イワシクジラの流通停止を求めるNGO共同声明に賛同しました

絶滅のおそれのある野生生物を過剰に消費しないよう、国際取引にルールを設けているのがワシントン条約(CITES)です。付属書に掲載されている動植物種の輸出入には規制がかかっており、特に付属書Iは商業取引禁止です。(ただし、学術研究や、商業用に繁殖されたものなど一部取引できる場合があります)

では、日本から船で出ていって、公海上で掲載種を捕獲して日本に持ち帰ることは取引には当たらないのでしょうか? 実はこれも「海からの持ち込み」といって、国際取引として規制がかかっています。

でも付属書Iに載っているクジラ類も日本は捕獲していますよね。

実は日本は「留保」というのをしていて、この留保された種については、締約国でない国として取り扱われることになります。つまり規制がかからないということです。

日本が留保している種のうち、付属書Iのものは以下の通りです。

マッコウクジラ、ツチクジラ、ミンククジラ(学術名:Balaenoptera acutorostrata及びBalaenoptera bonaerensis)、イワシクジラ(北太平洋の個体群並びに東経0度から東経70度及び赤道から南極大陸に囲まれる範囲の個体群を除く)、ニタリクジラ(学術名:Balaenoptera edeni及びBalaenoptera omurai)、ナガスクジラ及びカワゴンドウ(学術名:Orcaella brevirostris及びOrcaella heinsohni)

違反と指摘されている北太平洋のイワシクジラ

このうち、今国際的に問題になっているのはイワシクジラ。北太平洋の個体群は留保されていなくて規制がかかっているはずなのに、日本国内で肉として売られている。日本政府は調査捕鯨=学術目的と言っているけれど、実態としては商業利用でしょう?

このことが、去年(2017年)のワシントン条約第69回常設委員会会合で議題になりました。報道にもあったとおり、実態を調べるため日本へ調査団を派遣することなどを含む勧告案が了承され、北太平洋のイワシクジラの日本への持ち込みがワシントン条約違反かどうかということは、今年の常設委員会会合に結論が持ち越されました。

こうしたことを背景に、4月11日、イワシクジラの流通を停止することを求めるNGOの共同声明が15団体の署名で出されました。PEACEも賛同いたしました。

詳しくは声明の本文をお読みください。

参考:


2018年4月11日

内閣総理大臣 安倍晋三 殿
外務大臣   河野太郎 殿
農水大臣   斎藤健  殿
環境大臣   中川雅治 殿

NGO共同声明
ワシントン条約を遵守し、イワシクジラの流通を停止することを求めます

<背景>
2017年10月のワシントン条約常設委員会において、日本政府は委員会からイワシクジラの「海からの持ち込み」が同条約に違反するのではないかという指摘を受けました。

常設委員会では、ほとんどの国から「日本のイワシクジラの国内への持ち込みはワシントン条約違反である」「直ちにイワシクジラの国内持ち込みを停止すべき」「取引停止勧告などの措置が必要」という厳しい批判が相次ぎ、「これはワシントン条約違反には当たらない」として日本の立場を支持する国は一か国もありませんでした。

その結論は2018年10月に開催される常設委員会に持ち越されました。その間、違反かどうかを検証するため、日本政府が答えられなかった質問への追加質問を事務局が行い、その結果を受けたワシントン条約事務局による現地調査団の派遣が行われる予定になっています。

イワシクジラは、現在ワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されており、商業取引は禁止されている種です。日本は、このイワシクジラを国際捕鯨取締条約第8条のもとに北西太平洋における調査捕鯨により2002年より捕獲を始め、その肉を同8条2項「捕獲したクジラは可能な限り加工される」という文言を根拠として販売を続けています。

2014年の国際司法裁判所の判決後に新しく計画されたNEWREP-NP(北西太平洋鯨類捕獲調査新計画)のもとでは、134頭の捕獲が政府により許可を受け、2017年は全頭の捕獲を行いました。イワシクジラは、これまで主に捕獲してきたミンククジラに比べ、ほぼ2倍の大きさがあり、取得できる肉はミンククジラ1頭と比較して4〜6倍の量があるので日本の鯨肉市場流通のおよそ半分以上をイワシクジラが占めることになりました。

ワシントン条約では、附属書に記載されている種が、国内でどのように扱われるかを審査します。

イワシクジラの場合は、附属書Ⅰの掲載種であるため、商業的な流通は禁止されています。ワシントン条約では「非商業的側面が明らかに支配的である(clearly predominate)とは言えない全ての利用は主として商業的性質を有すると見なされるべきであり、附属書I掲載種の輸入は許可されるべきでない」との解釈決議を1985年に行っており、この決議に対しては日本も賛成しています。

もし、イワシクジラの器官、組織や遺伝子が全て実験などの調査・研究用途である場合は、ワシントン条約には抵触しません。

しかし、捕獲し、船内でその肉を小分けしてパック詰めにしてから陸揚げし、市場に流通させる現在の方法は商業的な目的に該当すると解釈するほかありません。特に、2012年、2013年の船の改修工事において、従来の大きな塊肉から、販売しやすい小分けパックに加工できるように設備を増強したところに、商業性が強く認められます。

もし、イワシクジラの「海からの持ち込み」がワシントン条約違反であると決議されれば、日本はワシントン条約を遵守する限りにおいて、イワシクジラを捕獲しても、販売用に肉を陸揚げできなくなります。また、「商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」では、調査捕鯨は「我が国が締結した条約その他の国際約束及び確立された国際法規」に基づかねばならないと定めていることから(第3条)、イワシクジラの国内持ち込みは当該国内法にも抵触することとなります。

加えて常設委員会は、条約履行確保のための措置として、他の国が日本とワシントン条約附属書掲載種の国際取引をしないよう勧告を出すことができます。附属書掲載種取引停止勧告が出された場合、イワシクジラを含む、商業取引が禁止されている附属書I掲載種だけにとどまらず、附属書掲載種の全ての取引に及ぶ可能性もあります(現在附属書Ⅰには約1,000種、附属書Ⅱには約34,600種が掲載されており、例えば野生のラン科の全種はいずれかの附属書に掲載されています)。国際条約を遵守するために、日本は条約の確実な履行に向けて協調する方法を検討する必要があります。

よって私たちは以下のことを日本政府に要望します。

イワシクジラの「海からの持ち込み」がワシントン条約違反の嫌疑で調査されることを真摯に受け止め、
1)ワシントン条約調査団の調査に全面的に協力すること。
2)常設委員会で最終決定が行われるまでは、その「海からの持ち込み」を必然的に伴う調査捕鯨を中断すること。
3)常設委員会で最終決定が行われるまでは、イワシクジラの 「海からの持ち込み」 の将来見込みにもとづいた継続的な鯨肉の供給(学校給食用や将来の販売促進用の供給を含む)を中断すること。

<賛同団体>
一般社団法人 JELF(日本環境法律家連盟)
イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク
化学物質問題市民研究会
公益財団法人日本自然保護協会
公益財団法人日本野鳥の会
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
国連生物多様性の10年市民ネットワーク
ジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)
生命の輪
認定NPO法人アニマルライツセンター
認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金
認定NPO法人野生生物保全論研究会
バイオダイバーシティ・インフォーメーション・ボックス
PEACE 命の搾取ではなく尊厳を
Voice for Zoo Animals Japan


2018.08.27追記:
その後の動向として、早稲田大学地域・地域間研究機構の真田康弘准教授のブログ記事をリンクいたします。


2018.10.5追記:
その後の動向として、IKA-netさんのブログをリンクいたします。

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