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実験動物の飼養保管等基準の解説が37年ぶりに改訂されたが…

昨日もブログに書きましたが、環境省が37年ぶりに実験動物の飼養保管等基準の解説の改訂を行いました。アドスリー出版からも本として出版されていますが4400円+税と高価なので、環境省のサイトから無料版をダウンロードすることをお勧めします。

古い版は昭和55年(1980年)に編纂された小冊子でしたが、長年新規の入手もできず、持っている人に見せてもらう以外は国会図書館等で見ることができるだけでした。特に安楽殺法などの内容が古いにもかかわらず、内容は国の見解として生きていると判断されてきたため、当会含め動物保護団体がずっと改訂を求めてきたものです。

それが実現し、前回の動物愛護法改正の後、動物愛護基本指針の中にこの解説書を改訂する旨が盛り込まれていましたが、これから次の動物愛護法改正だ!という時期になって、やっと完成しました。やると宣言したことをやっていないのは法改正を厳しい方向に推し進めてしまうかもしれないとの行政側の焦りが見て取れます。

しかし問題はそれだけではありません。

極秘裏に進められた発刊

この解説を作成するための「実験動物飼養保管等基準解説書研究会」が動き出したのは、やっと一昨年(平成28年)の2月。ずっと存在は秘密にされていて、検討会も非公開でした。この年の夏に日本実験動物医学会が要望書を提出していることなどで存在が表に出ましたが、座長も環境省も詳細を明かすことがなく、秋ごろからようやく口を割り始めました。

結果として、今、議事概要として内容をうかがい知ることができるのも、非常に簡素なものです。

案についても発刊されるまで内容は外に出ず、極秘裏に編纂されたと断言できます。

そして発刊された内容を見ると、どうして外部に口を出させたくなかったのかわかる身勝手な記述が目につきます。

一般原則の「その他」で国際原則を満たすという詭弁!!

最も驚き、問題だと感じたのは、21ページです。一般原則に新たに追加された「4.その他」をもって国際的な原則が言っている監督制度に相当すると書いているのです!! 「その他」ですよ(笑)。しかもたったこれだけの記述でです。

「管理者は、定期的に、本基準及び本基準に即した指針の遵守状況について点検を行い、その結果について適切な方法により公表すること。なお、当該点検結果については、可能な限り、外部の機関等による検証を行うよう努めること」

日本人がいかに意識が遅れているかということが見て取れます。

お前ら自分で勝手に自分で点検やれよー、
民間の外部検証でいいぞー、
それも「努めること」だからやらなくてもいいぞー
何も罰則もないぞー、
環境省もどこの省庁も自治体もどこもやっているかどうか指導も監督もしないぞー!

……で、諸外国が法制化しているような許認可や登録の仕組みと同じだとわが国は主張しているわけです。国際原則が言っているのは下記の枠内のようなことです。国内の実験動物関係者も、ここは日本は満たしていないと言っているのに、あまりにお粗末です。

というより、そういった良識派・福祉派の口封じをしたいのでしょうね。

ボクたちは国際原則は守ってるんだー!という詭弁を主張したく主張したくて仕方がないので、外部には公開せずに秘密裏に作ってしまったに違いないと想像します。環境省もこんな動きに流され、チェックできないとは失笑ものです。

医学生物学領域の動物実験に関する国際原則
(笠井憲雪氏翻訳版より引用)

X. ここに示す原則の施行は文化、経済、宗教および社会的要因に応じて、国ごとに変わるものの、この原理を守っているかを検証するための動物使用の監督制度を各国で導入しなければならない。このシステムには、研究機関や地域、国のそれぞれのレベル評価し認可(研究機関、科学者および/または研究事業の免許付与や登録等)ならびに監督を行なう仕組みを含むべきである。監督制度の枠組みは動物の福祉とケアに関する考察と同様、動物使用の倫理的審査を包含しなければならない。また、動物が感じる痛みや苦しみの可能性と、研究または教育活動による便益とのバランスを取りながら、動物使用の危害便益分析を促進するべきである。健全な計画管理、研究の監督、そして適切な獣医学的ケアのシステムの証拠を提供するために、記録を正確にそして継続的に取らなければならない。

結局よくわからない。基準がいうところの「委員会」って何?

解説書が出ればもう少しはっきりするのではないかと思っていたのが、一般原則「3.周知」にある「委員会」の役割についてです。

基準には、「実験動物の飼養及び保管並びに科学上の利用が、客観性及び必要に応じた透明性を確保しつつ動物の愛護及び管理の観点から適切な方法で行われるように管理者は本基準の遵守に関する指導を行う委員会の設置又はそれと同等の機能の確保、本基準に即した指針の策定等の措置を講じる等により、施設内における本基準の適正な周知に努めること。」とあるのですが、漠然としすぎていて具体的に委員会が何をすればいいのかわかりません。

文科省等の指針は、実験計画書の審査と結果の報告に関する役割しか動物実験委員会に求めていないため、ほかに委員会を作る必要があるのではないかとも考えていましたが、とりあえず解説書では動物実験委員会が環境省の基準の委員会の役割もすればOKということを言っただけで終わってしまいました。

本来、飼育施設や研究室を見ずに指導もできないはずであり、例えばアメリカの動物福祉法は法律本文で機関の委員会による毎年2回の施設査察を義務付けていますが、結局解説書でも委員会は何をすればよいのか、積極的なことは何も書かれませんでした。

これで現場が変わるんでしょうか?

アメリカの安楽死指針と違う内容を書いておきながら準じたと言う詭弁

日本の殺処分等の指針があまりに簡易で解説書も古く使えず、特にどこの団体も安楽死指針をまとめる力はないため、動物実験の世界ではアメリカ獣医師会の安楽死処置に関する指針(最新版は2013年版)を参考にすると言われることが多いです。

この解説書も、それに準じているというのですが……

しかし、最新版のアメリカ獣医師会の安楽死指針において、例えば齧歯類で安楽殺法として「許容される」とされているのは、バルビツール酸系麻酔薬の静脈投与だけです。

他の方法もいくつか次の「条件付きで許容される」というカテゴリに入れられていますが、あくまで条件がクリアできないのであれば不適切な方法となります。

でも……

環境省の今回の解説書は、あえてこの2つの違いを書いていないんです!! 全て並列。ほかの動物も。

ずるいですね。「許容される」とされているのは、バルビツール酸系麻酔薬の静脈投与だけだといことが読み取れない。

実際の現場で対応が無理だからという「忖度」を感じますが、アメリカ獣医師会の指針に準じたと言うのなら、同じように表記してほしいものです。

基準には順守義務がない!&どうやってすべての施設に守らせるのか手段がない

 
昨日もブログにアップしましたが、解説書が出てよいこともありました。ジエチルエーテルの使用は不適切とされたことなどです。

他にもまだまだ活用すれば、これを根拠に日本の動物実験を変えていくことができるかもしれないというところはあります。付録にすぎませんが、最小スペースのサイズが載ったことなどです。これもEUの数値には及びませんが、ウサギに古い小さいサイズを使い続けているなどする日本の現状を考えると使える部分かと思います。

しかし、これを根拠に改善を求めていくときに最大の問題は、実験動物の飼養保管等基準には遵守義務がかかっていないという事実です!!

もともと動愛法には動物実験施設に対し、何ら罰則も指導監督の仕組みも盛り込まれていませんが(例えば立入、勧告、命令、業の停止等)、この基準にも遵守義務はないんです。

さらにその解説書をつくったからといって、遵守義務が生じるわけでは実はない。

また、日本には施設の許認可制(EU)や登録制(アメリカ・韓国)はありませんから、そもそも行政がこの基準を守るよう周知や指導監督する対象もつかんでおらず、すべての実験施設がこれを知ることになるとは思えないです。また個別の問題事例をどこが指導するのかも全く何も決められていません。

国は、業界団体相手にこれを守ってくださいねーと言うだけです。

環境省はこの解説書を出したことで、しばらく実験動物について何もしなくてよいと考えているかもしれませんが、私たちは法改正により、これを実際に守らなければいけないこと、そしてそのための制度の構築も必要だということを求めていきます。

ほかにもいろいろあると思うのですが、あまり細かいところを取り上げていると本当に細かくなってしまうので、とりあえず大きなところを挙げました。

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