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獣医学教育をめぐる国際動向、製薬業界における獣医師の採用

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16日に文科省で開催された「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の第8回を傍聴してきました。文科省は事前にテーマを公開しないので当日行って驚いたのですが、この日の議題は下記のとおり、なかなか興味深いものでした。

(1)獣医学教育を巡る国際的な動向について 
    「獣医学教育に関するOIEの提案」 OIEアジア太平洋地域事務所 石橋氏
(2)製薬企業における獣医師確保策について
    (資料配布なし) 製薬協 中村氏
    「動物用医薬品(生物学的製剤)の研究開発に関わる獣医師について」
             日本生物科学研究所 布谷氏
(3)教育状況の分析に関するワーキングチームの調査分析結果等について

獣医学教育を巡る国際的な動向について

OIEの国際基準の中にも獣医学教育について書かれた部分があります。「陸生動物衛生規約」の第3.2章14条4項「a.獣医師」の中の「vi.獣医学教育」がそれにあたります。

また、「質の高い国内獣医療サービスを確保するために必要な獣医学卒業者の資質能力に関するOIE 提言」の日本語訳が、第4回の会議のときに配布されており、その内容などが紹介されていました。新卒者が備えているべき基本的資質能力として具体的に11種類挙げられている中には、動物福祉や、獣医法規・倫理の項目も入っています。

下記に翻訳をリンクしますが、「獣医学卒業者の資質能力」の部分の原題直訳は「獣医学教育の課程終了後、1日目から備えているべき能力」ですから、国際状況は、なかなかシビアに感じます。

PDF 獣医学教育の改善充実に関する調査研究協力者会議(第4回) 参考資料4-2
獣医学教育を巡る国際的動向(PDF:991KB)

ただし、この文書は提言であって国際基準ではなく、採用するかどうかは加盟国次第とのことです。OIEの権能には、水棲動物の動物の衛生・福祉も含まれますが、水棲動物については、所管が獣医当局の外にあることが多くの加盟国に共通する問題となっているそうです。獣医学のカリキュラムには、各国の状況を反映させる必要があります。

モデル・コア・カリキュラムについては、2012年5月のOIE総会で、策定することが決議された段階とのこと。獣医学教育に関するグローバル・コンフェレンスも開催されており、第3回が今年の12月、ブラジルで開催されるとのことです。

製薬企業における獣医師確保策について

非常に興味深いテーマであるにもかかわらず、製薬協の資料は傍聴者には配布されませんでした。(委員も卓上のみで会議後回収とのこと) 秘密にしなければならないような内容では全くなかったので、この対応に対しては非常に疑問に感じますが、加盟各社にアンケートをとる時間がなかったとのことで、「傾向については正確な数字はなく、印象でしかない」と強調されていたので、それが理由かもしれません。話をされたのは、日本製薬工業協会(製薬協)医薬品評価委員会基礎研究部会の中村さんです。

製薬企業で採用される獣医師の仕事には大きく分けて二つあり、ひとつは実験施設の管理獣医師。これは意外と少なく、(獣医師であることについて)特に優位性はないと言っていました。スライドにAAALACの文字が見えたのですが、動物福祉などについては一言も出ませんでした。もうひとつは、獣医学教育を受けた者として採用される仕事で、毒性試験などいろいろな仕事を挙げられていたと思います。

現在、製薬企業はシーズの発見に注目しているため、in vitro試験(注:試験管内試験。つまり培養細胞などを使い、生体をつかわない実験のこと)が増加しており、動物の使用は(以前より)少ないとのこと。獣医師を必要とするかどうかは企業の方向性によっても違い、がん原性試験などでは獣医師の役割が大きいが、そうではない分野もある。また薬物の種類によっても違い、抗生物質の開発は減っているが、バイオ医薬品ではサルを使うので獣医師が必要になってくる、などのお話をされていました。

獣医師採用の志向は企業によっても違い、意欲的な企業は毎年採用ということもあるが、獣医師限定ではない企業のほうが多いのではないかとのことです。傾向としては、常に減少というわけではないだろうが、おおむね減少傾向にあるのではないか。獣医師というのは、製薬企業の中では、医師に比べると特別な存在とはなっていない、(資格があるからといって)特段優遇されているわけではないという話も出ていました。一般人から見ると意外なことかもしれませんが、動物の活動をしていると、そういう印象は外から見ていても感じます。社内の横のつながりも薄いと言っていました。背景としては、獣医毒性学の歴史が浅いことなどを挙げていました。

また提案としては、大学で医薬品開発全般を扱う講義を行ってほしい、獣医毒性学の教室を充実させてほしい、企業との人材交流や社会人受け入れを行ってほしいといったことを挙げていました。

もう1人、動物用ワクチンの研究開発分野での獣医師採用について話をされたのは日本生物科学研究所の布谷さんです。企業は15社程度、獣医師の需要は、年に2~5名が平均だそうです。分野としては微生物学だが、獣医学領域の幅広い専門知識を要する仕事で、教育に対しては、畜産現場や関連製造業についての最新情報をぜひ取り入れてほしいと言っていました。卒後研修や、国外進出を想定したグローバルな人材育成についてもふれていましたが、ここでも獣医師の社会的処遇の改善が必要だという話が出ていました。(要するに給与のことを言っているようです)

教育状況の分析に関するワーキングチームの調査分析結果等について

教育実施状況調査の結果発表では、臨床系科目の実施時期が大学によってまちまちであることが公表され、2016年開始が予定されている共用試験に際してハードルになるのではないかといった話が出ていました。

資料では、各大学の臨床実習の特色などが列挙されており、臨床実習以外では、メディアを活用した自学自習の支援について計画が進んでいると書かれていたことが興味深いと感じました。

健康な実験動物をわざわざ犠牲にするような実習ではなく、現場の動物、実際の患畜、ICTツールなどで学んでほしいので、その方向で獣医学教育が変革されることを願っています。

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