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イギリス:動物実験統計公表~半分は組み換え動物作出等での犠牲

一昨日、イギリス内務省が動物実験に関する統計の2015年版を公表しました。同時に、幾つかの研究機関や大学が、自分たちの施設の統計はここで見られるということをTwitterで広報しているのを見かけました。

この統計は毎年公表されているもので、イングランド、スコットランド、ウェールズで実施された実験処置(procedure)の件数や内訳について国が公表するものです。もちろん法律に基づいて行われている報告であり、各研究機関から集めた情報に基づいています。

この統計でいう実験処置(procedure)とは、「通常、使われた動物の数と一致する」と書かれており、いわゆる実験動物の利用数の統計と考えてよいものです。

ただし、動物を殺さず再利用するような場合は複数回のカウントになるので、全体として”procedure”の数は使われる動物の数よりわずかですが常に高くなります。この報告書の数字は、特に明記しない限り、動物の数ではなく、この実験処置数となっています。

前年の2014年に統計のとり方が変わったため比較できない数字となっており、前々年である2013年との比較が行われていました。

  • 2015年は総計で処置数は414万であり、2013年と比較して1%(2万1000)増加した。
  • 2015年に実験として行われた処置数は208万であり、2013年と比較して3%(6万3000)増加した。
  • 2015年に実験に用いられない遺伝子改変動物の作出/維持に該当する処置数は206万であり、2013年と比較して2%(4万1000)減少した。

遺伝子改変動物作出/維持のための犠牲

興味深いのは、遺伝子改変動物を作る過程で使われたり、改変動物の系統維持のために犠牲になったりした、実験には利用されていない動物の処置数が統計上明確に区分されている点です。

例えばですが、マウスであれば遺伝子改変動物を作るための受精卵の採取でも、マウスを殺して採取をします。しかも多くの受精卵が必要です。そして出産させるための偽妊娠マウス(仮親、いわゆる代理母)をつくるために、オスに精管結紮手術が行われます。生まれた子どもも、キメラでないなど不要な子は淘汰します。その子どもを野生型のマウスと掛け合わせ、さらに生まれた子を掛け合わせ……と目的の改変マウスをつくっていく過程でも不要な子マウスは間引かれます。こうやってつくった改変動物の系統を維持していくためにも淘汰される動物が出てきます。

そういった、実験に使うわけではない動物の犠牲がおびただしくあるわけですが、このイギリスの統計ではそれが全体の半分を占めている実態が統計上明らかになっていることになります。(この数には、改変動物を作るために使われる非改変動物も含まれています)

日本でも「どこまで数えていいかわからない」といった声を聞きますが、このように明確に分けるというのはひとつ参考になる点ではないでしょうか。

ちなみに、この遺伝子改変動物作出・維持系統の部分を占める206万のうち、マウスが86%(177万)、ゼブラフィッシュが13%(26万7000)、ラットが1%(1万1000)、アフリカツメガエルが0.4%(9,200)となっています。

また、全体の目的別は下記の通りです。

uk2015animalprocedure目的

種別の内訳

実験に用いられた分(208万)については、動物種別の統計は、マウス61%(126万)、魚類14%(29万4000)、ラット12%(25万8000)、鳥類7%(14万1000)。特別に保護されている種は0.8%(1万7000、内訳はウマ8,400、イヌ4,600、ヒト以外の霊長類3,600、ネコ210)でした。

uk2015animalprocedure 種別

機関別の内訳

機関の種類別では下記のようになっています。

uk2015animalprocedure-機関・組織の種類別

苦痛の程度

下記の図では「ひどさ」としてみましたが、処置がどれだけ動物にとって厳しいかの評価度別についても統計があります。

uk2015animalprocedure-ひどさ

ひどく苦しい(Severe):動物の通常の状態から大きく乖離する。給餌給水のような通常の行動にも支援が必要であったり行動に重大な欠陥が持続したりするような長期間の病気を含む。苦しまなかったと確定できる場合を除き、動物が死んで見つかった場合はここに含める。
中程度(Moderate):動物に重大かつ明確な障害がもたらされるが致命的ではない。全身麻酔下で手術され、術後に鎮痛処置を施されるものの多くは中程度とされる。
穏やか(Mild):苦痛がわずかであるか一時的であり、動物は短時間でもとの状態に戻る。
麻酔下で行い回復させない(Non-recovery (under general anaesthesia)):すべての処置が全身麻酔下で行われ、そのまま回復させない。
苦痛はない(Sub-threshold):プロジェクトライセンスのもと認可されたが法令の定めるところ以上の苦痛は実際にはなかった。例えば、優良な獣医技術によって行われる皮下注射による苦痛に満たないようなもの。

そのほかもっと細かい分析についても載っていますが、原文をご覧ください。

2006年体制のままでよいのか

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