環境省が所管の事業での実験動物基準の遵守状況について初調査

日本の縦割り行政―「実験動物」と「動物実験」

動物愛護法や「実験動物」の飼養保管等基準は所管しているものの、「動物実験」に関する指針は未だ策定していない環境省。

……と言っても意味がわからないかもしれないですが、日本では「実験動物」と「動物実験」を分けるという縦割り行政が行われており、「実験動物」については環境省、「動物実験」については、動物実験を行う者を所管する省庁がそれぞれ所管するというおかしな分業体制ができています。

つまり、環境省の「実験動物」の飼養保管等基準は全ての省庁の所管する動物実験にかかる一方(但し、畜産など一部の実験は対象外)、「動物実験」に関する指針は、文科省は大学等のためだけにつくり、厚労省は所管の研究機関や製薬企業等のためだけにつくり、農水省は所管の研究機関のためだけにつくり、それ以外はどこも作っていないというバラバラな状況があります。

つまり、この縦割り行政のもとでは、環境省も、環境省所管の事業のために「動物実験」の指針をつくるべきなのですが、この体制ができてから約10年間、全くその動きはありませんでした。昨年、参議院で提出された質問主意書でも、指針がないことは確認されています。

動物実験を実施する事業を把握してこなかった環境省が初調査

そういった現状があり、環境省が所管するどの事業で動物実験が行われているか、これまで誰も把握していませんでした。

しかしどうも今年、やっと環境省は、自らが所管する事業でどこが動物実験を行っているか調査を行ったようで、下記のPDFが公表されています。

苦しいのは、環境省は「動物実験」の指針は持っていませんので、あくまで「実験動物」の基準について遵守状況を調べる形になっていることです。にもかかわらず、基準には書かれていない動物実験計画書のことなども聞いています。明らかに他省庁の指針の内容を意識したものと思わざるを得ませんが、環境省の事業を行うにあたって、これを実施すべき根拠は一体どこにあるのでしょうか。

またこの調査は、動物福祉への配慮が具体的にどの程度なされているかわかるようなものではありませんが、霊長類を使っている機関もあること、まだ実験動物管理者を置いていない機関があること、まだ自己点検を行っていない機関があること、輸送に関する規定が定められていない機関が多いことなどがわかります。

動物実験関係者が「ちゃんとやっている、ちゃんとやっている」と繰り返した2005年の法改正から10年以上。まだ実験動物管理者すら置いていない機関があるのですから、いい加減、法律によってある程度の枠組みは義務化するべきだと思います。

ちなみに、環境省は化審法を共管しているため、もしEUのように魚類まで実験動物保護の法律の対象に含めるのであれば、調査の対象事業者は格段に数が多くなるはずです。

結果は以下の通りです。

環境省:研究機関等における「実験動物の飼養保管等の基準」の遵守状況に関する調査結果について

概要

○調査対象機関
平成28年度に環境省が実施している業務で、動物実験を実施していると回答があった施設(5機関)
※重複を避けるため、大学等他の指針に基づいて実験を実施している施設は除く。

○調査方法
調査対象機関(5機関)に対して調査票を送付し、回答を依頼。

○調査結果を踏まえた対応
引き続き、調査を定期的に実施し、基準の遵守状況を把握する予定。

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