先日消費者庁に提出した 倫理的消費提言書に最新の海外の法規制等の動向を少し記載していますが、雄豚の去勢がアニマルウェルフェア上の問題として諸外国では次なる課題になってきています。
去勢は畜産農家が自らが無麻酔で行うため、これを禁止する国が出てきたのです。またEUのように、自主的に終了する動きもあります(2018年までに段階的に終了することを宣言)。
去勢は、処置そのものに苦痛があることはもちろんですが、「処置後の腹膜炎や病気の感染さらには心的外傷性疾患による死亡(斃死)の多いことが、経験的に知られてい」たとのことで、
- 去勢後少なくとも4日間以上疼痛がみとめられ、離乳時の体重が少ない
- 去勢群は未去勢群に比べ、下痢や関節炎のために治療が必要とされた豚の割合や死亡率が高い
などのデメリットがあるにもかかわらず、行われているものです。1
理由としては、去勢をしないと肉に雄豚臭が残ることがあり、また性成熟が近づくために「去勢しない豚を群で飼養すると、生後5か月頃から同居している豚に盛んに乗駕することによりけがが多発する」ということも理由として挙げられています。2
しかし、豚の出荷時期は生後6か月。もともと人間は、とても若い豚の肉を食べているのです。
無麻酔の場合は、出荷を早めたり、全身または局所麻酔を使用したり、雄臭を防止する免疫学的製剤を用いたりします。
日本では畜産技術者協会の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」2において、生後7日以内に実施することとするとされていますが、同協会が実施した飼養実態アンケート調査では、去勢を行っていると回答した97%の生産者のうち約3割が生後8日以上で行っている実態がありました(平成27年3月)3。
しかし、本当に去勢は必要なのでしょうか? 昨年11月、放牧養豚をされている生産農家で食べ比べのイベントが行われた際のレポートを当日参加された方からお寄せいただいたので、ご紹介します。
食べ比べイベント報告
結果、もも肉についてはAが未去勢豚肉だと答えた人が15名、Bだと答えた人が26名、分からないと答えた人が4名であった。
ロース肉については、Aが未去勢豚肉だと答えた人が9名、Bが28名、分からないと答えた人が7名、不明が1名という結果であった。
いずれの場合も「まずくて食べられない」などという意見はなく「独特の風味があって未去勢豚肉のほうがおいしい」という意見もあった。
実施した「ぶぅふぅうぅ農園」のブログでも紹介されています。
不衛生な環境で飼育するとメスでも同様の臭いがあるという話もあり、一般に流通している工場畜産の肉と放牧養豚の肉とを一概に比べられるものではないかもしれませんが、インターネット上には「食べられない」「気分が悪くなる」と感じるほど強烈な雄臭の経験談もあるので、そこまで感じない肉であれば合格なのではないかとも思います。
雄臭の感じ方は、個人差・男女差・民族差あるとも言われていますが、日本でももっと動物の苦痛に関心がもたれてほしいと思います。
1 中根崇ほか「雄豚における免疫学的去勢製剤の効果と精巣機能」All about SWINE 41, 12-29(2012) 日本SPF豚研究会
2 畜産技術協会「アニマルウェルフェアの考え方に対応した豚の飼養管理指針」(平成23年3月)
3 畜産技術協会「豚の飼養実態アンケート調査報告書」(平成27年3月)