サーカスでの野生動物利用の廃絶を求める声明を出した欧州獣医師連盟(FVE)

欧州獣医師連盟(FVE)は、ヨーロッパ諸国の40の獣医団体からなる組織体です。サーカスでの動物利用の禁止を報じる海外のニュースの中で触れられていることがあるのですが、このFVEは、2015年6月、サーカスにおける野生動物利用に反対する立場を表明しています。

動物福祉を担うことを自負する専門家が、市民と同じように動物を守る方向性で意見表明していることに、正直、驚きを禁じ得ません。

日本の獣医師会では考えられない対応ではないでしょうか。

法的禁止が難しいまでも、せめて日本でも、動物福祉が担保されないことに対し専門家が非難の声をあげる行動をとれば、企業や自治体なども考えを改めるのではないかと思いますが、獣医師会が移動動物園を率先してやっている状況ですから、望むべくもありません。

日本でも、動物搾取業界に忖度しない態度で臨む専門家が育たなければならないということを改めて強く感じます。FVEの声明を翻訳にてご紹介いたします。

参考:


欧州獣医師連盟
2015年6月6日採択

移動サーカスにおける動物の利用に対するFVEの立場

すべての娯楽や移動、その他における、あらゆる動物種(鳥類、爬虫類、家畜化された種を含む)の利用に対し、科学的かつ動物行動学的な考慮がなされるべきである。

移動サーカスにおける野生の哺乳類、特にゾウとネコ科の大型動物(ライオンやトラ)の利用は、従前からあるが時代遅れの野生動物観を反映している。こうした動物も、野生に生きる同種の動物たちと同じ遺伝的性質を持ち、生来の本能的な行動欲求や要求を持つ。家畜化されていない動物である野生哺乳類の欲求は、移動サーカスでは満たされない。特に、飼育環境と、正常な行動の発現に関しては。

移動サーカスでの動物の利用によってもたらされる教育上、保全上、研究上、もしくは経済上の利益で、野生哺乳類の利用を正当化しえるものは無きに等しい。福祉的考慮に加え、サーカスでの野生動物の利用は、動物の健康や公衆衛生、安全性について深刻なリスクを示すといえる。こうした野生哺乳類は、人々や飼育員に身体的損傷を負わせたり、人獣共通感染症の伝染を生じさせたりする。世論調査では、圧倒的多数の人々が、サーカスでの野生動物の演技の禁止を支持している。

多くのヨーロッパ諸国、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、ギリシャ、スロベニア、ポーランド、オランダ、マルタ共和国では、すでに、すべての(野生)動物のサーカスでの利用を禁じている。その他の国々、例えば英国では、現在、禁止を検討している。また、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、ポルトガル、ノルウェイ、スロヴァキア、スエーデンでは、移動サーカスで許可する動物種の数を厳しく制限している。

FVEは、「動物の健康や福祉と、公衆衛生をヨーロッパ全土で促進する」ことを目標にしており、以下の通り勧告する。すなわち、野生哺乳類の肉体的、精神的、社会的な必要条件が満たされないため、全ての欧州および各国の所轄官庁は、ヨーロッパ全域での移動サーカスの野生哺乳類の利用を禁ずること。適切なサンセット条項〔による廃止〕、他の飼育環境に移す機会、そして場合によっては最終的に安楽死に頼ることも、サーカスのオーナーの解決策として必要である。


訳注

サンセット条項:
法律や計画、取り決め、規制といったルールにおいて、その適用期間を定めた条項。この条項での「サンセット」(日没)とは「終わりの日」を示す。あらかじめルールの失効までの期限を区切り、一定期間で内容や是非を見直すことで、その合理性を確保することが狙い。この条項があることで、期限までに延長の必要性があると判断され手続きが行われない限りは、そのルールは定められた期日で自動的に失効する。(『知恵蔵』より)

原文

翻訳協力:tuar ceatha
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