動物愛護管理基本指針等の改正、骨子案出る 第38回部会傍聴

意見をお送りください先週17日、環境省で動物愛護部会が開催され、動物愛護管理基本指針の骨子案や、家庭動物・展示動物の飼養保管基準など見直しのポイントが出てきました。次回5月17日には改正素案が出てきて、議論がされた後、もうパブコメに入ります。

パブコメになってからでは遅いので、ぜひ皆さま、指針や基準の「ここを変えたい!」がありましたら、このゴールデンウィーク中(できればこの3連休中)に環境省へご意見メールをお送りください。
法律には書けないような細かいことでも、指針や基準なら書き込めます。

今回改正の対象となるのは以下の5つです。
動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進 するための基本的な指針(動物愛護管理基本指針)
⇒殺処分半減などをかかげた指針で、この内容に即して各都道府県が計画を立てていきます。実験動物や畜産動物についても書かれています。

家庭動物等の飼養及び保管に関する基準
⇒伴侶動物と暮らす人だけではなく、学校や福祉施設の動物飼育にもかかってくる基準です。

展示動物の飼養及び保管に関する基準
⇒動物園やペットショップの展示や撮影に動物を使うときなどにかかってくる基準です。

動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置
⇒所有者明示にかかわる詳細が書かれています。

犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置
⇒引取り・収容等にかかわる詳細を定めています。引き取った犬猫を殺処分してよい根拠もこの中に書かれています。

※追記:すでに議事要旨のページに資料がアップされていますが、意見は、ぜひもとになる基準や措置全体を見渡して改善点をお送りください。

第38回の部会では、基本指針の実施状況の点検と前回までのヒアリング結果がまとめられた資料について説明があり、それに続いて見直しのポイントについての議論がなされました。少し長くなりますが、それぞれご報告します。

listmaru動物愛護管理基本指針

施策別の取り組みとして、概略、以下の点を記載することが骨子案に載っています(全文ではなく短くしてあります)。緑字が委員の意見等です。

(1)普及啓発
○動物の愛護及び管理に関する教育活動や広報活動の実施を継続すること
○改正法に所有者の責務として終生飼養や適切な繁殖に係る努力義務が明記されたことは積極的に広報すること
○ふれあい事業では、動物に与えるストレスを考慮する必要があることから、あり方について検討すること

⇒ふれあいについては、関係団体の意見も聞いてほしい、推進していくものとしてほしい、人の健康にもいい等の肯定的な意見が多く出、座長もふれあい推進的な発言をしていましたが、環境省としては、何でもいいというわけではないということを示すことが意図だとのこと。ぜひその態度は貫いてもらう必要があると思います。動物園も試行錯誤しながらやっている、目に余る学校飼育の状況がある等の発言もありました。

(2)適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保

○飼い主に対する教育が重要。適正飼養講習会等の取り組みをさらに推進するとともに、販売時における説明・指導等が適切に行われるようにすること
○引取り拒否の規定が設けられたことを踏まえ、新たな引取り数及び殺処分率又は数の削減目標を設定すること
(環境省から委員に対し、数がよいのか、率がよいのか議論してほしいとのコメントあり)
 目標設定に当たっては、引取り数の減少が下げ止まり傾向の自治体に配慮する必要がある

⇒殺処分率についてはかなりの差があるので率でやるのは難しい、各県の率を低くすることはできるだろうが一律は難しい、複数の基準年にすればよいのではないか等の意見が出ていました。下げ止まりについては、この部分の飼養者たちをどう扱っていくか、動物を飼うべきでない人をどう扱うか、強い指導ができるような方策がないと難しいといった意見もありました。
また法律が専門の委員から、「法律には殺処分ができる根拠がない」と言われてきたが、今回の改正で条文に「殺処分がなくなることをめざして」と言う文言が入っているとの指摘がありました。

○引き取った犬猫の譲渡の努力義務が法に明記されたことを踏まえ、譲渡の機会を増やす取り組みをすること
○遺棄・虐待の防止へ向けた取り組みの強化、警察との連携を一層推進すること

(3)動物による危害や迷惑問題の防止

○地域猫対策を含め、所有者不明の幼齢猫の引取り数削減の推進を図ること。それにあたって、地域猫活動に対する正しい理解を得るための取り組みや地域差を考慮することが必要

⇒地域猫の定義・内容・方法についても入れてほしいとの意見があり、環境省からも定義などは明確にしたいとの説明がありました。

○特定動物を販売する業者は、販売者に対し許可の有無の確認だけではなく、飼育方法等に関する適切な説明を実施すること
○特定動物の指導マニュアルの策定。専門知識をもった人材の育成

(4)所有者明示措置の推進

○返還を容易にする所有者明示措置の推進は重要。犬猫に関する所有明示の実施率倍増を図る
○販売される犬猫へのマイクロチップ装着の義務化へ向けた検討を行うこと。情報管理体制の整備を早急に行うこと

⇒動物園関係者から、マイクロチップは、とれる、移動して読み取れなくなるなどの問題もあるとの指摘がありました。

(5)動物取扱業の適正化

○新たな規制の着実な運用
○業界全体の資質向上や自治体による業の監視の強化等が必要。国はこれらに対する支援を検討すること

⇒業界団体より、法改正で移動販売の規制がもれてしまったが、ケージは床に釘で固定する、立入は3日前までに現場確認が必要なものとするなどと決めてもらえればできなくなるので、ぜひそうしてほしいとの意見が出ました。これはぜひ業者の遵守基準に入れていただきたい点ですが、既に告示されているので、これから検討される施設基準等の際にもしつこく要望していくべきだと思います。

(6)実験動物の適正な取扱いの推進

○環境省基準の順守状況は100%ではなかったことから引き続き周知を、基準の解説書の作成などを通して効果的かつ効率的に行っていくとともに、実態把握を継続していく
○緊急時の計画の策定状況も実態把握する必要がある
○国際的な規制の動向や科学的知見の収集に努める

⇒カバーされていないところで何が起きているのか。実態はわかっているのか。動物実験は自主管理されているからいいと言うが、それでいいと言うのは疑問。自主管理はできて当たり前。事故や間違いはあり、ちゃんと公表していくシステムにしていくことが必要等の意見が出ていました。
あまり厳しくすると海外に出て行ってしまうとの意見もありましたが、指針にもとづく実態把握だけでそこまで厳しくできるはずもなく、杞憂だと感じました。

(7)産業動物の適正な取扱いの推進

○OIEの畜種毎の飼養基準がブロイラー、肉用牛について策定し、その他の畜種についても検討されていく予定であることから、こうした国際的な動向や科学的知見に関する情報の収集を踏まえ、産業動物の飼養保管基準に反映させる
○アニマルウェルフェアの認知度は2割以下であったことから、普及啓発を引き続き実施すること
○災害時における産業動物の取り扱いについても、情報共有を図るなど関係省庁間で協力すること

(8)災害時対策

○平常時の準備等の適切な動物救護体制の整備を推進すること
○地域防災計画等における動物の取り扱い等に関する位置づけの明確化も引き続き推進すること
○民間団体との災害時応援協定の締結を推進すること
○自治体間で協力して広域的に対応する体制の整備を推進すること

⇒実際の飼い主に訓練できるかと言うと難しい、飼い主責任をアピールしてほしい、消防や警察との連携も必要になるが、国レベルでも連携してもらわないと県レベルだけだと難しい等の意見が出ていました。

(9)人材育成

○自治体における協議会の設置、推進員の委嘱は引き続き推進すること
○推進員等の人材育成を積極的に推進し、被災動物への対応や取扱業者等による不適正飼養の事案への積極的な関与を検討すること
○推進員の委嘱・資質向上に資する研修の実施等に関する情報提供・技術的助言を着実に実施すること
○適正飼養に関する知識及び技能等を保持する人材のデータベースを関係者間で共有する仕組みについて検討すること

(10)調査研究の推進

○犬と猫の親等から引き離す理想的な時期についての科学的知見を充実させること
○販売される犬猫等にマイクロチップを装着させるための方策についての調査研究を実施すること

⇒何年でどのレベルまでやるという目標を決めていくべきとの積極的な意見も出ましたが、環境省の回答は、あくまで付則に書かれているスケジュール感でした。

○諸外国の制度及び科学的知見に関する文献を収集すること

⇒(虐待罪について)司法の運用実態がわからないので、国内のことも調査してほしいとの意見がありました。

listmaru家庭動物等の飼養及び保管に関する基準

環境省が見直しにあたって考慮すべき点として挙げているのは、概略ですが、以下のとおりです。

  • 終生飼養の考え方の明記 
  • 虐待の定義の明確化、多頭飼育の場合の適正飼養
  • マイクロチップの装着に努める
  • 特定動物の施設基準の見直しを踏まえた記述の追加
  • 緊急時対策
  • 犬猫については、終生飼養、引取り拒否規定、8週齢規制などを踏まえた改正
  • 危険な犬については、記述を詳細化。事故を起こした場合の民事責任、刑事責任の可能性についてなど。
  • 所有者の判明しない猫への餌やりについて、記述の追加
⇒委員からは、特定動物を家庭動物として飼うこと自体がおかしい、飼養しないというのがいいのではという、ありがたい意見も出ていました。
家庭動物の基準でも8週齢が出てくることについては、家庭で繁殖する場合も同様にという意味だとのこと。これについては、社会化と結びつけて書いてほしいとの意見がありました。

終生飼養は重要ですが、動物の健康・安全が守られたうえでの終生飼養とするべきではないかと思います。

listmaru動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置

マイクロチップの重要性を記述し、販売時の義務化へ向けたデータ管理一元化に官民協働で取り組むことなどを含めるようです。

⇒道筋を考えて書いたほうがいいのではないか、マイクロチップなのか鑑札なのか日本として統一していくべき、登録は埋め込んだ獣医師に責務を負わせるべき、一元化はいまやらないと、といった意見が出ていました。

listmaru 展示動物の飼養及び保管に関する基準

見直しにあたって考慮すべき点として挙げられていたのは下記の通りです。質問は出ていましたが、特に大きな意見は出ていなかったように思います。

  • 特定動物や大型動物の展示を検討する際は、飼養が困難であり費用もかかることを示し、終生飼養が可能かどうか慎重に検討する必要がある旨の記述を追加する
  • 犬猫の夜間展示規制の遵守について記述する
  • 危険な動物を展示する際の施設基準・飼養保管基準について、より基準遵守を明確にした記述の追加を検討する
  • 8週齢規制を踏まえた記述の追加をする
  • 撮影にあたっては幼齢動物の健康への影響に考慮する旨等を追加する

listmaru 犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置

見直しにあたって考慮すべき点は以下の点が挙げられています。

  • 引取りを求める事由について詳細な聞き取りが必要であることや、拒否についての記述の追加
  • 改正遺失物法の規定と齟齬が生じない整理を行う
  • 返還・譲渡の努力義務規定に準じた記載の追加を検討。譲渡に当たっては第二種取扱業に該当するかの確認等についての記述の追加の検討
  • 既に行われていない処分方法の削除
  • 報告様式の改善
⇒引取り事由の聞き取りについては、全国同じ基準で収集して報告し、次に生かせるような形にするのがよいのではないかとの意見がありました。(自治体から国への報告の書式も、この措置で決められています)

政省令等改正のスケジュール

ちなみに、25日に、動物取扱業者が守るべき細目についても公布がなされました。

外部リンク:
動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目の一部を改正する告示等の公布について

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