オオカミの飼養許可を受けている個人はいない(東京都のみ不明)

狼 おおかみ オキシトシン研究 麻布大学

環境省が毎年、都道府県ごとの特定動物(注:人に危害を加える恐れのある危険な動物として動物愛護法上、指定されている動物)の統計を出しています。「動物愛護管理行政事務提要」という冊子に載っています。

以前は、イヌ科の動物は、イヌ属、タテガミオオカミ属、ドール属、リカオン属に分けた統計が公表されていましたが、平成26年度版から、「いぬ科」としてひとまとまりになってしまいました。

下記の表は、平成28年度版が公表される前に調べたものなので、平成27年4月1日時点の数字がもとになっていますが、動物園等の展示事業者以外で、愛玩等の目的でオオカミの飼養許可を得ている個人がいるかどうか?を各自治体に聞き取り調査した結果です。

結果として、東京都が回答拒否であり、動物園で飼育されている数とも1、2匹のずれがあるように思われるので、「全て」と断言はできないものの、それ以外の自治体では、個人で愛玩等の目的で許可を受けている例は一切ありませんでした。

動物園以外では、北海道で「客寄せ・営業用」として許可を受けている1事業者があっただけです。

なぜこんなことを調べたかというと……

もし、あなたの周りに「オオカミを飼っている」とうそぶいている人がいたとしたら、それは違法飼育である可能性が非常に高い

と言いたいこともありますが、まあ恐らく、犬の血が(ごくわずかに)入っているなどと言って規制逃れをしているのが関の山なので、それが調べた主な理由というわけではありません。(最後にも述べますが、今後規制をどうするかの問題はあります!)

「サイエンス」の論文の「オオカミ」の正体は?

疑問に思っているのは、雑誌「サイエンス」に掲載された、飼い主との関係性について犬とオオカミで違いがあることについて書かれた、ある日本人研究者の論文についてです。その中で、オオカミの数は11匹と記述があるのですが、飼い主の数が書かれていません。

オオカミたちは、hand-raisingされた、つまり幼少期から人間に育てられることで人と親密な関係にあるオオカミとのことですから、動物園のような飼い方をされているオオカミは該当しません。

今回調べたように、個人でオオカミの飼養許可を得ている人はほぼ皆無なわけですから、一般常識から考えても11人も合法的にオオカミをそのような方法で飼っている飼い主が日本にいるはずがありません。(というより、そのような実感があったので、許可状況を実際に調べました)

飼い主のサンプルが少なすぎれば、どのように飼ってきたかにも偏りが生じるわけで、一般化できる話になるのかどうかという問題が生じるようにも思います。

そして、もう一つの問題は研究倫理の問題として、法律に違反して飼育されているオオカミを使うことは問題があるのではないか?という点が挙げられます。

論文の謝辞には2事業者が書かれており、一つは許可を受けている上記の北海道の事業者ですが、もう一つは、「ハイブリッドウルフ」を売っていると主張していた千葉県のブリーダーです。このブリーダーは、業の登録はしていましたが、特定動物の飼養許可は受けていません。このことは情報公開請求によっても確認済みです。

この事業者は、自らが販売した「オオカミ犬」を含むオオカミ犬4匹が飼育されている北海道の施設(といってもベアドッグの活動をしていると称する団体の代表の自宅)で、これらのオオカミ犬に襲われて既に亡くなっており、「ハイブリッドウルフドッグ」とは別に売っていた「ハイブリッドウルフ」(いずれも、いわゆるhigh%の狼犬だが違いがあると本人は宣伝していた)がオオカミであるのか、それとも本当にわずかでも犬の血が入っているのか、残された人たちは既に知ることができない状況だと保健所には説明があったとのことです。

ややこしいのは、もしオオカミであるなら合法な飼育でないという意味で論文でデータを使うのは問題があると思われることです。逆に、もしオオカミ犬であるとするならば、堂々と「wolves」と科学論文に書くことは不誠実に思います。

実は、論文を書かれたご本人が、学会の講演の際にオオカミと飼い主(男性)の映像を見せていたので質問をしたのですが、業の登録とは別に特定動物には飼養許可がいることをご存じない様子でした。(千葉の事業者(女性)は別の犬種の犬も扱っていましたが、このやりとりによって、この事業者については「オオカミ」を使ったことが確定できました)

また、飼い主の数については、数は明言できないものの、オオカミより少ないことを認めていました。そして、もしオオカミ犬であった場合には、犬とオオカミはDNA検査でも鑑別はつかないのだから、オオカミ犬を使ったものを論文にオオカミと書いても問題はないとの見解でした。

これで問題はないのかもしれませんが、釈然としないものが残ります。

もしそうなら、規制についても、犬の血の混じったオオカミは特定動物に含めるという判断が今後必要ではないでしょうか。

環境省の動物愛護の政策にも関わる専門家が、論文では「オオカミ」として使ったわけですから――。

※追記:麻布大学から回答が来ました。詳細はこちら

イヌ科の特定動物飼養許可状況(平成27年4月1日現在)

※許可匹数は環境省「動物愛護管理行政事務提要(平成27年度版)」より平成27年4月1日時点の数字。
※動物園ガイドが目的ではないのでどこの動物園の何オオカミかなどは載せません。

自治体名許可匹数内訳許可を受けたオオカミの 個人飼育の有無
都 道 府 県
北海道10すべてオオカミ。 客寄せ・営業用1か所(オオカミの森の4匹)、 動物園1か所(6匹)。なし
秋田県2動物園。個人はいない。なし
福島県3平成28年現在、0になっている。 かつて動物園で飼育。個人はいない。なし
栃木県2事業者(動物園)。個人ではない。なし
群馬県10動物園が1か所。なし
千葉県2法人(動物園)である。なし
東京都17答えられない。不明
富山県2動物園のオオカミ。なし
長野県2一般人が飼育するジャッカル。なし
静岡県9動物園も個人もあるが、オオカミは動物園と、企業で動物園を持っているところのみで、 個人はいない。なし
三重県1動物園のみ。なし
山口県2動物園のドールとセグロジャッカル。なし
徳島県1動物園。なし
鹿児島県3動物園のオオカミ。なし
政 令 市 等
札幌市4動物園。個人はいない。なし
横浜市8動物園のドールとリカオン。業務実績で毎年公開。なし
浜松市1動物園のオオカミ。個人はいない。なし
名古屋市11動物園のみ。なし
大阪市15動物園の15匹(オオカミ13、ドール1、コヨーテ1)。なし
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