<EU>薬物動態についても動物実験代替へ 新戦略を公表

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<EU>薬物動態についても動物実験代替へ 

共同研究センター(JRC)が新しい方法論に関する報告書を公表

2015.8.2up

欧州委員会直属の研究機関である「共同研究センター」(ジョイントリサーチセンター:JRC)の中に、動物実験代替法の評価研究を行う「EURL-ECVAM」(欧州動物実験代替法評価センター)を置くことが、EUの「実験動物の保護に関する指令」によって定められています。

その「共同研究センター」は2015年7月、長いあいだ動物実験以外の方法が難しいとされてきた薬物動態についても動物を用いない手法に転換していくため、新しい方法論とスケジュールをまとめた文書を公表しました。

以下は「共同研究センター」がそのことを伝えているニュースの翻訳です。専門的な内容なので、一部わかりやすく訳しました。(翻訳:M.N)

※文中のリンク先は英語です。報告書本文はこちらです(英文):


欧州委員会共同研究センター(JRC)ニュース

2015年7月14日

人体における化学物質のふるまいを知る新しい方法論

化学物質は、どのように、人の体に入り、動き、ふるまうのでしょうか? それを知ることが安全へのカギとなります。従来、動物実験でデータを得ていましたが、EURL-ECVAM(欧州動物実験代替法評価センター)は、新しい方法論を発表しました。動物を用いないテスト方法と、コンピュータによる人体モデルを組合せる方法です。

この方法論によれば、動物実験が減るだけでなく、化学物質からの防御を向上させることができます。このために、ADME(頭文字の組み合わせで、化学物質のふるまいを表す)と呼ばれる4つの過程において、知識を統合していく必要があります。

A(Absorption:吸収): 化学物質は、どのように侵入するのか?(空気、水、食べ物、そして皮膚吸収)
D(Distribution:分布): 血流にのって、どのように、体中に広がるのか?
M(Metabolism:代謝): 代謝によって、どのように変化するのか?
E(Excretion:排泄): どのように、排泄されるのか?

まず、5年間、動物を使わずにADMEを調べる方法を向上させ、標準化します。次に、コンピュータ上で人体のモデルを作るのです。このモデルは、無料で使えるサイトに置きます。このサイトにアクセスすれば、モデルを操作することができます。そして、集められた実験データを活用することができます。実験データには、コンピュータ計算結果もあれば、動物を用いない実験結果、動物を用いた実験結果があります。研究者が、このサイトに集まるようになれば、さらに、データが充実していきます。この流れで進めれば、最後には、動物を用いない実験結果とコンピュータ上の人体モデルを用いて、化学物質の安全性に対して重要な判断を行えるようになります。そして、この判断は、いままでの判断より確かなものとなるので、行政も採用せざるを得なくなるでしょう。

この方法論は、最近出された欧州委員会の政策文書を全面的に支援するものとなっています。
そして、この政策文書は、(実験動物の保護に関する)EU指令(2010/63)に応えたものです。この指令では、動物実験は段階的に廃止されることになっています。

しかしながら、法律としては進んでいません。欧州には、化粧品、殺虫剤、農薬の安全性に関する法律やREACHなどがありますが、これらの法律では、動物実験で得たデータをもとに、安全性評価に対処しようとしています。薬物が人体で、どのようにふるまうかを調べるテストには積極的ではないのです。

最近の科学的、技術的成果によって、3R(動物実験の代替・削減・改善)を推進するチャンスが増大しています。体の中で、薬物がどのようにふるまうかは、コンピュータで予測できるようになってきているのです。

jrc-ecvam-toxicokinetics-strategy_j

原文:
https://ec.europa.eu/jrc/en/news/new-strategy-track-how-chemicals-behave-human-body

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