PEACE活動報告ブログ

医療機器の動物実験とISO~動物福祉に関する要求事項改訂中

7月3日、国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)で「動物福祉と医療機器等の生物学的評価」と題する所内勉強会があり、外部からも聴講OKとのことだったので、参加してきました。講演をされたのは、元大阪大学動物実験施設の黒澤努先生で、現在は鹿児島大学の客員教授をされつつ、国立衛研でも医療機器部の協力研究員をされているとのことです。

また日本では医療機器の、いわゆる安全性については、JIS規格(JIS T 0993-1)あるいは国際規格であるISO10993「医療機器の生物学的評価」シリーズに準拠して行うこととされていますが、この策定を行っているISO/TC194のうち、動物福祉に関するワーキンググループであるWG3に日本から参加されているとのことで、この日の講演も、動物福祉に関する国際的な状況がいかに日本とかけ離れているかということについて力説されていました。

例えば、OIE(世界動物保健機関。農水省が現在も使っている日本語は国際獣疫事務局)の陸生動物規約に実験動物の章ができたことについては、研究や教育に使われる動物だけが対象ではなく、試験に使われる動物も対象であるときちんと書かれていることや(注:動物愛護法改正の際、動物実験関係者が「試験は含まれない」との言説を振りまいていました)、教育訓練ではトレーニングとコンペテンスが必要とされていることについて説明がありました。

コンペテンスとは、直訳すれば「能力・適性」ですが、適格性を審査されたものであること、つまり試験が行われていることという意味で、日本では全く求められていない要件です。

また、CIOMS(国際医学団体協議会)の動物実験に関する原則の改訂についても、コスト(費用)という言い訳はだめだとされている、つまり「(動物福祉に)お金がかかる」というのは理由にならないといったことなど、幾つかのポイントについて説明がありました。

そして、こういった国際状況を受け、現在ISO10993‐2「動物福祉に関する要求事項」は改定作業中とのことです。日本では動物福祉に関してしなければいけないことが法律に書かれていないが、ISOで決められていることをやれば国際的に輸出できるという理解で、ぜひ利用してほしいとのことでした。

黒澤先生は、最近、業界関係誌に日本でも法制度を整える必要性があることについて書かれていたので、その点についてははどういう話が出るか?と思っていたのですが、体制が整っていないところに急に作っても、内実が伴わないニセモノが出来上がってしまうとの懸念が示されました。確かにそれも一理あり、ヒューマンサイエンス財団の認証制度のことが頭をよぎりました。体裁だけのものができても意味はありません。鶏と卵どちらが先かという問題にはなりますが、国際レベルの動物福祉がある程度浸透していれば、法制度を整える後押しにはなるでしょう。

国際的な動物実験施設の認証制度であるAAALACについても、日本では長い間なかなか定着しなかったが、武田薬品が新研究所である湘南研究所で取得するとなったら、急に広まったとのことでした。日本の医療機器は、輸入が国内生産を4~5千億円超過しているそうですが、旧薬事法も新たに医薬品医療機器法と名称を変え、国としては力を入れようとしているところだと思います。これまであまり動物保護の観点からの批判にさらされてきていない分野かとは思いますが、この分野が日本の実験動物福祉向上の一つのきっかけになってほしいと願います。

しかし、それはもちろん内実を伴ったものであってほしく、学術論文のカバーレターのように適当に嘘を書けば通るという認識でいいられては困ります。

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