動物由来感染症:5歳未満の子どもに触らせてはいけない動物は?

日本では小さいお子さんに動物を1日だけでも、ただ与えていじらせれば情操教育になるという根拠不明の固定観念が広まっていますが(なんらか根拠らしきものがあるのは、家庭での飼育など長期的関与がある場合、もしくは教育的関与がある場合くらいではないでしょうか)、海外では、感染症の観点から、いくつかの警告が発せられています。

例えば、全米州公衆衛生獣医師協会(NASPHV)のガイドラインでは、5歳未満の子どもに爬虫類(カメ、ヘビ、トカゲなど)を触れ合わせてはいけないとあります。また、両生類、ヒヨコを含む生きた家禽、フェレットも同様に、5歳未満は不可です。子牛・ヤギ・ヒツジなど特定の家畜も細心の注意が払われていない限り適していないとされています。

これらは、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインでも同様でした。

またミネソタ州が出しているふれあい動物園のチェックリストでも、年齢関係なく、来場者に直接の身体的接触を持たせてはいけない動物として、ヒヨコ、アヒルの子、爬虫類、子牛、危険なエキゾチックアニマル(サル、オオカミの子どもなど)を挙げています。

アメリカではカメなどの爬虫類や、その餌にするネズミの死体、ヒヨコ、アヒルの子などからのサルモネラ感染が多発したことがあったためかとは思いますが、日本でも例えば横浜市感染症情報センターは「5歳未満のこどもを家きんに近づけないようにしましょう」書いています。

こう聞いて、頭の中にある動物のイメージ(たいていの場合はファンタジーかと思われる)だけで「何を言っているんだ、大丈夫だろう」などと考えるのは危険です。

商業利用される動物たちは自由に生きているわけではなく、牧場のイラストに描かれるような牧歌的な飼い方をされているわけではありません。多頭・過密になればなるほど不衛生から脱することはできず、ストレスや病気に脅かされるのです。動物がどういうところから来ているかも考えましょう。

追記

アメリカでは、サルモネラ感染が続いたため、1975年以降、4 インチ(約10cm)以下のサイズのカメの販売が禁止されています。子どもが口に入れようとしないサイズのカメしか売ってはいけないという意味です。この規制により、アメリカでは毎年およそ10万例のサルモネラ発症が予防されたと推定されています。

また、イギリスでは、2010年から2013年の3年間にサウス・ウェスト・イングランドで確認された5歳未満の子どものサルモネラ感染症発症175例のうち、27%が爬虫類のペットを所有する家庭で発症したものだったとする研究論文が公表されています。

追記部分の参考文献

長野則之ほか「ミシシッピーアカミミガメ(ミドリガメ)との関連が強く疑われた小児重症サルモネラ感染症の2症例」 (ISAR Vol.26 p 342-343)
Murphy
, D
, Oshin, F. “Reptile-associated salmonellosis in children aged under 5 years in South West England” Archives of Disease in Childhood 2015; 100: 364365.

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