PEACE活動報告ブログ

ゲノム編集と動物たち―苦痛を与える遺伝子操作はゆるされるのか

遺伝子組み換えサケの話題について投稿した際に少しゲノム編集にも触れたので、夏のイベント参加報告になりますが、少し。

7月17日に江戸東京博物館の大きな会議室でシンポジウム「タブーに踏み込む科学・科学者――軍事研究、遺伝子操作について考える」が開催されました。池内了や島薗進のような著名なスピーカーが講演し、軍事研究についてもテーマに含まれていたせいか、かなり多くの方々が参加されていて驚きました。大教室が埋め尽くされている感じ。ただ、年齢層はとても高かったです。

この中で、動物に直結するテーマであったのが、ゲノム編集です。

特に、北海道大学の石井哲也教授が「ゲノム編集と生命倫理」と題してお話された部分は、ゲノム編集のように「簡単になった」と言われる遺伝子操作によって家畜に苦痛が生じているということをズバリ扱ったものでした。

たとえば、しばしば筋肉ムキムキの写真とともに報道されることもある、ミオスタチン欠損で筋量が増量されているブタ。論文によれば、難産や帝王切開を強いられており、舌肥大が起きており、歩行にも問題があり、呼吸困難まで伴うというのです。

また、性格的にも取り扱いが容易ではないとのこと。これは、ゲノム編集ではなく自然に起きたミオスタチン欠損によって筋肉が増えている牛を実際に見たことがある畜産研究者の方から、性格がピリピリしていて神経質で何だかかわいそうだったと聞いたことがあり、そのこととも合致するなと思いました。そんなに過敏だなんて、もしかして、常に体に痛みでもあるのではないかと疑ってしまいます。

ほかにも、豚繁殖・呼吸 障害症候群ウイルス(PRRSV)感染予防のためにゲノム編集されたブタでは早死産や仔の成長障がいがあるといった例。

また、動物福祉目的としてそのそも角が生えないようにゲノム編集されたホルスタインといった外見を変えてしまう例では、そもそもその必要性があるのか、わかりやすいからこそ懐疑的に見る必要があるのではないかとおっしゃっていました。

とはいえ、家畜については消費者にかなり警戒感を持たれるのではないかというのが石井教授の従来からの読みであり、実用化は「×~△」だろうとの評価でした。

そのほかの勉強会での関連情報

ゲノム編集については、カルタヘナ議定書及び国内法での扱いもまだはっきりしないので、注視して行かなければならない問題です。(参考情報

ゲノム編集によって起こされた遺伝子の欠損と、自然に起きた欠損との区別はつきません。ゲノム編集された肉であることがわかるよう印を入れることも検討されていると去年参加した勉強会では聞きました。しかし、そうなると導入があるので遺伝子組み換えとなってしまいます。

また角のない牛もそうですが、動物福祉を目的とした家畜のゲノム編集研究の流れが今あるというのは日本も同じです。動物にとって好ましくない行動を起こす遺伝子を始めから欠損させてしまえば動物は苦しまないという構想を知って、大変驚きました。採卵鶏の共食い・つつきをゲノム編集でなくす研究の計画を立てているというのです。筋肉増量等、直接食べる部分に関係する遺伝子でないから消費者も懸念は少ないとみられているとか? 

ただ、ウェルフェアに関心を寄せる消費者はオーガニックなどの自然志向とも層が被るので、そういった畜産物にどれだけ重要があるのかは疑問です。

また、劣悪な飼育環境下で一見好ましくない行動として発現するものも、もともとは動物の自然な欲求や行動に起因したり関係したりしています。本来の性質を奪ってしまうゲノム編集が家畜を救うとは思えません。飼育方法を変えれば改善できる行動を、ゲノム編集で変えようとするのは本末転倒ではないでしょうか。

畜産そのもののやり方を改善することをせずに、生命操作で対症療法の方向に走るのはいかがなものかと思います。

参考:
2016年9月24日(土)学習会「ゲノム編集技術を考える」
主催:DNA問題研究会
共催:日本消費者連盟/遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン

2016年9月29日 動物福祉研究会第1回シンポジウム
主催: 動物福祉研究会

このエントリーをはてなブックマークに追加