先延ばしになってきた業者規制強化の検討に、いよいよ動きが?

既に大きな話題になっていますが、10月24日、時事通信が「犬の繁殖回数制限へ=悪質ブリーダー排除(リンク切れ)」として、環境省がブリーダーに対し犬の年間の繁殖回数を制限する方向で調整に入ったと報じました。新たな規制を議論する有識者検討会を年度内にも立ち上げるとも報じられています。

また、これを受けて、朝日新聞「sippo」でも太田匡彦記者が繁殖制限や飼養施設基準等に関するこれまでの背景を含め、詳細を報じています。

どうやら、予定されていた検討の開始がいよいよ動き出す様子です。ただし、環境省はこの件について「まず実態調査から」とも述べており、慎重な様子も見られます。これまでずるずると延期されてきた経緯からすると当然かとは思いますし、私たちもここで気を緩めず働きかけをすることが必要だと感じます。

■先延ばしにされてきた経緯

そもそも繁殖制限やケージサイズ等を含めた具体的な数値による業者規制強化等については、法改正をせずして行うことができるものもあるのではないかということで、平成22年(2010年)、動物愛護法の見直しについて検討するための「動物愛護管理のあり方検討小委員会」の立ち上げ当初、省令・告示の改正によって前倒しで実施することも検討されていました。小委員会の第1回で配布されたスケジュールにも以下のように書かれています。

※「動物取扱業の適正化」に係る規制強化の前倒し
<平成23年3月~>
中央環境審議会動物愛護部会の小委員会における「中間とりまとめ」(「動物取扱業の適正化」に関すること)をパブリックコメントに付したうえで、法制局等にその内容の実施方法について協議。
協議結果を踏まえ、法改正を行わなくても省令・告示の改正で規制可能な案件については、中央環境審議会において検討のうえ実施。

動物愛護管理のあり方検討小委員会(第1回)資料7「制度の見直しに向けたスケジュール」より(平成22年8月10日配布)

そして、この中間とりまとめに該当する文書「動物取扱業の適正化について」が小委員会中盤で出てきましたが、実際に法改正前に政令等の改正で実施されることが決まったのは、犬猫の夜間展示禁止と動物取扱業の登録が必要な業種の追加だけでした。残りの内容は、最終的な「動物愛護管理のあり方検討報告書」に引き継がれます。

その後、平成24年(2012年)にいよいよ国会で法改正が成立しますが、1年後の施行までに行う政省令改正等の検討の中で、当初はこれら繁殖制限等の検討も議題に含まれていました。しかし、途中で大幅なスケジュール変更があり、先に基本指針等の検討を行うこととなり、繁殖制限や飼養施設基準等に関する基準の検討については、平成25年(2013年)5月以降、部会とは別の場を設けて開始するとされました。

この時点で改正法施行に間に合わないことが懸念されましたが、それどころか、この検討自体が開始されず、現在に至っています。改正法施行後も、たびたび環境省にこの検討はどうなっているのか尋ねましたが、動いていないことが確認できただけでした。今回は、確かにこれまでとは違うと思います。

■今やるべきである理由

今回の法改正の争点は犬猫販売における生後56日(8週齢)規制でした。法律に56日という具体的な記述が入ったものの、附則の経過措置により現在はまだ45日に読み替えられており、施行後3年を経過する日の翌日から別途法律で定める日までは、49日の読み替えをすることになっています。

これをできる限り早く56日で実現させることは今後も重要な課題ですが、一方で「8週齢まで劣悪な環境のブリーダーのところに置いておけと言ってよいのか、施設や飼養管理の改善を伴うべきではないのか」といった議論がなされてきたのも事実です。ただ単に、ろくに管理もできていない繁殖場に「もっと動物を置いておけ」と言うわけにはいかないのです。できれば49日の読み替えに切り替わるのと同時に規制強化を行えるよう、検討を行う必要があると思います。

また、今回の検討開始について若干懸念を感じるのは、繁殖業者の規制のほうにばかり重点が置かれるのではないかということです。もちろん繁殖場の改善をダイレクトに図ることは重要ですが、犬猫を買い求める人のチェックの目が繁殖場に届いていない現実を支えているのは、生体の店頭販売が幅を利かせている流通形態そのものではないでしょうか。

店頭での生体展示の規制も強化し、ブリーダーのところへ直接消費者が購入しに行く方向へ転換させる施策についても同時に検討する必要があると思います。オークションや店頭展示が介在している分、早く親から引き離されているとも言え、56日規制実現の布石としても検討が必要だと思います。

■業者の監視、指導に関する環境省の2回の通知

昨年11月と今年1月の2回、環境省は第一種動物取扱業者の監視、指導の徹底について、全国の関係自治体に通知を出しています。栃木県での犬の死体大量遺棄事件や、ブリーダーによると思われる各地での多頭遺棄(これ自体は以前から頻繁に起きていたことだと思いますが)等を受けての対応です。

全文は下記のページに掲載しましたが、立入による監視・指導の徹底を求める内容となっており、登録の取消や勧告・命令についても適切に対応するよう書かれています。

しかし、「ケージ等の設備の十分な広さ及び空間の確保」といったことが書かれていても、自治体にすれば、指導で改善させたり勧告に踏み切ったりするためには、どれだけあれば十分なのかの具体的な基準がないからできないという話になってしまいます。(これは、販売業者だけの問題ではなく、動物園等の展示業者の問題でも全く同じです)

具体的な数値設定は、低いレベルで横並びになってしまう危険性をはらむので難しい側面がありますが、このように通知に書くのであれば、具体的に「不可」とできる目安について示してほしいと自治体が考えるようになるのは当然のことではないかとも思います。現状、展示動物の飼養保管基準の「自然な姿勢で立ち上がり、横たわり、羽ばたき」は、行動スペースがほとんどないような状態でも「違反と言えない」と判断されている実態があり、ほとんど意味のない表現です。

今度こそ検討を開始し、具体的に手を打てる基準の策定につなげてほしいと思います。

(ちなみに、自治体の動物収容施設の基準も作る話が出ていましたが、実現していません)

▼そして、犬猫以外の動物への対応はどうなるのか
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