PEACE活動報告ブログ

<実験用霊長類>ペア・グループ飼育にすることで福祉が大幅に改善

12月5日、つくばで開催された予防衛生協会セミナー「サル類の健康管理-日常観察の重要性-」を午前中だけ聞いてきました。興味深い話をいろいろと聞くことができたので、概要をご報告します。

◆ペアかグループ飼育にすることで福祉が大幅に改善

特に中外製薬からの「創薬研究における実験用サル類の日常観察」は大変興味深い発表で、日本の試験施設でも霊長類の複数飼育が始まっていることについて概要を知ることができました。

動物実験用のサルの飼育は、そもそも飼育環境が貧困である上に、実験操作そのものがストレスであったり、母親から早く隔離されたりしていることから問題を抱えやすいのですが、中外製薬では単独飼育からペア・グループ飼育に切り替えたところ、問題行動がなくなったとのことです。

エンリッチメントも、オモチャだけではなく映像や音楽を使ったり、給餌にパズルフィーダーを使ったり、工夫をこらしたりしているとのことで、人とサルの関係も大事だとのこと。創薬研究ではサルは長期間飼うので健康診断等も重要ですが、日本でも行動に配慮がされるようになってきているのは、注目に値します。

質疑応答で「意外にケンカはしないので、ぜひやってみてほしい」との回答があったことや、グループ飼育をしていない施設からと思われる質問が多かったことを考えると、まだまだ日本では複数飼育は進んでいないのではないかと感じられました。こういった機会に情報がシェアされることで各機関でも対応を変えて行ってほしいと思います。

ちなみに、給餌のときだけ単独ケージにするので、給餌量の把握についても問題はないとのことでした。

◆一人が見ることができるマーモセットの頭数…

「コモンマーモセットの日常観察」については、国立精神・神経医療研究センターから発表があり、同じ人が同じ動物の観察を続けることが望ましい、くせ・性格等を把握しないとわからないことがある等の話がありました。

一人がみることができる頭数は、繁殖・育成なら100頭が限界で、10~30ペア+子どもたちという見解です。かなり多いと感じたのですが、繁殖・育成の場合は健常個体であることも理由のようです。

実験研究の場合は、50頭と考えているとのこと。実験に使われている個体は非健常となり、いろいろな問題を抱えるため、実験処置の内容を理解する必要があると言っていました。慎重にやりたければ、もっと一人当たりの数を減らす必要があるそうです。

とにかくサルに警戒心を持たれないことが観察のために重要であり、担当者制でないと妊娠・流産・新生児などにも気が付かないと言っていました。

マーモセットの飼育の適温は何度かという質問が出て、28℃という説が広まっているが、これはケージ下が水洗になっている環境で繁殖を行う場合、新生児の体温が下がって死んでしまうため、死ぬリスクを減らすための温度であるとのことです。繁殖を行わないのであれば、もう少し下げても大丈夫とのことでしたが、20℃を切ると立毛し、寒そうになるとのことでした。

◆バイオリソースの繁殖場

京都大学霊長類研究所からは、ニホンザルの放飼場での飼育などについての発表がありました。2カ所あるナショナルバイオリソースの繁殖施設のうちの一つが京大霊長研です。生まれた子ザルは、1.5歳までは放飼場におり、その後実験に使うものは選別されて、供給となる3歳からは個別ケージになるそうです。

実験用ニホンザルによく見られる鼓腸(お腹が膨れて死ぬ)もグループケージに移すことで改善するとのことで、広い方がいいとのことでしたが、運動量がふえることによるものか、ストレス軽減によるものかという質問が出ていました。両方ではないか?との回答です。

◆年間200匹生産するために1500匹を飼育する霊長類医科学研究センター

予防衛生協会は医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センターの実験用カニクイザルの繁殖育成や飼育管理の委託を受けており、そこでの日常観察の話も出ました。

特に月経血のチェックは重要ですが、これもいかに微量のものを見つけるか、観察力が問われるようです。月経時の食欲不振は子宮内膜症などであるとのことでしたが、その場合は繁殖コロニーからは外し、症状が酷ければ手術をすることもあるが、疾患モデル動物として使われる場合もあるとのことで、なかなか無常なものも感じます。質問では月経前症候群的な症状の話も出ており、女性が飼育管理に入ってくることの重要性も感じました。(発表者も質問者も女性)

アメリカでは慢性の痛みを感じているということで犬歯の抜歯は中止されているが…という質問がありましたが、予防衛生協会は歯科の専門的な処置を受けており食べる量も減らないので今のところは行っているという回答。犬歯は、他の個体が傷つかないように処置されています。

不自然な環境で飼育・実験が行われていることに変わりはなく、サルの利用が多すぎることも実感しますが、今後日本でも福祉的な飼養管理へ切り替わっていくことを願ってやみません。

Crab-eating Macaques (Macaca fascicularis) grooming (15578459618)
By Bernard DUPONT from FRANCE [CC BY-SA 2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)], via Wikimedia Commons

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