獣医学教育における動物の生体利用の代替について、検討状況を質問しました

PEACEは2017年1月、獣医学系学部の犬を用いる実習について、実験計画書を公開し、幾つかの大学へ質問した内容についても順次公表をしてきました。

その後、全国大学獣医学関係代表者協議会と日本獣医学会が開催した市民公開連携シンポジウム「獣医師の役割と、その教育の今」の質疑応答で動物実験代替について質問をし、(こちらの意図は大学院以上の研究における動物の利用の代替について聞いたつもりではあったのですが)実習の代替について検討中である旨の回答がありました。

森映子記者の『犬が殺される』でも獣医学教育における犬などの動物の利用について多くのページが割かれており、その後の動きなどを知ることができますが、獣医学教育全体での取り組みがその後どうなっているのかを知るため、今年3月末の全国大学獣医学関係代表者協議会の総会に合わせ、質問書を送りました。

同協議会は総会前と代表者が変わっており、新しい代表者名で、先日ご回答をいただきました。

大変丁寧にご回答をいただいていますので、全文を公開いたします。回答については、ぜひこの全文をお読みいただきたいのですが、質問については以下に掲載しました。質問の下に、要約のみ併せて掲載しています。ご参照ください。

生体の利用について、現時点で廃止の決定や検討等は行っていないとしつつも、時代が大きく変わりつつあることを感じます。繰り返しになりますが、獣医学教育が変わることが日本全体の動物福祉向上、ひいては動物の地位向上に大きく寄与するはずだと考えます。

今後も、生きた健康な実験動物をわざわざ犠牲にして行うような実験・実習がなくなることを求めてPEACEは活動していきます。ご支援・ご協力をお願いいたします。

質問&回答要約

獣医学教育における動物の利用の代替に関する検討状況等について

拝啓
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 さて私どもは、科学上の目的で利用される動物たちの犠牲や苦痛に心を痛め、代替・改善等を求めて活動する市民グループです。

 昨年、東京大学弥生講堂一条ホ-ルで開催されましたシンポジウム「獣医師の役割と、その教育の今」におきましても、生体の利用の代替について質問をさせていただきました。その際、獣医学教育における実習等での生体利用についても代替の検討を進める予定であるとのご回答があったと記憶しております。

 その後、時間も経ちましたので、貴協議会での検討状況及び獣医学教育における動物の利用の現状等について改めてお聞きしたく、本書状を送らせていただきました。
3月29日に第110回全国獣医学系関係代表者協議会が開催される直前で恐縮ですが、この日に関係者の皆様が集まられてご検討される内容も含め、ご状況を教えてくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

【質問事項】

1.獣医学教育における動物の生体利用(※)の代替について、全国大学獣医学関係代表者協議会としての検討状況もしくは検討結果、それを踏まえた取り組み等の現状について詳細を教えてください。
(※致死的・非致死的問わず健康な実験動物を用いる実習や訓練利用を指し、患畜等、飼養者が他にいる動物の臨床実習は含みません)

回答要約:
協議会に「実習における生体利用と代替法導入を考える委員会(代替法検討委員会)」を設置。設置の主旨は、各大学の現状把握をすること、国内外の状況の把握をすること、全国的な統一方針を提示すること。実験動物施設協議会等と連携を図るべく、連絡会議を設置することも決定している。2018年3月の全国協議会では、代替法導入状況アンケート結果の報告、事例紹介等を行った。2019年3月の全国協議会では、アンケートの更新・再調査、各大学からの代替法導入へ向けた意見のとりまとめを報告。この結果に基づいて、各分野の方針を検討、策定することになる。

2.私立大学につきましては、一般社団法人日本私立獣医科大学協会が、「私立獣医科大学における獣医学教育の相互評価報告書(第九次)」を公開されているのを拝見しました。この中で、実習で利用された動物の種類と数、及び代替ツールの導入状況等についてまとめられていましたが、国立大学について、同様の調査は存在しますでしょうか。ございましたら、結果について内容を拝見させてください。

回答要約:
行っていない。

3.以前、当会で情報公開請求を行った際、動物実験計画書の提出及び動物実験委員会による審査を経ずに実習が行われていた大学が散見されました。貴協議会においても、実習での生体利用について、動物実験計画書の提出及び動物実験委員会による審査は必須であるとのご見解で相違ないでしょうか。

回答要約:
実習の生体利用については、文部科学省の動物実験基本指針を遵守し、各大学の責任の下で実験計画書の提出と動物実験委員会による審査を実施しているものと認識している。当協議会においても、各機関の責任においてこのルールが守られるよう会員各校に継続的に働きかけていく所存。

4.動物実験委員会による審査を経ずに実習・訓練等で動物の生体を利用している大学が現在もあるかどうか、把握されていますでしょうか。

回答要約:
協議会の中で改めて調査を行ったことはない。

5.苦痛の軽減等に関する科学的知見の進展、技術の習得に対する社会的要請の変化等を鑑みるに、実験計画書の審査が5年~7年ごとに1回等、頻度が非常に低くなっている大学は実質審査を行っていないのと同等ではないかと感じます。貴協議会として、実験計画書の審査は何年に一度が適切であるとのご見解でしょうか。

回答要約:
協議会としての基準は設定していない。仮に5年間の申請期間であっても、1年ごとの審査・更新が行われるのが一般的だろう。機関の間に大きな差がある場合は必要に応じて協議し調整に努めることもやぶさかでないが、最終的には各機関の責任において決定されることである。

6.ある獣医大学で、一般の方から譲られた家庭犬が実験動物として飼育されていました。この犬が教育のために用いられたかどうかは定かではありませんが、本来他の家庭に譲られるべき元家庭犬を、獣医学の目的のためとはいえ実験等で犠牲にすることに疑問を感じました。また過去には、ふれあい動物施設のリタイア犬や盲導犬育成のキャリアチェンジ犬などの利用についても耳にしたことがございます。
当会では、犬の実習利用そのものをなくしていただきたいと考えていますが、今後も外科実習・解剖実習等における犬の利用は継続されるのでしょうか。廃止の決定がなされているかどうか、もしくは検討されているかどうか教えてください。
万が一継続される場合、犬の入手方法に関する倫理基準や、実習が致死的でない場合の実習後の実習犬の譲渡規定等については検討されていますでしょうか。

回答要約:
生体の利用の削減、可能な限りの代替法への移行が全国獣医系大学教員の総意であることをご理解ください。その実現へ向け取り組みを進めており、合意点が見いだせれば、それを提示したいと考えている。現時点で、廃止の決定や検討等は行っていない。こうした検討はコアカリキュラム改定や参加型臨床実習拡充と連動が不可欠で時間を要するものであり、質向上に取り組んでいることもご理解ください。

7.先般、ソムノペンチルの販売終了に伴い、日本国内で医薬品品質のペントバルビタールの入手ができなくなり、動物実験の現場で混乱が起きていると聞いております。獣医学教育における生体の実習等での利用にも影響は出ていますでしょうか。代替の検討状況並びに、貴協議会が採用されている安楽死の方法がどのようなものか詳細がわかるものをお示しください。

回答要約:
今後、代替法検討委員会で関連事項について意見交換が行われる。安楽死法は、実験実施者が選択し、機関の委員会が審査をし、機関の長が承認するものであって、協議会が指定するものではない。該当文書はない。

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