特定動物の無許可飼育について自治体が告発した事例~堀井動物園とはやはり事情が違う!

しばしば報道されているとおり、特定動物の無許可飼育は、警察の知るところとなれば刑事事件として扱われ、氏名等まで公表されることもあります。先日も、トカラハブを無許可で移動させようとした事例で(ほかの犯罪と併合でですが)逮捕報道がありました。氏名も公表されました。

しかし、こういった派手な(?)摘発事例とは別に、自治体が無許可飼育を認知し、刑事告発を行ったとして環境省の統計調査で報告されているケースもこれまでにいくつかあります。(報道はされていません)

堀井動物園の特定動物無許可飼育裁判では、弁護側が、まるでこの環境省の統計のみが特定動物の摘発事例であるかのように主張し、これらの起訴されていない事例に比べて堀井園長が起訴されるのは不当だと主張する根拠に使いました。

しかし、実際には環境省の統計のみが違反事例ではありません。警察が自治体より先に認知して立件するケースのほうが多く、これらは自治体からの報告を基に作成されている環境省の統計には反映されません。弁護士がこのことを知らないのだとしたら問題がありますが、裁判で勝ちたいために知らないふりをしているのかもしれません。

堀井動物園の事件の控訴審では、既に上記の資料は証拠として不採用となっているようですが、実際にはどういった事件が自治体によって刑事告発されているのか、当会でも情報公開請求によって調べました。

結果として、熊本市の2例は、警察に通報は行っていますが、刑事告発した記録はありませんでした。捜査されたのか詳しくわからない部分もありますが、送検や起訴には至っていないと思われます。いずれも第一種動物取扱業ではなく、ペットとしてのワニガメの飼養であり、本人らは規制を知らなかったと主張しています。

1件は飼育者の失踪、もう1件は飼育者の被災による老人ホーム入所がきっかけで無許可飼育が発覚。高齢などの事情や、再犯の可能性が低いことなどが考慮されたのであろうことは容易に想像がつきます。また、無許可飼育されていたワニガメの処分や譲渡の手続きを踏むために警察にも相談する必要があったと考えられ、どちらかというと、違反事実より動物をどうするかのほうが問題であった印象です。

福島県のニホンザルの例は、行政が刑事告発を行っていますが、不起訴となっており、理由も判明しています。飼養者はやはり高齢で入院中、他の場所では飼養保管許可を持っていた等の事情が考慮されています(特定動物の飼養保管許可は施設ごとに必要なものなので違反は違反ですが)。

この事例では、他の場所のほうは第一種動物取扱業(展示)の登録もしていましたが、動物園等でもなく檻のサルがいただけと思われますし、無許可飼育が発覚したほうの店舗もペットショップではないと思われます。許可を受けていたほうの施設でニホンザルを逸走させ人身事故を起こしたため、動物愛護法の基準遵守規定の違反が認定されたことはありましたが、無許可飼育自体は初めてであり、繰り返し違反を行っている堀井動物園とは悪質さにおいて違いがあります。

堀井動物園は、事業内容からも法律を熟知していることが社会的にも求められるのは当然のことで、違反も繰り返しています。それぞれに事情があると考えられる3事例と比較して自らの起訴を不当だと訴えるのでは反省の色なしと思わざるを得ません。

特定動物の無許可飼育(動物愛護法違反)は、警察が認知して立件される場合が多く、これらの事例については自治体は関与しないため、環境省の統計には計上されていない。

事例1・2016年 熊本市 ワニガメ等の無許可飼育事例

飼い主の男性57歳がいなくなり連絡とれず。内縁の妻から動物の処遇について相談。カミツキガメ、ワニガメが、それぞれ特定外来生物、特定動物の無許可飼育となっている。ほかのカメもいる。無許可飼育なので愛護センターが譲渡先斡旋をするにも問題があるが、譲渡先探しについてアドバイスをしている。

その後、内縁の妻はもう引っ越すが動物は飼えない。警察は、(所有者はいなくなっているが)内縁の妻の責任のもと動物愛護センターで処理できないのか。

内縁の妻が飼い主と連絡がとれ、帰宅する日が判明したので、その日を狙って訪問、警察も合流。カミツキガメは15年くらい前に、ワニガメは10年くらい前に、ペットショップで買った。規制前であり、規制ができたことは知らなかった。過去の職歴から、繁殖目的ではないので司法手続きにのせての刑罰は困難と思われる。(と書いてあります。熊本では立件には業目的かどうかが関係するという運用なのか?)

特定外来法を所管する環境省の九州地方環境事務所は、処分は本来飼い主が行うもの。どうしてもということであれば環境事務所で引き取って殺処分を行うが、前例ができると環境事務所で引き取ってもらえるという誤解が生じるため、飼い主からではなく警察からの引き取り依頼としてもらいたい。

愛護センターも引取りは犬猫のみなので、カメは不可であり、やむを得なければ特例でできなくないかもしれない。裁判所に申し立て、令状による差し押さえ(刑事訴訟法第218条第1項)も考えられるが時間がかかる。任意提出による領置(刑事訴訟法第221条)を行い、飼い主に所有権放棄書を書いてもらうにも署長決済が必要。

最終的に、飼い主から所有権放棄の旨聞き取りを行い、供述調書に記載。所有権が宙ぶらりんとなったカメの保管は警察署ではできないため、環境事務所と愛護センターにその処分を警察が口頭で依頼するという算段になった。同時に、今後の法令順守の誓約書もとった。ワニガメは最終的に愛護センターが安楽死処分。

送検や起訴不起訴等について記載なし。ほかのカメについては譲渡先を探すようにという指導で終わっている。

事例2・熊本市 ワニガメの無許可飼育事例

飼い主は25-30年前にワニガメをペットショップで購入。震災で自宅取り壊しをしなければならず、老人ホームに一時的に身を寄せている。息子が飼育継続は無理と判断し、知人の爬虫類ブリーダーに相談。ブリーダーは飼育することはやぶさかでないが、違法飼養なので手続き上不安になり、愛護センターに相談。

父親は規制ができたことを知らず、息子も離れて住んでいたので父親がワニガメを飼っていることは知らなかったと主張。父親も飼育放棄すると言っているので、所有権放棄書と始末書を書いてもらい、愛護センターでワニガメを特例で引き取り。警察も同行。今後は違法行為を行わないように厳重注意(口頭)。

相談者のブリーダーに許可が下りれば譲渡予定。そもそも警察の捜査等について記載なし。

事例3・2015年 福島県 ニホンザルの無許可飼育事例

2015年11月、警察署員が、店頭で飼育されているニホンザルを発見。無許可飼育ではないかと保健所に照会。(店名、関係者氏名等墨塗りになっているので詳細がわかりづらいが、写真などから店はペットショップではないと思われる)

2014年12月に七ケ岳登山口付近の道路端の草むらに1匹でいた子ザルを住民がかわいそうだと捕まえ、持ち込まれたものを飼育していた。飼育者は別のニホンザル飼育舎について飼養保管許可を持っていたことがあり、無許可飼育の認識はあった。無許可飼育のケージは特定動物の規制に不適合。

許可のあった別の飼育舎では、2015年9月にニホンザルが脱走し、住民2名にけがを負わせる事故を起こし、サルが死亡(とあるが死体の写真の状況から銃殺されたと思われる)したため、特定動物については飼養保管の廃止の届出をしている。このとき、動物愛護法上の規定を守らずに逸走させたこと、逸走後も必要な措置をとらなかったことについて指導され、今後違反した場合は「いかなる処分もお受けいたします」と始末書も書いている。

店頭で違法飼育されていたニホンザルについては、保健所員の聴取に対して、許可をとってまで飼育することは考えていない、譲渡先も見つけることはできない、自由にしてもらって構わないとのこと。

鳥獣保護法上の措置として、過去に放獣させた事例もあるが、町の農林課では放獣はできない、有害駆除するとの判断となった。ニホンザルと鑑定後に銃殺。

保健所では悪質と考え刑事告発を行ったが、不起訴となっている。

検察が県衛生推進課に説明した内容の記録によると、起訴猶予処分となった(すなわち犯行の事実があったことは認定されているが訴追しないこととなった)理由として、入手経緯が住民の持ち込みであり受動的な立場で飼養することとなったこと、サルが既に殺処分されており無許可飼育の状態が解消されていること、被疑者が高齢で健康状態が悪いこと(発覚時や保健所聞き取り時も入院中との記録あり)、他の場所ではあるが飼養許可を取得しており(ただし途中で廃止しているが)全く飼養許可を取得していなかったわけではないことなどが挙げられていた。(理由のうち1つが墨塗りになっていて不明)

ニホンザルを管理していた従業員についても送検されていたが、被疑者の指示により仕方なく飼養していたものと思われるため、不起訴となった。

▼飼育されていた状況

▼銃殺についての記録

飼い方も相当に悲惨なものでした。かわいそうという気持ちだけで人間本位の身勝手な行動に出ると、結局は違法行為や虐待飼育や悲劇をもたらすことになります。

3事例の中で一番行政や警察の対応が緩かったのは、被災・高齢という事情があり、なおかつ次の飼い主を見つけてきていたケースです。やはり飼い主やその家族など周辺の人たちがどれだけ動物のために動くのかが動物の運命を決め、そのことで配慮もされるのだと感じます。


※注
特定動物は、移動させる際に通過する自治体に届出を出せば、それらの自治体での飼養保管許可が免除されます。届出を出さないのなら許可を受けなければならず、無届で移動させた場合には、「第二十六条第一項の規定に違反して許可を受けないで特定動物を飼養し、又は保管した者」に該当し、第四十五条の罰則が適用されます

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