日本政府は実験動物の獣医学的ケアが何を指すのかもわからない!

加計学園新獣医学部問題が再燃したことを受け、川田龍平参議院議員が実験動物の獣医学的ケアの必要性に関する質問主意書を出してくださいました!

動物実験では、意図的に人間が動物に苦痛を与える外科的処置を行ったり、薬物の投与を行ったりします。その際、鎮痛剤や麻酔薬を使う判断をしたり、苦痛を長引かせないための安楽死をいつするかといった判断をしたり、時には治療をしたりするため、獣医師の判断や処置といったものが必要だ……というのが、今の動物実験の国際的な潮流です。

この獣医学的ケアについて日本の法律が未整備なのではないかということ、また新獣医学部認可に際してこのことが念頭にあったのかということ、今後これらを担う管理獣医師の需給予測はどうなっているのか等について、川田龍平参議院議員が質問主意書を出してくださいました。

しかし、政府の答弁書が話を逸らすばかりで唖然です。

特に、実験動物管理獣医師の皆様さんにとって悲報と思われます。

それ以前に実験動物にとって悲報なのですが……

そもそも、もはや国際的には常識となっている「実験動物の獣医学的ケア」についても、「お尋ねの『実験動物の獣医学的ケア』及び『動物実験施設での獣医学的ケア』の意味するところが必ずしも明らかではないが」などと答えているんです、日本政府。

それ言っちゃうとマズいと思うのですが。

日本はこのまま動物実験を続けていて、大丈夫なのでしょうか?

もちろん質問において獣医学的ケアが何かということは具体的に示されています。要するに実験動物福祉など政策として取り組みたくないので、論点は完全にそらした回答をしているとしか思えません。

特に実験動物管理獣医師の育成や配置という観点については、無視。管理獣医師の需給動向も調べる必要はないそうです。

たった1条、3Rの理念をうたっているだけの動物愛護法や、中身スカスカの実験動物の飼養保管基準で適正化を図っていると考える日本政府。それによって話をそらしています。

ただし、日本も加盟するOIE(国際獣疫事務局)の陸生動物衛生規約が国内法に反映されていないことは認めました!

先日公表された科学技術白書では、日本の国際的地位の低下について指摘がなされたそうですが、さもありなんと思ってしまいます。基本的な国際水準を保つつもりがないのですから。

科学力の低下は、こういうところからも来ているのではないかと感じてしまいます。

質問と回答を下記に掲載しますので、ぜひお読みください。


※わかりやすく質問本文と答弁本文を交互に並べました。質問は枠で囲った太字部分です。

実験動物の獣医学的ケアの必要性に関する質問主意書(本文及び答弁)

 国家戦略特区における獣医学部新設に関しては、「「日本再興戦略」改訂二〇一五」において示されたいわゆる「石破四条件」において「ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかに」なることが条件のひとつとされた。また、平成二十九年六月一日の参議院内閣委員会において山本内閣府特命担当大臣(地方創生)は「具体的には、近年の創薬プロセスでは、基礎研究から人を対象とした臨床研究の間の研究、いわゆるトランスレーショナル研究で、実験動物を用いた臨床研究など獣医師の知見を活用した研究が重視されてきております。」との答弁を行っている。しかし、同答弁にいう「獣医師の知見」とは具体的に何を指すのかについて、政府の認識に欠落があるのではないか。

 実験動物には獣医学的ケアが必要であり、それを担保するための動物実験における獣医師の役割を明確にするということは、EU、アメリカ、オーストラリア、韓国等諸外国では法律もしくは指針等で行われており、国際実験動物ケア評価認証協会(AAALACインターナショナル)による国際的な動物実験施設の認証制度においても非常に重要視されている。

 また、日本の動物実験施設には獣医師がいない場合も多いと考えられる。静岡県では例年、県の動物愛護管理推進計画に基づき実験動物取扱施設に対する立入調査及び指導を行っているが、平成二十八年度の記録によれば、獣医師が実験動物管理者となっているのは五十一施設中九施設のみであり、残りの施設では主に技術者等が実験動物管理者の職務に当たっている。

 「動物の愛護及び管理に関する法律」においては、実験動物の苦痛の軽減がうたわれているが、実験動物の苦痛を軽減するための具体的な方法や獣医学的ケアを行う獣医師の役割については明確に規定されておらず、動物実験施設には必ずしも獣医師が配置されていない。このような状況でどうやって実験動物の苦痛の軽減の実効性を担保するのか。また、実験動物に対する獣医学的ケアを担保する法令上の定めすらない日本のライフサイエンス研究が、国際水準を満たすと今後もみなされ得るのか。

 以上から、加計学園の獣医学部新設に関しては、実験動物にできる限り苦痛を与えずに扱うための管理獣医師の役割の重要性が国際的に高まっていることについての認識が欠けたまま、動物実験における獣医師の役割を法令上明確にすることなく、獣医学部新設のみを進める形で議論が進められたと考える。獣医学部新設を最優先課題とするのではなく、まずは実験動物の獣医学的ケアに関する基本的な施策に取り組むべきではなかったのかとの観点から、以下、質問する。

一 動物実験においては、麻酔・鎮痛剤等の使用や、動物の苦痛度から判断される実験の人道的エンドポイントの設定や指示、術後の適切な体調管理等、実験動物の福祉に関し獣医師の診断・技術を必要とする場面が多々存在する。前記山本大臣の答弁における「獣医師の知見」という言葉には、実験動物の福祉に関する獣医師の知見が必要だという認識は含まれていたか否か。

二 国際獣疫事務局(OIE)の陸生動物衛生規約第七・八章における獣医学的ケアに関する規定では、「獣医師の助言及びケアは、いつでも受けられるようにすべきである。」とされているが、この規定は日本のどの法律の条文に反映されているのか。

一及び二について

 御指摘の国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」の規定は、加盟国に対し義務を課すものではなく、そのまま我が国の法律に反映されているものではないが、実験動物を科学上の利用に供する場合の方法等については、従来、動物実験が行われる事業を所管する各府省庁をはじめ動物実験を行う者において、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第四十一条第一項の規定により動物を適切に利用することに配慮するとともに、同条第二項に規定する動物に苦痛を与えない方法及び同条第三項に規定する回復の見込みのない状態に陥っている場合の措置に関し、同条第四項の規定に基づく実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成十八年環境省告示第八十八号)に従い、動物実験の適正化を図ってきているところであると認識している。
 その上で、御指摘の平成二十九年六月一日の参議院内閣委員会において山本内閣府特命担当大臣(地方創生)(当時)が述べた「実験動物を用いた臨床研究」は、これらの規定に従って適正に行われるものの趣旨であると認識している。

三 国家戦略特区において獣医学部新設を認めるに当たって、実験動物の福祉を獣医師が担うということに関する国際的要請の動向や、これに対応する各国の制度及び日本の法令の対応状況についての調査・検討等は行ったのか。

四 国家戦略特区において獣医学部新設を認めるに当たって、日本に動物実験を実施している施設は何か所あり、そのうち実験動物の福祉を担う目的で管理獣医師を配置している施設は何か所あるか把握していたか。また、現時点における施設数をそれぞれ示されたい。

五 国家戦略特区において獣医学部新設を認めるに当たって、日本の動物実験施設における、実験動物の福祉を担う目的での管理獣医師の配置に関する動向の調査は行ったのか。行っていた場合、管理獣医師の配置は増加傾向にあるか、減少傾向にあるか。また、管理獣医師の需給はどのように予測していたか。

六 前記三から五までの調査・検討等を一つでも行っていない場合、いわゆる「石破四条件」のうちの「ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかに」なることという条件を満たしていなかったと考えるべきではないか。既に加計学園の獣医学部は開設されているが、今からでも実験動物の獣医学的ケアについて法律上明確に位置づけるとともに、日本の動物実験施設での獣医学的ケアに関する実態調査を行うべきではないかと考えるがいかがか。

三から六までについて

 お尋ねの「実験動物の獣医学的ケア」及び「動物実験施設での獣医学的ケア」の意味するところが必ずしも明らかではないが、実験動物を科学上の利用に供する場合の方法等については一及び二についてでお答えしたとおりであり、「「日本再興戦略」改訂二〇一五」(平成二十七年六月三十日閣議決定)の「残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進」の「更なる規制改革事項等の実現」に掲げられた「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」において示されたいわゆる「四条件」のうち、「ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり」という点に適合しているかを判断するに当たって、御指摘の「三から五までの調査・検討等」を行う必要があるとは考えていない。


参考:

質問書と答弁書は下記ページからご覧ください。

また、この質問主意書は、川田議員が4月17日の農林水産委員会で獣医師の需給問題や職域の問題について質問された際、時間の関係で動物実験施設まで取り上げられなかったために提出されたものです。下記の会議録にその時の質疑が掲載されており、動物愛護行政で獣医師は本当にその資格を生かせているのかといった問題についても触れられていますので、ぜひご覧ください。

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