PEACE活動報告ブログ

実験動物飼養保管等基準を急に取り上げ始めた日動協教育セミナー

急にクローズアップされた環境省の基準

これまで忘れ去られてきた感のある環境省の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(実験動物飼養保管等基準)ですが、今年の日本実験動物協会の教育セミナーでは、急にこの基準に書かれている「実験動物管理者」について取り上げていました。

実験動物管理者は、この基準では「管理者を補佐し、実験動物の管理を担当する者をいう」と定義されており、施設長などの下で、実験動物の管理全般について任されている責任者のような立場の人です。

施設の規模等によって誰が担うかは違ってきていますが、大学の動物実験施設なら、施設長が管理者、専任教員や主任技術職員が実験動物管理者となる場合が多くなります。技術職員や飼育担当者は、基準では「飼養者」と呼ばれています。

そういえば、少し前から日動協が実験動物管理者研修を始めているので、実験動物飼養保管等基準も完全に忘れ去られたということもないのでしょうが、どうもこれまで重視されてきていない印象がありました。

ベテリナリー・パラフロフェッショナル(VPP)とは

今回、実験動物管理者がテーマに取り上げられたのは、セミナーを受ける技術者の人たちに将来のキャリアプランを持ってほしいという意味合いもあったようですが、もう一つは、どうもOIE(国際獣疫事務局)が、獣医関連専門家(VPP:Veterinary Paraprofessional)の育成や獣医師との協働体制の確立に向けて力を入れる必要があると提唱し、その国際基準等について検討を始めたことが背景にあるようです。

VPPのことをOIEは、「獣医師の責任と指示の下で、獣医の法定機関から認可された幾つかの獣医業務を遂行する権限を持つ人物」(セミナーテキストより)と定義しているとのことで、いわゆる動物看護師や実験動物技術者、地域の動物衛生従事者、食品検査官、家畜検査官などが含まれます。

認定制度などはOIE加盟国に強制的に課されるものにはならないようですが、実験動物技術者・管理者について国際基準も検討されるため、日本国内でこれらの人材の育成や認定をどうしていくかということが課題として浮上してきているようです。(日動協が担うのかどうかもまだわかりません)

根拠がほしいなら法律も認めればよいのに…

今回のセミナーでは急に、「文部科学省・厚生労働省・農林水産省の動物実験基本指針が実験動物管理者について触れていないから、ここに書きこませる必要があるのではないか」といった意見が演者から出ていました。

しかし、日本政府はこれまで、「動物実験については三省の動物実験基本指針、実験動物については環境省の実験動物飼養保管基準と、役割を縦割りにする」という方針を示してきており、実験動物関連係団体もそれに賛同してきたわけです。

実験計画の審査にも実験動物管理者が関与すべきということなのかもしれませんが、実験動物管理者の主な役割を考えれば、これまでの縦割りのしくみの中では、記述が環境省の基準の中に限定されるのは、どう考えてもやむを得ません。

不満があり、法令に根拠があるほうがいいと考えるなら、そろそろ施設の登録制度や指針・基準の一本化などに業界も応じるべきではないでしょうか。

日米比較

アメリカのCMAR(Certified Manager of Animal Resources)プログラムについての紹介もありました。強いて言えば日本の実験動物管理者に近い(?)「Laboratory animal resource manager」の専門資格認定のためのプログラムです。

一般的な管理者の認定資格のためのCM(Certified Manager)試験と、動物実験についてのAR(Animal Resources)試験の二つから構成されていて、実務経験はもちろん、長期の研修コースを受けなければならないなど、「日本でできるかな?」といった感じの制度でした。

実技については実務経験で担保されるということでしたが、これについては会場から、日本は資格を持っている人にどんな仕事をさせるかということが施設間で統一されていなくてバラバラだが、アメリカの場合は、この資格を持っている人にはここまでのことをさせるということについて、施設間で差が大きくないのではないかといった意見が出ていました。

なるほど資格社会アメリカ、確かにそのような仕組みなら資格を設ける意味も取得する意味もありそうです。丁稚奉公的なものが重視される日本組織風土の中で、果たして国家資格以外の資格がどの程度活用されているのかというのは、動物実験に限らない問題として存在するのかもしれません。

そのほか、製薬会社からは、動物実験をする人が減ってきているので社内での技術の伝承が難しくなってきているといった話もあり、アメリカの施設には動物の行動をみる専門家がいるのだがといった質問もありました。

リファインメントは難しい?

また、日動協の教育・認定担当理事である吉川泰弘氏は、近年自然科学の立ち位置が厳しい、科学の進歩はいいものを生み出すとは限らず、生命科学では科学者だけでは解決できない課題が出てきているといったことも話されていました。

特に、動物を使うことの根底が少し揺らいでいるとおっしゃっていたのは印象に残りました。

また、3Rのうち、リファインメント(洗練=苦痛の軽減)はどうもわからないところがあったが、研究者だけでは難しい問題だったのかもしれない、実験動物管理者とタッグを組まないと洗練した実験はできないのではないかといった話もありました。

日本では漫然と実験されていて、動物の苦痛と向き合うことがあまりされてこなかったのだろうな……とこれを聞いて感じました。

このセミナーは実験動物技術者向けのものですが、次の世代が変えていってほしいといつも思います。

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