です

動物を捨てること(=遺棄)に対しては、「動物の愛護及び管理に関する法律」(旧「動物の保護及び管理に関する法律」)ができた当初から罰則がありました。

つまりもうずいぶん長い間、法律の上では「動物の遺棄=犯罪」なのですが、現実には、市民も警察も、それが犯罪だという扱いをしてこなかったのではないでしょうか。捨てられた動物には、多くの場合、死が待っているのが現実です。もしくは、野垂れ死にをしなくても、犬であれば行政によって捕獲をされたり、子猫などであれば所有者不明の持ち込みによって行政の殺処分の対象となったり、また繁殖・定着すれば外来種として駆除されたりしています。

飼っている動物を捨てない―この基本的なことについて、いま一度考えてみてほしいと思います。

子犬の遺棄現場 遺棄されていた子犬たち
子犬の遺棄現場

動物の遺棄は犯罪です。「動物の愛護及び管理に関する法律」第六章 罰則 第四十四条 3 愛護動物を遺棄した者は、五十万円以下の罰金に処する

ここで言う「愛護動物」とは以下の動物をさします。

 一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
 二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

すなわち、人が飼ういわゆる「ペット」を捨てる行為は、明確に犯罪行為です。

検挙もされています!

「動物が捨てられていても警察は動かない」という意識が広まっている一面もありますが、現実には逮捕や書類送検もされています。たとえば下記のような報道が今までにありました。

「動物を捨てても検挙されない」と考えるのは間違いです。

  • 宮崎市の保健所職員が猫を山中に遺棄したとして書類送検(2008年2月)(ただし起訴猶予処分)
  • ペットとして飼っていた猫22匹を置き去りにして捨てたとして、岡山県警倉敷署が女性を動物愛護法違反(遺棄)容疑で逮捕(2006年8月)(ただし起訴猶予処分)
  • 福岡県宮若市の公園で、衰弱した犬や死骸(しがい)が大量に見つかった事件で夫婦が書類送検(2006年6月)
  • 店を始めようと飼ったが金がなくなり犬18匹を捨てた男女が神戸市で逮捕(2006年7月)
  • 熊本市内の公園に「のうなしタケべ」などとスプレーした牛を遺棄したとして男性8人が書類送検(2002年5月)
  • 引っ越しの際に飼い犬の親子3匹を公園に捨てたとして、大阪市鶴見区の主婦が書類送検。子犬が戻ってきて発覚。(2003年9月)
  • 引っ越しの際に飼い犬を置き去りにしたとして、岡山県警児島署が男を逮捕(2001年6月)
  • 自宅で飼っていた雄のダルメシアンの成犬を北蒲笹神村に捨てたとして新潟県水原署が男を書類送検(2001年6月)

このほかにも、動物愛護法違反(遺棄)の疑いで捜査されているという事例であればさまざまな動物の例が報道されています。

また、下記の環境省の資料12ページから13ページにも過去の検挙事例が掲載されています。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/arikata/h16_02/mat02.pdf

遺棄とは何かについて詳細な見解が出ました

12月12日、環境省から動物愛護行政を所管する各自治体に以下の通知が出され、遺棄とは何かがより明確になりました。このことは、警察庁を通じ、各都道府県の警察にも伝わっているとのことです。

小話

「こうのとりのゆりかご」に子どもを入れることは遺棄にはあたらないとの見解が出てから、「動物病院の前に猫を捨てる」などは遺棄にはあたらないとの見解が示されるようになってきているように感じます。

遺棄の解釈については、昭和49年に「動物の保護及び管理に関する法律」が施行された際に、警察庁が「『動物の保護及び管理に関する法律』の施行について」という通達を全国の警察本部長などに対して出しており、それが長い間生きていました。(参考:ブログ

2014年に、遺棄に関する詳細な見解が出たことで、動物にとって安全でなければ遺棄、幼齢高齢動物の場合は遺棄などが明確になったので、今後受理に至るケースはふえるのではないかと期待します。

ただし、犯人がわからなければ受理しないという警察の態度などは変えさせていく必要があります。刑事告発は本来、よほど虚構性が認められる等でなければ、全て受理しなければならないものです。また、仮に立件できない場合も、警察が動いているとその地域にわかるだけでも、抑止力にはつながっていくと考えます。

行政ツールの活用

最近では、地方自治体が動物の虐待・遺棄は犯罪であることを普及啓発するためのポスター・チラシ・プレートなどを作っている場合があります。

自分の住んでいる自治体の動物愛護行政へ問い合わせ、そういったツールを取り寄せて活用する、もしくは作ってもらえるよう要望するというのも、動物の遺棄を減らすためにできることのひとつです。

警察との連携

子猫などの遺棄現場に地元の警察署が、「動物が遺棄されました。捜査中です。情報提供をお願いします」と掲示をするだけでも、今後の抑止力につながります。

まだそういった対応をしてくれる警察署は多くないとは思いますが、まったく行われていないわけではありません。

犯罪に対して全国一律の対応でない現状には問題があると言え、今後一層市民からの働きかけが必要な部分だと感じます。

繁殖制限

そもそもなぜ動物を捨てることになるのかといえば、飼育しきれなくなったという場合ももちろんあるかとは思いますが、やはり繁殖制限ができておらず、子どもが生まれてしまうことも根本の問題としてあると思います。

不妊手術によって繁殖制限ができるということを、広めていく必要がまだまだあります。

Link:環境省冊子「あなただけにできること  動物の繁殖制限」
Link:不幸な犬猫をなくすネットワーク

外来生物関連

NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG