PEACE活動報告ブログ

動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問主意書からわかること

既に何度かブログでご紹介した動物実験基本指針に関する質問主意書ですが、質問と答弁を合わせたバージョンを下記のページにアップしました。

動物実験の3Rの原則(代替・削減・苦痛の軽減)について、その理念が法律に盛り込まれた改正動物愛護法の施行から、今年でちょうど10年が経ちました。また施行と同時に文部科学省・厚生労働省・農林水産庁の動物実験基本指針も告示・通知されましたので、これらの指針も10年間使われてきたことになります。

その今年、川田龍平参議院議員が、動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問主意書を国会で提出してくださっていますが、政府からは、未だに日本の動物実験全体をカバーするような国の指針は存在せず、指針の遵守状況も把握されていないことが一目瞭然でわかる答弁が返ってきています。

日本の動物実験は、何らかの法規制が存在するほかの先進諸国とは違い、これらの指針をもとに完全に自主規制で行われていますが、その根本を支えるはずの指針についても整備が不十分であることが、はっきりとわかりやすい形で示されました。

また、動物実験の3Rの原則が盛り込まれている動物愛護法第41条で、動物実験の代替・使用数の削減については「配慮するもの」としか規定されておらず、基準を定めることとされていないことがその根本原因であることも明確になりました。

不十分であるとはいえ、2006年の改正法施行で、動物実験に関わる人たちの意識は大きく変革しました。動物実験において、制度的にも動物福祉をより一層前進させるには、動物愛護法を改正することがやはり最も基礎となる部分で必要です。

質問主意書及び答弁の内容をわかりやすく下記にまとめましたのでぜひご覧ください。


「動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問主意書」及び答弁の概要

■動物実験基本指針が通知された先は?

・文部科学省 大学、大学共同利用機関法人、高等専門学校、文部科学省の施設等機関、文部科学省が所管する独立行政法人(独立行政法人国立高等専門学校機構を除く。)、文部科学省が所管していた公益法人であって科学技術に関する試験、研究若しくは開発又は学術研究を実施するもの。

・厚生労働省 厚生労働省の施設等機関、厚生労働省が所管する独立行政法人、厚生労働省が所管していた公益法人及び厚生労働省が所管する事業を行う法人であって動物実験等を実施するもの、都道府県、保健所設置市及び特別区

・農林水産省 農林水産省の施設等機関、農林水産省が所管する独立行政法人及び農林水産省が所管していた公益法人であって動物実験等を実施するもの、都道府県
 
■厚生労働省基本指針の対象は? 遵守状況の把握はしているか。

①厚生労働省の施設等機関:検疫所、国立医薬品食品衛生研究所、国立保健医療科学院、国立感染症研究所及び国立障害者リハビリテーションセンター

②独立行政法人(厚生労働省が所管するものに限る。):独立行政法人労働者健康安全機構、独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人医薬基盤・健 康・栄養研究所、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立循環器病研究センター、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、 国立研究開発法人国立国際医療研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター及び国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

③その他の厚生労働省が所管する事業を行う法人:薬機法に関わる事業を行う法人

①・②については遵守状況を把握しているが、③については把握していない。
 
■食品表示に関する業務を行う法人を対象とする動物実験基本指針(特定保健用食品、機能性表示食品)は?

定められていないが、厚生労働省基本指針に定める内容を踏まえることが望ましい。
遵守状況について調査する責任は消費者庁にある。
 
■農林水産省基本指針の対象は? 

・農林水産省の機関:動物医薬品検査所

・独立行政法人(農林水産省が所管するものに限る。):独立行政法人家畜改良センター、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、国立研究開発法人国際農林水産業研究センター、国立研究開発法人森林総合研究所、国立研究開発法人水産研究・教育機構

・民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人(農林水産省が所管するものに限る。):該当する法人は存在しない。

・農林水産省基本指針の対象に民間企業は含まれていない。

 
■食品の効能効果等のために行われている動物実験
国の動物実験基本指針は、定められていない。

 
■動物性医薬品の開発・承認申請等や農薬の開発・登録申請等のために行われている動物実験
国の動物実験基本指針は、定められていない。

 
■消費者庁が所管する事業における動物実験
国の動物実験基本指針は、定められていない。

 
■化審法上の新規化学物質の事前審査制度等、経済産業省が所管する事業における動物実験
国の動物実験基本指針は、定められていない。

 
■環境省が所管する事業における動物実験
国の動物実験基本指針は、定められていない。

 
■その他の省庁で動物実験が行われている事業、その際の動物実験基本指針の有無
①内閣府 ②食品健康影響評価技術研究等 ③有
①警察庁 ②科学警察研究所が実施する科学捜査についての研究及び実験 ③有
①総務省 ②生体電磁環境研究 ③有
①財務省 ②独立行政法人酒類総合研究所及び日本たばこ産業株式会社が実施する研究及び実験 ③有
①国土交通省 ②建築基準法に基づく指定性能評価機関における不燃材料、準不燃材料及び難燃材料に係る性能評価 ③無
①防衛省 ②防衛医科大学校及び陸上自衛隊が実施する教育、試験研究又は生物学的製剤の製造その他科学上必要な動物実験 ③有

 
■動物実験を行う民間法人全てが対象となる国の動物実験基本指針は存在するか。
ない。

 
■文部科学省基本指針、厚生労働省基本指針、農林水産省基本指針違反に対するペナルティとして明文化されたものは存在するか。
ない。

 
■国の競争的研究資金のうち、動物を用いる試験・研究に研究費が支払われているもの

平成二十七年度競争的資金制度のうち、公募要領等において動物を用いる試験及び研究に関する記載があるもの:
食品健康影響評価技術研究
国家課題対応型研究開発推進事業
科学研究費助成事業
戦略的創造研究推進事業
研究成果展開事業
国際科学技術共同研究推進事業
厚生労働科学研究費補助金
医療研究開発推進事業費補助金
農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業

このうち、遵守すべき国の動物実験基本指針及び当該指針に違反した場合に応募資格停止等となることが明文化されているもの:
国家課題対応型研究開発推進事業
科学研究費助成事業
戦略的創造研究推進事業
研究成果展開事業
国際科学技術共同研究推進事業
厚生労働科学研究費補助金
医療研究開発推進事業費補助金

 
■国内で動物実験を実施している機関のうち、国もしくは地方自治体が把握している機関は何割程度か。
国内で動物実験を実施している機関の総数の調査に膨大な時間を要することから、お尋ねについてお答えすることは困難。

 
■国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」では施設は少なくとも年一回定期的に検査(inspection)されるべきとされているが、これを実施もしくは何らかの形での実施を義務付けている官庁は存在するか。
加盟国に対し義務を課すものではない。環境省の飼養保管基準、文部科学省基本指針・厚生労働省基本指針・農林水産省基本指針において自ら点検することを定めている。

 
■動物実験の適正化について、我が国の法令及びその遵守状況は十分であると政府は考えるか。
動物実験基本指針については、環境省の飼養保管基準とも合わせ、国で一本化したものを動物の愛護及び管理に関する法律のもとに策定し、動物実験を行う全ての機関に周知する必要があると考えるがいかがか。
動愛法第四十一条第二項で、苦痛の軽減については「しなければならない」とされており、基準を定めることができるとされているが、第一項では、代替・削減について「配慮するもの」と規定されているにとどまり、これらについては基準を定めることとはされていない。

このことを踏まえ、法の下に一本化した基準を策定することとはしていない。

以上


2016.7.6追記 こちらの記事は、朝日新聞sippoにも転載されました。こちらをご覧ください。

 
2006年体制のままでよいのか

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