韓国「動物園法」動向 法の目的は動物福祉

韓国では昨年(2013年)、チャン・ハナという国会議員が「動物園法」を発議しており、先日、その法案通過と公聴会開催を求める要請行動があったとのことです。

動物園が法の死角となっているという訴えは、一見したところ日本と似ているのですが、この法案は、第一条に「動物園を健全に管理し、飼育動物の福祉を増進することを目的とする」とある通り、完全に動物のための法案です。動物園を免許制とし、観覧に供するための動物の調教を禁じる条項もあります。このため、動物園関係者からは反対の声が上がっていると聞いています。

日本では動物園関係者のほうが動物園法を求めるというおかしな事態になっており、その求めるところは「動物の保護」ではなく「動物園の保護」、ひいては予算獲得だと思いますが、韓国では動物園法を求めているのは動物保護団体であり、背景には動物園で虐待される動物たちの問題があります。

日本では既に動物愛護法の中に動物園も対象とした登録制があり、全く詳細ではないものの業者の遵守基準もあるので、今後これを強化していく必要があるとは考えますが、業界の求めるままに動物園を動物愛護法と切り離したり、動物園を正当化するような法律は作るべきではないと思います。そんなことをすれば、「動物福祉と切り離したい」という関係者の思惑に乗ってしまうことになりかねません。

韓国の動きについては、当日公表された記者会見文の日本語訳をいただくことができましたので、ご紹介します。出典は、動物園専門の団体、アクション・フォー・アニマルズ(AFA:動物のための行動)です。

記者会見文

チャン・ハナ議員が発議した「動物園法」通過要求
環境労働委員会が動物園法制定議論のための公聴会開催するよう要請

(社)動物保護市民団体KARA、動物愛実践協会、動物のための行動、動物自由連帯とAnimal Asia Foundation(アニマルアジア)、RSPCA、Humane Society International(ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル)をはじめとする74の国際団体は、チャン・ハナ議員が発議した「動物園法」の通過を促し、このために環境労働委員会が動物園法制定議論のための公聴会を開催することを要請する。

国内には韓国動物園水族館協会に登録された動物園、水族館だけで22カ所に達する。協会に登録されない中・小規模動物園と体験展示施設を含めば、その数ははるかに上回る。それにもかかわらず、国内現行法には適正な飼育環境や管理など動物福祉に関する規定を明示している法律がただ一つもなく、動物園は「都市公園および緑地などに関する法律」、「自然公園法」および「博物館および美術館振興法」上、それぞれ教養施設、公園施設、博物館の一種類でだけ分類されているだけだ。

動物園の運営と管理に対する明示的規定がないため、動物園は自主的に用意した方針に従っており、一部動物園動物たちは固有の生態的習性を表現できる最小限の環境と管理や治療も受けられないまま放置されている。 チュジュ動物園の「セイウチ虐待事件」をはじめとする動物園内の苛酷な行為への疑惑が絶えず提起されていて、猛獣を年中狭い室内展示場で展示したり、社会的動物である霊長類を狭いケージに分離飼育するなど、最小限の処遇さえ受けられずにいる事例が引き続き問題と指摘されている。

英国、オーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、チェコなど、海外多数国家で動物園の運営と管理に対する事項を法と規定していて、該当規定は単純に動物の生存を保障する次元を越えて展示動物たちの身体的、精神的福祉を十分に考慮するように勧告している。

これに対し(社)動物保護市民団体KARA、動物愛実践協会、動物のための行動、動物自由連帯は、動物園の動物たちに必要最小限の福祉を保障しているチャン・ハナ議員発議「動物園法」の早急な通過を促し、そのために環境労働委員会が公聴会開催等を通して「動物園法」を重点的に議論することを要請する。

2014年2月12日

動物保護市民団体KARA、動物愛実践協会(CARE)、動物のための行動(AFA)、動物自由連帯(AFK)

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