日本航空が実験動物の輸送を中止! 但し、詳細は非公開…

動物の扱いに関して、国際的には関心がもたれているにもかかわらず日本では関心の薄いテーマに、輸送中の動物の福祉の問題があると思います。犬や猫といった家庭動物だけではなく、実験動物、畜産動物など、人間が利用する動物の生体輸送についても、国際的には大きな問題になっています。

そして、この波は日本にも無関係ではありません。今年5月、日本実験動物学会で日本航空(JAL)が実験用霊長類の輸送を中止したことが話題に出ましたが、これも国際的な動物保護運動の最近の成果の一つです。学会終了直後のタイミングで、アメリカの動物権利団体「PETA」がウェブサイト上で、日本航空(JAL)からサルの輸送を中止した旨の回答を得たことを公表しました。

この情報を受け、当会としても直接JALに電話確認を行ったのですが、その際、サルのみか実験動物全てかがはっきりしなかったことから、文書でJALあてに質問をしました。また、この中止の影響を調べるために国立大学法人動物実験施設協議会(国動協)が全国の大学にアンケート調査を行っており、国内線も対象である可能性があると感じたことから、国際線だけではなく国内線もなのか、さらに約款等が特に変更となっていなかったため、明文化されたルールなのかどうかも聞きました。

これに対し、6月29日付で回答書が届きましたが、対象はJALとして決定をした実験動物のみであること、荷主との契約上、詳細は非公開であることなどが書かれていました。当会としては今ひとつ、この中止に関してクリアーな印象は受けていません。

JALからの回答書はこちら(クリックで拡大)▼
JAL回答

年間数千匹の実験用霊長類が日本に輸入されている現実

ただし、実験動物学会で聞いた内容や、PETAに対してサルの輸送中止と回答していること、業界誌で話題になっているのがサルであること等々を考え合わせると、JALが輸送を中止したのが霊長類であるのは、本当だろうと受け止めています。
ちなみに、日本は霊長類を毎年約5千~7千頭輸入していますが、愛玩用の輸入は禁止されており、このほぼ全てが実験動物だと言われています。人間に近いサルを実験に使うこと自体に強い批判があり、年間にこれほど多くの霊長類が使用されていることに驚かれる方も多いのではないでしょうか。

詳細は、下記のページをご覧ください。

霊長類の輸入数推移2005-2014

しかし、例えば実験動物生産会社として有名な日本クレアは、インドネシアのデリー島という無人島で人工繁殖されたカニクイザルの輸入を行っていましたが、昨年、この取引をとりやめました。これは、貿易統計でインドネシアからの輸入がなくなったことと合致しています。ちなみに、輸送キャリアーは日本航空だったとのことです。(日本クレアはマーモセット研究で知られる実験動物中央研究所の関連企業であり、霊長類の販売は、現在マーモセットに移行しています)

サルの輸送の問題点と今後

国動協はアンケート結果については非公表とするとのことで、JALの件の影響が霊長類の輸入や輸送にどの程度あるのかは、実際のところよくわかっていません。

しかし、サルの国際取引は、長距離輸送のストレスがあること、長い検疫期間が求められること(輸出国で 30日以上、日本国内でも最低30日、計60日以上)、社会性のある動物であるにもかかわらず移動によって環境が著しく変化してしまうこと、繁殖母群に野生由来のサルが使われており感染症と生態系保全の両方の面から問題があることなどを考えると、サルにとっても実験施設にとっても好ましいものとは思えません。

また特に日本は、動物実験・実験動物に関して欧米諸国のような具体的な法規制がなく、国際的に求められているような公的な監督制度を持っていません。サルの最低限のケージサイズや飼養管理等についても公的な定めはなく、エンリッチメント(動物をより幸福にする飼育上の工夫)が進んでいる印象もありません。このような国に多数の実験用の霊長類を連れてきてよいのだろうかと疑問に思います。

輸送についても、注意をするようにはなったとは聞いていますが、日本到着時に霊長類が大量に死んでおり、その原因は、空気穴をふさぐように積載されていたためであったという話を聞いたこともあります。そのときスライドで示された写真は、サルを入れた木箱のようなものが積み上げられている感じでしたが、似たような輸送状況を海外の動物保護団体が写真で報じています。また、リスザルだったかとは思いますが、検疫所で次々と落ちていく(死んでいく)という話も以前は聞きました。

現在、実験用として取引されているのは主にカニクイザルと言われていますが、CITES(ワシントン条約)の対象となっている哺乳類の中では、生きたまま取引される数が最も多い動物です。近年、取引量の増大に対し懸念が持たれており、CITESの動物委員会でも議題になりました。

安いからといって、いつまでも年間数千頭のサルを輸入し続けることは問題があるでしょう。もし輸送が中止されることで影響があるのであれば、実験自体をサルではない方法に代替する方法を真剣に考えるべきときが来たのだと思います。

また、日本の動物愛護法には、動物の輸送時に配慮すべき事柄についての条文がありません。このことも、今後改善すべき点だと考えています。

▼CITES動物委員会の資料より
カニクイザルの国際取引

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