第44回動物愛護部会、実験動物基準解説書について公表など

先月17日に、環境省の動物愛護部会が久しぶりに開催されました。既に議事要旨と資料が環境省のサイトで公開されています。

この日は遅れて傍聴に参加したので、動物愛護管理行政の最近の動向についての事務局からの説明をほとんど聞くことができませんでしたが、質疑応答の中で印象に残った点としては、毎年環境省が公表している殺処分数の統計の取り方をより詳細にする話などがありました。

具体的には、殺処分数の分類として次の(1)~(3)を設けるそうです。(資料1 15ページ参照)

(1)譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)動物の殺処分
(2)(1)以外の殺処分
(3)引取り後の死亡

ここのところ強く喧伝されている「殺処分ゼロ」の意味するところは分類(2)をゼロにするということだとして、自治体への「ゼロ」プレッシャーを軽減させようとしているのだろうと思います。

ほか、気になったこととしては、委員が増えているが獣医系に偏っていること、日本医師会から医師が入っていることなどがありました。

医師の委員を迎えたのは、劣悪多頭飼育等の問題で人間の精神医療や福祉政策との連携が必要になることを考えてのことだったそうですが、質問していたのは早速、実験動物に関することでした。やはり非常に懸念を持ちます。

■実験動物飼養保管等基準の解説書の動向についていよいよ公表が

昭和55年に作られたまま、一度も改訂がなされず、存在もほぼ忘れ去られている実験動物飼養保管基準の解説書というものがあります。

基準の内容について、より具体的な説明が書かれている重要なものですが、ウサギや家畜を頭蓋打撲で殺してもいいとか、炭酸ガスはドライアイスからとってもいいとか、信じられないことが今現在も日本の実験動物の基準に対する公的見解として残っている状態です。

この解説書の改訂は、当会も設立当初から求めており、2012年の動物愛護法改正後に改正された動物愛護管理基本指針の中で、「講ずべき施策」として下記のように採用されていました。

ア 関係省庁、団体等と連携しつつ 「3Rの原則」や実験動物の飼養保管等基準の周知が、当該基準の解説書の作成等を通して効果的かつ効率的に行われるようにするとともに、実験動物に関する国際的な規制の動向や科学的知見に関する情報を収集すること。
(太字はPEACE)

しかしずっと何も動かないままでしたが、昨年突然、実験動物医学会が、7月8日付で「『実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準』の解説書に関する要望書」を実験動物飼養保管等基準解説書研究会委員長の浦野徹氏あてに提出していることが公開されました。

これにより解説書を新たに編纂する動きがあることはわかったのですが、水面下での動きであり、当初実態がつかめませんでした。おそらく、次の法改正前には実験動物についても取り組んでいるという態度を示すために完成させたいのだろうということは想像できたのですが。

昨年秋ころには、やはり環境省主導によるものであり、既に各パートについて執筆者が原稿をあげてきているということはわかりましたが、いったいいつこのことは公式に公表されるのだろう?という状況でした。

この日の部会で、やっと研究会の委員が公表されましたが、動物福祉の観点から考えるとやはり体制維持派で保守的な面々が目立っているように思います。(下記に掲載)

既に全体は一度書きあがっていて話し合いもあったそうですが、全体のすり合わせ的なものがなかなか難しいらしく、書き加える等の作業をしてもらっているところだそうです。分量も増えるかもしれないとのことでした。いつ頃出るということもまだ言えないようです。

この解説書は、あくまで今の環境省の飼養保管等基準についての解説書であり、そこに書かれていないものは載らないとのことなので、エンリッチメントなどはそもそも入れようがないのではないかという懸念も持ちます。(時流的に入れないと恥ずかしいかとは思いますが…)

どういったものが過去から変わったかという質問には透明性の確保との回答がありましたが、透明性があれば何をやってもいいというものではありません。

実態としてはやはり昔はされなかったような苦痛への配慮がされるようになってきて、まだまだ日本では実行されていないことも多いと思いますので、きちんと苦痛の軽減という基本的なところにも向き合ってほしいと思います。

またそもそも「代わりになる方法がある場合は動物の使用はしない」とか「まずin vitroで検討してから」ということについても、きちんと解説を行うべきですが、メンバーを見るにそういったことは考えられていないのではないかと思います。

■犬猫の親等から引き離す理想的な時期に関する調査について

56日規制への移行が法律の本則に入っているのに、まだ議論が引き伸ばされている状況ですが、それと関連して行われている環境省の調査についても公表がありました。

C-BARQというペンシルバニア大学のサーペル教授が開発したシステムを利用したサンプル収集を担当するメンバーについても公表がありましたが、そのうちの1人は当会で論文に疑義照会を行ったばかりの大学教授なので一抹不安があります。

また、委員から、C-BARQの日本語版協力要請チラシに攻撃性という言葉が入っていないとの指摘がありました。どうも「やんちゃ度」にすり替えられている感じでしょうか? 結果についても、すり替えが行われないといいのですが…。

56日以降に親と引き離された犬のサンプル数が十分にとれていないという話もあり、いろいろ懸念要素が提示された印象がありました。

■法改正については?

はっきり書かれてはいないですが、資料4の「動物愛護管理をめぐる主な課題とキーワード(たたき台)」が実質、次回の法改正へ向けての検討課題の最初の洗い出しです。もちろん、これで決まりというわけではなく、検討すべき事項があれば委員から幅広く出してほしいという段階でした。

次回は夏に開催されるとのことで、その時にはもう少しまとまった形のものが出てくるのではないかと思われます。

資料4の「動物愛護管理をめぐる主な課題とキーワード(たたき台)」内容は以下の通り

<主体別課題>
①飼い主責任のあり方
マイクロチップ等の所有明示や逸走防止対策等(法第7条関係)/近隣生活環境被害(吠え声、臭い等)/多頭飼育等の不適正飼養への対応/災害時の同行避難に備えた適正飼養等

②動物取扱業に求められる役割と今後のあり方
幼齢規制/マイクロチップ/飼養施設・設備の管理や動物の適正飼養のあり方/動物取扱業に求められる飼い主教育/第二種動物取扱業のあり方等

③行政機関が果たすべき役割、民間との連携のあり方
犬猫の引取り・返還譲渡・殺処分/所有者不明の犬猫対策/民間との連携・役割分担/大規模災害時のペット受入れ体制/小学校等での教育活動/普及啓発等

<横断的課題>
④社会的規範としての動物の愛護及び管理の考え方動物観の再確認(動物は命かものか)/日本と西洋の動物観・生命観の違いの理解/客観性・普遍性が高く、日本の風土・社会状況を踏まえた考え方/実験動物等の取扱い等

⑤「人と動物が共生する社会」の将来ビジョン社会経済動向とペット産業や保護団体の将来ビジョン/多様な主体の協働/業界と民間団体の連携/正確な情報の収集と共有等

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