PEACE活動報告ブログ

シカ駆除の現状は…… 環境省のニホンジカ保護管理検討会を傍聴 

1月10日に、環境省が開催した「平成24年度ニホンジカ保護管理検討会」を傍聴してきました。

現在、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」第7条に基づき、数が著しく増加又は減少している鳥獣については、「その地域個体群を長期にわたって安定的に維持する」とともに「農林業被害を軽減する」ため、必要に応じて、各都道府県で「特定鳥獣保護管理計画(以下、特定計画)」を策定して鳥獣保護管理を行っています。そして、その特定計画作成のため、ニホンジカ、クマ類、ニホンザル、イノシシ、カモシカ、カワウについて、環境省がガイドラインを作成しています。

環境省:

特定計画制度について、特定計画作成のためのガイドライン

環境省では、ガイドラインの補足情報として、毎年1回、最新の情報や課題を整理して「保護管理レポート」を作成し、自治体に配布して鳥獣の保護管理に役立ててもらうことを考えており、その保護管理レポートの作成のため、本検討会が開催されました。

ニホンジカ、クマ類、ニホンザル、イノシシについて、4回に分けて検討会が開催され、それぞれについて今年度中に保護管理レポートが作成される予定です。

今回の検討会の議題はニホンジカで、具体的には、以下のことが話し合われました。

  • ニホンジカの保護管理の現状と課題
  • 保護管理レポート案について

◆ニホンジカの保護管理の現状と課題

現在、ニホンジカの生息域は、限られた都市部や豪雪地域を除き拡大しており、今後もさらなる拡大の可能性が示されています。

ニホンジカによる主な影響としては、農林業被害、生態系への影響、森林被害(下層植生の減少・消失、特定の群落や種の減少・消失、不嗜好植物の増加、樹皮剥ぎによる林木の枯死・草原化、表土流出・斜面崩壊、湿原のかく乱)があります。その影響は大きく、野生鳥獣による農業被害金額では、ニホンジカによる被害が全体の3割を占めトップ(平成22年度)、森林被害面積でも全体の6割を占めトップ(平成23年度)となっています。

検討会で提示されたデータでは、全体的に被害が増えていることは明らかなのですが、例えば農業被害では年毎の被害金額と被害面積が必ずしも正比例していない等、どこの地域で何の作物が被害を受けたのか詳細が分かりません。有効な被害対策を立てるためには、被害が増加した地域・減少した地域、被害が増加した農作物・減少した農作物といった、地域ごとの整理が必要との意見が出されていました。

被害の影響の大きさを受け、現在までに、ニホンジカの主要な分布域である都道府県のすべてで特定計画が作成されています。第10次鳥獣保護事業計画期間(平成19~23年度)中に作成された特定計画は35自治体36計画、第11次鳥獣保護事業計画期間(平成24~28年度)中現在までに策定された特定計画は34自治体37計画となっています。特定計画では、より多くのニホンジカを捕獲するため、メスの可猟化、1日あたりの捕獲数制限の拡大、狩猟期間の延長、休猟区規制緩和等の規制緩和措置をとっている自治体も多くあります。

ニホンジカの捕獲数は年々増え、2010年度には全国で約36.5万頭のシカが捕獲され(環境省統計「狩猟及び有害捕獲等による主な鳥獣の捕獲数」より)、10年前の2倍もの数になっています。またその内訳は、狩猟17万頭、管理捕獲等19.5万頭と、狩猟よりも管理捕獲の数が多くなっています。一方、狩猟者の数は年々減少し、高齢化しています

◆保護管理レポート案について

ニホンジカの保護管理に関する基本認識は、「過去10年以上にわたる取組は、ニホンジカ個体数の増加を遅らせ、一部地域では抑制していると考えられるが、全国的には引き続き個体数の増加と分布の拡大が続いており、減少傾向への転換は達成されていない。したがって、現時点で最も基本的課題は、捕獲圧を格段に強化し、増加傾向を減少傾向に転換させた上で、個体数を望まれる水準まで低下させることである」というもので、保護管理レポート案では、重要な課題として以下の4大項目が挙げられました。

  • 個体数の低減が達成されていない。
  • 特定計画における目標設定とその具体化に問題のあるケースが見られる。
  • 科学性と計画性を持った管理計画の策定と施策実施という点で、改善が必要な課題や地域が多い。
  • モニタリング(観測、調査 、分析等)は特定計画の策定と実行に必要な作業として定着しているが、予算削減を背景として縮小が進み、科学性の確保に支障が生じている。また、データの必要性の優先度を考慮した適切なモニタリングが求められている。

提示された保護管理レポート案を見ると、最新の情報や新しい管理手法といったものは載っておらず、ニホンジカの保護管理や特定計画策定・実施についての基本的なことが書かれている印象です。特定計画の内容と実施に関しては、都道県間にかなりの差があり、全国的な先進例としてニホンジカの保護管理を牽引している地域がある一方、特定計画の内容が形式的で形骸化する傾向がみられる地域もあるそうです。保護管理レポートは、今現在うまく特定計画の策定・実施ができていない自治体の底上げをするための存在のように感じました。検討委員からも、もう少し踏み込んだ内容にするべきとの意見もだされていました。

最終的に、保護管理レポートには、ニホンジカ管理の現状と保護管理に関する重要課題や、特定計画を策定・実施するための点検項目と対応方向を記載することを検討中とのこと。また、各自治体の担当者が自己チェックをし、その結果に対するアドバイスを提供する様式にしたり、参考事例などを入れることを検討中だそうです。

検討会では、その他、以下のような意見がだされていました。

  • 5年ごとの特定計画の策定や目標の見直しでは不十分。毎年計画を立て、毎年目標を見直すよう努力するべき。
  • 環境省が各都道府県から鳥獣保護管理に必要なデータを収集し、国全体の状況を把握できるデータを作成するべき。
  • モニタリングには費用がかかり、予算がとりづらい現状では十分なモニタリングをすることは難しいが、まずは手元にある資料をしっかりと分析することも大切。

余談ですが、環境省から検討委員へ、「都道府県がデータ収集に協力してくれないが、どうしたらよいでしょうか」という質問がされていました。「そのくらいのことは自分たちで考えて、試行錯誤してみたらいいのに。大丈夫かな、環境省!?」と思ってしまいました。

保護管理レポートは今年度中に作成され、ホームページに掲載する予定とのことです。最終的にどのようなレポートが作成されるのか、チェックしたいと思います。

(M.T.)
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