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環境省の動植物園等の検討会傍聴~認定動植物園等(仮称)とは!?

ご報告がすっかり遅くなってしまいましたが、昨年度(平成27年度)にも、動植物園等公的機能推進方策のあり方検討会が2回開催されました。

3年連続で続いてきた同検討会による検討の最後であり、結論から言うと、種の保存法の改正による規制緩和を伴うような新制度の導入が提言されることになってしまいました。最終報告書は下記に掲載されています。

動物園関係者が訴える意味が理解できない「動物園法」等の導入はなく、元日本動物園水族館協会会長である山本茂行氏が、この程度では自分たちが求めたこととは全く違うと言って第1回の際に怒っていましたが、関係者が求める身勝手な法制度を阻止することができたことは一定の成果と考えます。

しかし、動物園が種の保存の活動を行っているという解釈のもとに、「認定動植物園等(仮称)」の制度をつくり、種の保存法上の手続きを緩和する、国が財政的な支援を行う、各種表彰制度をつくるといった結論が出されてしまいました。

規制緩和は、具体的には国内希少野生動植物種及び国際希少野生動植物種の譲渡規制を適用除外とする、つまり許可が不要となるということが提案されています。現状でも許可は出てしまっていることを考えると、実質的な影響はないとも言えるかもしれませんが、繁殖で動物をふやそうとしている動物園業界にとっては都合の良い制度です。
目次

「いい動物園」という意味ではありません!

しかし、この名称や制度案から勘違いしてはいけないのは、この制度には「動物福祉は全く勘案されない」という点です。

動物がどのように惨めで本来の環境とはかけ離れた環境で飼育されていようと、また、動物が異常行動を起こしていたり、心身ともに問題があると見受けられるような状況であろうと、許可の免除はされうるし、表彰もされうるし、支援策の対象になりうるというのが現時点で考えられている案です。

東山動植物園ツシマヤマネコ 家庭で飼われている猫のほうが広いくらい…
東山動植物園ツシマヤマネコ 家庭で飼われている猫のほうが広いくらい… 2016年6月

もちろん、詳細はこれから決めると言われており、まだどうなるかはわかりませんが、現状の種の保存法の運用が反映されるのであれば、ショーにチンパンジーを使っていても関係なく認定される可能性があります。少なくともこのような問題事例が優遇されるような制度をつくるべきではないと思います。

動物福祉が除外される理由は、動物福祉は動物愛護法上の規制によって担保するべきだという考え方があるからであり、それ自体は正しいとも言えますが、極端なことを言えば、動物愛護法に基づく指導が行われたとしても、また改善勧告や命令、営業停止命令が出たとしても、さらには動物虐待罪で起訴されたとしても、環境省から認定動物園と認められたままでいられるし、規制免除も受けられる、ということになります。

これは一般人の感覚からすればどこかおかしなことであり、実際にそのようなことがもし起きれば、指定取り消しを求める動きが市民の間に生じるのではないでしょうか。

そもそも、動物園における希少種の繁殖のほとんどは、展示業に供するために行われているものであり、生息数回復に寄与するわけではありません。「珍しい動物を人間に見せたい」という営利目的での展示のために動物を野生から捕獲することはしないという消極的な意味合いしかありません。

域外保全として、ゆくゆくは野生復帰を目指すもの(つまり国内希少種に限られると思われる)を環境省が優遇するのであれば理解ができますが、本来の生態にかなった飼育ができるわけではないのにも関わらず、いわゆる客寄せパンダ、ゾウ、キリン等々……をこれ以上ふやす必要は全くありません。

上野動物園のスパールバルライチョウ 国内希少種の飼育技術向上に役立つとの触れ込みだが、この哀れな飼育施設は…
上野動物園のスパールバルライチョウ 国内希少種の飼育技術向上に役立つとの触れ込みだが、この哀れな飼育施設は… 2016年5月

ましてそういった展示が教育につながるかどうかについては疑問が呈されています。

例えば、ゾウは動物園の必需品だから導入しろという訴えが通用するほど数多くゾウが飼育されているこの日本において、象牙の販売禁止が実現しないどころか、消費を止めることへの理解は極めて乏しいと感じます。むしろ利用し続けることが正しいとすら思われているのではないでしょうか。ゾウの飼育が保全意識につながってない(=飼育に教育効果がない)ことの端的な例といえます。

今回、新制度を導入するには種の保存法改正を必要とするため、現在環境省が開いている種の保存法の検討会において検討されることになっています。次回8月3日がこの件を検討する回になっているので、関心のある方々はぜひ傍聴をお願いいたします。

法改正は、平成29年度(来年)の通常国会をめざすとのことです。

消費者をだますような制度設計になるなら問題

動物園というのは、一部の活動が認められたからといって、すべての側面で一定以上の活動を保っているということはありません。そのようなパーフェクトな園は存在せず、飼育状況についてもとても悪いものが混在しているのがふつうです。

ですが、この新しい認定制度では、実際には一部の活動が評価されたに過ぎないにも関わらず、「この園は素晴らしいのだ」という過剰な宣伝に用いられる可能性が恐ろしく高いと懸念します

内容を事実より良いと誤認させないため、広告規制等の歯止めの導入も必要ではないでしょうか。入園料を支払っているのは消費者であり、不当に誤認させるようなことはしてはいけないと思います。

東山動植物園のジャガー。大型のネコ科の動物も、扱いの落差が激しい。
東山動植物園のジャガー。大型のネコ科の動物も、扱いの落差が激しい。2016年6月

報告書への疑問

最終的な報告書に対しても、いくつか疑問を感じました。

まず、背景として、「動植物園等を直接規定した法律は無く、(中略)種の保存、環境教育等の公的機能を担う施設として位置づける法制度は存在せず、動植物園等の社会的な位置づけが明確になっていない」といった動物園側から解釈した説明が書かれていることです。

現実の動物園の実態が娯楽施設なのですから、そのような法律も現状制定しようがないでしょうし、そもそも動物園自体が必要なのかというところに疑問が生じている中、一方的に動物園関係者の意見を取り入れたこのような報告書を環境省が出してしまうのは理解しがたいことです。

また、この報告書は、動物の愛護及び管理に関する法律では動物を展示する動植物園等とペットショップの扱いの区分が同じであるとも書いていますが、動物園等は「展示」、ペットショップ等は「販売」と区分はわかれており、事実と違います。

現状でも施行規則(遵守基準)を見れば、「販売」と「展示」でかかってくる内容は異なりますから、「より専門的な規制を」と言うのなら、この部分など関係する法令を発展させていけばよいだけです。

現状、「販売」より「展示」のほうが義務になっていることが少ないので、そこが誤解の源泉かとは思いますが、しかし、報告書の書きぶりには現行法の体系への誤解があるように感じます。動物園の実務者(取扱責任者)はさすがに動愛法のことはもう少しわかっているのではないかと思いますが、オピニオンリーダー的な方々が理解していないことが、こういったところに反映されてしまうのではないかと思います。

※区分とは第一種、第二種のことだとおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが、「動物園だから必ず第一種であり、営利目的のショップと同じカテゴリだ」ということはありません。野毛山動物園など第二種の動物園もあります。

オランウータンの子どもをインドネシアから連れてきて写真撮影に使う。ワシントン条約上の移動展示の許可を利用するという「裏技」を使って、未だにこんなことが行われている。 2015年11月、群馬サファリパーク
オランウータンの子どもをインドネシアから連れてきて写真撮影に使う。ワシントン条約上の移動展示の許可を利用するという「裏技」を使って、未だにこんなことが行われている。 2015年11月、群馬サファリパーク
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