動物実験

「日経サイエンス」に動物実験の代替についてあまりに酷い、間違った記述! 訂正文は掲載されたが…

投稿日:2019年1月27日

日経サイエンスに載った、許しがたい誤った記述。

「日経サイエンス」2019年2月号P112に掲載された「高校生が学ぶサイエンス講義 実験動物の今、実中研が紹介」という記事に、信じがたい誤りが載りました。

記事は、東京都立日比谷高校の生徒約40人が、日本の実験動物繁殖販売大手である日本クレアの母体「実験動物中央研究所」を見学し、所長の秦順一氏の話を聞いたという内容で、動物の利用の観点から倫理的とは到底思えない内容が様々書かれていますが、極めつけは動物実験の3Rの原則についての記述が決定的に間違っていました。

なんと、

①動物を使わないと研究ができない(Replacement)
②できるだけ少ない数の動物を使う(Reduction)
③実験するときに痛い思いをさせない(Refinement)

と書かれているのです。(太字はPEACEによる)

Replacement(代替、置き換え)を「動物を使わないと研究ができない」などと教えるのは、事実と全く逆のことを言っています。虚偽を教えていますし、このように思っているなら、3Rの本質を全く理解していないことになります。

研究というものは、動物を使うことありきで行うものではありません。まず最初にしなければいけないのは、動物ではない方法で仮説を立証できないのかと考えることです。残念ながら多くの研究者が、知恵を絞ることなく動物の利用に流れているのが現状ですが、それでもラッセルとバーチが何十年も昔に考えた、他の方法があるならそれを用い、動物を利用するべきではないというReplacementの原則は、3Rのうちまず最初にくるものであり、最も重要な部分です。

国内外の動物権利団体は「行うべきはReplacementのみ、他は動物実験を前提にしたもので受け入れがたい」とし、1Rをスローガンに掲げているほどです。

残りの2RであるReductionとRefinementは、Replacementが実現できなかったときに行う、次善の策にすぎません。

よりによって、最も重要なReplacementの説明を誤り、動物でなければ実験できないような説明をするというのは言語道断です。

この講演をした実験動物中央研究所は、これまでの動物愛護法改正において「われわれはちゃんとやっている、規制は必要ない」と主張し、法改正を阻止してきた業界関係者の中でも、特に中心的役割を果たした人物である鍵山直子氏が理事を務める研究所です。いわば、日本の抵抗勢力の総本山。そこで3Rの説明を誤っているとは、一体どういうことなのでしょうか。これまで言ってきたこととやっていることが乖離しています。

事実関係を正すメールを実中研に送ったところ、電話があり、以下のような説明がありました。

  • 講義ではきちんと説明していたのだが、記事の校正の時に気が付かなかった。(ライターや編集部だけが悪いのではないというニュアンス)
  • 「動物を使わなければならないときに限り動物を使う」という説明をしたところ、記事では言葉足らずになった。
  • 高校にも改めて説明に行く。日経サイエンスに訂正もお願いしており、文面を協議中。

質問には、Replacementについてどのような取り組みをしているかということも書いたのですが、これについては、あまり歯切れのよいお答えはいただけなかった印象です。海外では、実験動物生産大手のチャールズリバーがインビトロの研究所を持っていたりするので、そういった取り組みはしていないのか?という意味で聞いたのですが、ウェブサイトで3Rを掲げて取り組んでいるとのこと。サルの試験のNOGマウスへの置き換えなど、あくまで動物での置き換えのことを言っているようでした。

それにしても、講演を取材し記事を書いたライターが所長の話を聞いても1Rを理解できなかったというのは衝撃です。さらに、編集者が記事を読まないとは考えにくいですし、校正をする人たちもいるはずで、中身について常識外れであれば指摘するはずです。(3Rを知らなくても、英語のReplacementの意味がわかれば、日本語と合ってないとわかります)

皆が見落としたのであれば、いかに、動物の利用ありきで頭がかたくなっているかということです。動物を使わない、ヒトの生物学を前提とした新規の研究手法が必要だというのは国際的な潮流ですが、日本の科学誌は相当に関心が薄いのだろうと思いました。

さらに心配なのは、科学誌のライターが聞いて理解できないことを、高校生が聞いてわかったかということです。若者のほうが頭が柔らかいので理解したかもしれませんが、動物でなければ研究できないと考えている人たちが教えるのでは、凝り固まった人には意味が伝わらないということがはっきりしました。モデル動物の開発をし動物実験をすることが前提の研究所ですから、Replacementを日ごろ意識することもなく、説明が言葉の上だけのものになってしまったのではないかとも想像します。

実中研は、日比谷高校も訪問して説明するとし、終わったら報告するとのことでしたが、一昨日メールがありました。

1 日経サイエンス誌上による訂正文書の掲載について
  1/25(金)発売の同誌3月号に掲載されました。

2 日比谷高校に対する訂正の説明について
  1/17(木)同高校に訪問し、訂正の説明を実施いたしました。

「日経サイエンス」最新号には、確かに訂正文が掲載されていました。同じ「高校生が学ぶサイエンス講義」のページの最下部です。

ちなみに、訂正文の上は中外製薬の創薬研究のお話。動物実験で成功した候補物質の約92%はヒトでは失敗するのですから(今はもっと数値が上がっているとの報告も)、製薬業界こそ動物実験ではない方法を模索している最中のはずですが、動物実験についてはどのように話したのでしょうか。

都立日比谷高校というのは、いわゆる学業成績の良い生徒が集まる高校かと思いますが、生命を物質のようにいじることにばかり教えて大丈夫なのかという懸念を感じさせるシリーズです。このように科学誌がよいことのように取り上げるのは教育の一面だけであろうとは思いますが、一方に偏らずに、哲学・倫理学や、動物の感じる苦痛についてもバランスよくきちんと教えてほしいものだと願わずにいられません。

追記

日比谷高校の生徒たちにはきちんと説明が伝わっているのか?とご質問をいただきましたが、追加で確認したところ、日比谷高校様が講義に参加した生徒に対して、訂正内容についての説明を行ったとのことです。

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