マレーグマの悲惨な死~円山動物園に対し動物愛護法に基づく勧告

TwitterおよびFacebookでは意見送付の呼びかけなどを投稿してきたところですが、ブログでのご報告ができていなくて申し訳ありませんでした。7月24日、札幌市円山動物園でメスのマレーグマ「ウッチー」がオスの「ウメキチ」から激しい攻撃を受け、その翌日死亡しているところを発見されるという悲惨な事件があり、当会も現場で撮影された方の動画投稿によってそれを知りました。

ご覧になった方も多いかとは思いますが、激しい攻撃は20分も続き、2匹が離れた後も攻撃を受けたウッチーは苦しさにあえいでいました。室内エリアに入るための段差も思うように登れない様子で、その苦しさはいかばかりかという映像です。(このとき右足を引きずっていますが、動物園によれば、これはこの日の攻撃によるものではなく前日までの負傷によるものとのことで大変驚きました!)

実は昨年円山動物園を訪問した際、このマレーグマの室内展示場があまりに小さく、金魚鉢のようなところに2匹のクマが入れられて激しくじゃれているのを見て(動物園によると「レスリング」)、「こんなところにクマ!?」と非常に驚いた記憶がありました。非常に時間がなかったことが悔やまれるのですが、それでも思わず足を止めて撮影をしたほどで、旧熱帯動物館の劣悪さに次いで印象に残る部分だったことは間違いありません。

まさか1年後にこのようなことが起こるとは驚きですが、もう1匹のメスとウメキチの繁殖の際の仲介役を期待しての同居訓練だったと園は説明しています。

◆経緯 市長の謝罪~動物管理センターの立入

PEACEとしては高齢の個体を交えた繁殖計画自体に疑問があり、当日2匹の引き離しが行われていないこと、必要な治療が行われた様子がないことなどについて市に質問を送付するとともに、市長に徹底した調査と会見での報告を求めるメールを送りました。

また、札幌市の動物管理センターに通報と立入調査の依頼をしましたが、このときにはまだ騒ぎが大きくなっておらず、当初は「既に通報があり電話で指導済み」との対応でした。しかし、実際に死亡した状況や死体を見ないで事実関係がわかるのか?という話をし、その場で「週内には一度立入して確認する」というお返事をいただいていました。

実際には、立入は翌週の8月4日に行われましたが、それまでの間にインターネットでこの事実が広まり、報道もされ、数多くの声が札幌市や動物園に届く事態になっていたかと思います。7月30日には、市長自らが会見の冒頭で謝罪を行い、調査を行うことを表明。まさか謝罪まであるとは思っていませんでしたが、これも多くの声が届いたからに他ならないと感じています。市長は、自ら動画も見たと言っていました。誠実な対応に感謝したいと思います。

また、このころ一度円山動物園が簡易な報告を行っていますが、その際に報道された死因の書き方が疑問だったこともあり、送付した質問の回答を待たずに電話での事実確認も行いました。

もともと骨折があったがそれには気が付いていないことなどが判明。またマレーグマの飼育施設は、室内展示場と屋外の放飼場、それにバックヤードが2室あり、もともとはメス2匹で1室、オス1匹で1室使っていたとのこと。ウッチーは高齢で、それほど遠くなく亡くなることも想定されていたのではないかと思いますが、ここに出産によって1匹ふやそうとしていたこと自体が、そもそもありえないことのように感じています。

会見後、改めて市長あてに、御礼ならびに以下の要望を書いたメールを送りました。

  • 必要であれば、動物愛護法に基づく勧告・命令等の行政措置を行う
  • 動物虐待罪に当たるかどうかも検討し、適切な処置をとる
  • ウッチーの問題だけではなく、円山動物園の飼育管理についてこれまでの苦情を精査し、改善を行う
  • 飼養管理の問題だけではなく気候の違いなどもあるので、ゾウの輸入は中止する

◆札幌市の動物管理センターが本日、円山動物園に勧告

札幌市の動物管理センターは、立入と同時に円山動物園に対し報告書の提出を求めており、その内容の公表を経て、本日、円山動物園に対する改善勧告が行われました。これは動物愛護法の定めに基づいた行政処分で、普段ペットショップ問題などでも指導を繰り返すだけでなかなか勧告には至りませんから、今回の事態の大きさがわかります。多くの人の意見が行ったことで動物愛護法の適正な運用が促されました。それだけ衝撃的な事件だったと思います。

勧告に関する詳細は市のサイトで見ることができます。

改善勧告書には、「本事案に係る円山動物園の対応は、法に基づく基準に適合していない部分があると考えられる」とあるだけではなく、「繁殖推進体制のみならず、組織としての動物の管理体制全般に問題があると考えられる」と述べられており、マレーグマの繁殖問題にとどまらない園全体の問題としてとらえていると思います。

また、いわゆる動物虐待罪についても言及されており、「本事案については、法第 44 条第2項の規定による罰則の適用の可能性があることなどから、(中略)北海道警察へ情報提供をしている」とありました。

基準が守られていなかった点についても個別に洗い出しが行われており、動物愛護法上の対応としてはかなり細かいものになっていると感じます。

ちなみに、処分に先立って円山動物園が提出していた報告書は以下の通りです。

◆動物園も動物愛護法の規制の対象です!

ブログでも一度書かせていただいたことがありますが、一部の動物園関係者によって、「動物愛護法はペットの法律だ」といった誤った見解がこれまで拡散されて続けてきています。

しかし、今回のことでもはっきりしたかと思いますが、札幌市動物管理センターの立入は動物愛護法が守られていたかどうかの観点から行われたものでした。動物虐待に当たるかどうかももちろん問題ですが、そもそも動物園は第一種動物取扱業の基準を満たした上で登録を受けなければ営業できない施設です。

動物愛護法は、確かにこれまで犬猫販売業のみが規制強化されてきており、展示業は優遇されていると言ってもいい状況ですが、それを曲解するのはいかがなものでしょうか。動物がこのような死に方をしなければ事態が動かなかったというのは残念ですが、今回、「外部の目」としての役割を期待されたのは動物管理センターでした。

センターも「単に事故等で動物が死んだだけであれば普段立入までは行っていないが、今回は動画で様子が確認できたことが動いた理由として大きい」とのことなので、今後展示業に対する動物愛護法のより適正な運用が求められるところではあるかと思いますが、動物園関係者には認識を改めてほしいと思っています。

また、そもそも自然界であれば、動物たちは繁殖相手を自分で自然に選びます。戦いたくない相手は避けることもできます。ウッチーは、逃げ場がないことも長年の動物園生活でわかっていたことでしょう。ウメキチも攻撃に至る理由があったことが推察されますが、人間は察することができませんでした。「種の保存」といった言葉の耳への心地よさと裏腹に、動物園が行っている行為が非常に人工的で自然に反するものだという認識もまた、今回の事件で広まったのではないでしょうか。

今後の改善にも注目したいと思いますが、これ以上不幸な動物を輸入・繁殖しないでほしいとも願います。


追記:これ以降の動向は、こちらのページに時系列でまとめています。

▼去年5月のじゃれあい
maruyamazoo-2

▼クマの施設としてはあまりに狭いので驚いた室内展示場
maruyamazoo-1

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