6月28日、環境省が「第2回絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律あり方検討会」を開催しました。種の保存法の見直しへ向けて開催されているもので、第1回の資料等については、環境省の下記のページで既に公開されています。

第2回のこの日の議題は、国際的な希少種の流通等に関する現状と課題でした。

アジアアロワナ

関係団体からのヒアリングは、まずアジアアロワナの輸入を行っている神畑養魚株式会社から、観賞魚市場の動向や、アジアアロワナの商業輸入および販売に関する報告があり、登録票へのマイクロチップナンバー記載再開は業界への影響は少ないと予測する等の意見も述べられました。

アジアアロワナは国内繁殖も少しあるそうですが、マイクロチップ装着を義務化する場合には、装着方法などの講習会や装着作業の委託ができる出先機関の選定が必要になるだろうとのこと。死ぬこともあるとのことで、動物福祉の観点からも、リスク対策についてきちんと検討すべきかと感じました。

また、法律改正の周知の問題や、しっかりとした管理を行うためには、罰則の強化や輸入業者の登録制も必要ではないかといった意見も述べられました。

ちなみに、下記の環境省からのデータを見てもわかるように、個体の登録数はアジアアロワナがほとんどを占めるのが現状です。アジアアロワナの輸出ライセンスを持っている業者は、マレーシア58社、インドネシア47社、シンガポール32社、タイ2社とのこと。もちろん養殖個体が輸入されており、F2以降の個体が輸入されていた時期もあったが、現在は養殖技術の確立によってF1個体も輸入されているとのことでした。

○個体の登録等の状況(H5~H28/5)
登録されている分類数 136
登録数  262,455

上位3種
アジアアロワナ 254,611(返納数7,633)
クモノスガメ   1,042(返納数73)H17登録開始
ビルマホシガメ  770(返納数12) H25登録開始

登録の事務手続きについて

次に登録・認定機関として事務を担っているJWRC(自然環境研究センター)から、実務の現況や制度を見直した場合の課題等について話がありましたが、委員からは「トーンが消極的」と指摘がありました。結局、既に死んだ個体の登録票を密輸個体に付けて売る等、制度の裏をかく人たちがいるために、有効期限を設けて更新制とすることや、それに伴う個体識別について考えるにしても、いろいろな懸念事項が出てきてしまうのは事実かと思いますが、抜け穴をふさぐ必要はあります。

委員から、登録票の返納時にマイクロチップも一緒に回収しないのかといった質問もあり、実効性を上げるための議論をもっと深める必要があると感じました。

ちなみに、申請の問い合わせが多いのは象牙で、対応時間中の7~8割は象牙に関する問い合わせとのこと。

国際希少種に関する商取引全般

ヒアリングの最後は、トラフィック イーストアジア ジャパンからで、密猟被害が深刻な種としてゾウ、サイ、トラを挙げ、特に象牙については、個人所有も含めた全形象牙とカットピースの登録により国内在庫を把握し取引動向を監視することを提案。サイについては日本の需要は決して大きくないが、ネットオークションでの出品がふえており、未登録品の多さが指摘されていました。

また、日本の影響が大きい種として、やはり爬虫類・両生類が挙げられていました。現在、日本は爬虫類の輸入では世界第5位、両生類では第2位とのことです。野生由来として売られているものの数の多さは実感するところです。

また、問題のある実例として、以前トラフィックの報告書をご紹介したこともあるボルネオミミナシオオトカゲについて挙げられました。生息国で輸出が禁止されており、合法に輸出されたことは一度もないこのトカゲが日本でも売られるようになってきています。こういった事例に対応するために、CITES付属書掲載がなくても国際希少種として提案できる国民提案制度の創設について提案がなされました。日本国内で何とかできる制度が確かに必要だと思います。

トラフィックからは提言書も配布されました。

これらのヒアリングが終わった後は、委員間の意見交換がありましたが、テーマは主に(1)登録票のあり方(マイクロチップについて、有効期限を設定するかどうか等)、(2)インターネット販売の問題(事業者の登録制などを設けるかどうか等)、(3)交雑種の扱いについてでした。

象牙

最後に、環境省から「『全形を保持している象牙』及びその加工品の解釈について(案)」について説明があり、パブリックコメントにかかるとのこと。既に現在意見募集中ですが、これは「全形を保持している象牙」とは何ぞや?というところをわかりやすく文字に書き下しただけで、何か規制の中身が変わるものではありません。

ばかばかしい話ですが、現在の制度は全形を保持している象牙(彫刻など加工されたものも含む)しか登録制度の対象となっておらず、半分に切ればもうそこから外れてしまいます。カットピースや端材、そこから作られた製品等については事業者の届出制度はありますが、CITES付属書Ⅰの動物種※であるという原則に立ち返ったより厳しい規制が望まれます。

また、登録対象の象牙についても、規制導入前から所持していたことにすれば登録して売買できてしまう実態について、国際的な環境保護団体EIA(Environmental Investigation Agency)が調査結果を公表したと本年報道されていますが、そこでは象牙取引の全面禁止をするべきだと結論づけています。日本語版PDFは下記にアップされています。

※一部の国の個体群は付属書Ⅱに戻されたが、それ以降合法的な取引は2回のみ。

次回は動物園優遇策について議論!?

次回は、動植物園等の公的機能推進方策となっており、過去3カ年、動植物園等公的機能推進方策のあり方検討会で検討されてきた内容について検討がなされるものと思われます。本年度の議論についてご報告が遅れていますが、なるべく早くブログに掲載したいと考えています。

譲渡し等の許可等の状況

○譲渡し等の許可件数(国内種含む)(H18~H27年度)
全体 1789件

上位3種
レッサーパンダ 179件
フンボルトペンギン 118件
ワオキツネザル 78件

※ほとんどが動物園間での譲渡し

○譲渡し等の届出件数(国内種含む)(H18~H27年度)
全体 1043件

上位
フンボルトペンギン 35件
チンパンジー 26件
ジャイアントパンダ 24件

※剥製が主

パブリックコメント

「『全形を保持している象牙』及びその加工品の解釈(案)」に対する意見募集ですが、象牙取引の規制強化について意見を送るチャンスです。「意見提出用紙」の項目に従って提出する必要があります。

締切:平成28年7月29日(金)(必着)

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