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テレビ愛知「激論!コロシアム」アンケートへの回答

テレビ愛知「激論!コロシアム」2015年6月13日放送「イルカが消えるだけじゃない!?日本を追い込む“やっかいなニュース”の真相!」のためのアンケートに対して、日本の動物保護関係NGO 168団体の見解として送付したものです。
長文ですが、様々な誤解を解くために参考になると考えますので、公開いたします。

(質問の丸数字は、文字化け対策として括弧書きに変更しました)


アンケートにお答えする前に、まず今回の事件について、マスコミの取り上げ方、視点の間違いを指摘させていただきます。

1)今回の事件は、「水族館のイルカ」の調達方法、更に言えば、「野生動物を水族館・動物園で展示することの是非」についての問題で、「捕鯨問題」として取り上げるべきものではありません。

2)今回の事件は、「シーシェパード」等による反捕鯨運動の、いわゆる「外圧」によって引き起こされたものではありません。2005年、WAZAが出した「イルカ追い込み漁からのイルカ購入禁止」の通達を実行に移すよう粘り強く働きかけてきた日本の動物保護関係NGO活動の結果です。また、スイスに在住するスイス市民及びスイスの環境保護団体が日本のNGOに全面的に協力した結果です。(WAZAの本部はスイスにあります。)

3)今回の事件は、「イルカ追い込み漁」のやり方のどこがどう問題なのか、WAZA・JAZAをはじめ、関係者が誰も具体的に指摘できないことが、最も大きな問題です。これは現場を一切公開していない太地町の責任です。

 
アンケートに対する回答:

(1) 太地町の追い込み漁は、イルカが岩壁にぶつからないよう防御壁を設けたり、出血量を抑え苦しまないよう短時間でと殺できるようにしたりと改善努力を重ねていますが、いまだに残酷なのでしょうか?JAZAからの質問に対しWAZAも明らかな回答をしていませんが、いまでも残酷と指摘されているのはどの点なのでしょうか?

ご質問の内容は、イルカの「と殺」方法への対策を含んでいますが、今回、WAZAが問題にしているのは、水族館のためのイルカの捕獲、つまり、太地の追い込み漁からの生体捕獲で、イルカの殺し方についてではありません。追い込み漁の生体捕獲がイルカに与えるストレス・問題点は次の3点です。

1)追い込み漁はまず、金属管を叩いてイルカを追い立てるのですが、その音は水中では極めて大きな音となり、イルカの神経に多大なストレスを与えること。
(イルカを音によって脅し、パニック状態にして入り江又は漁港に追い込むのが、「追い込み漁」です。一方、イルカは、音に頼って生きている動物で、音はイルカにとって必要不可欠なものです。イルカの聴力の鋭敏さは科学的に証明されており、長時間に及ぶ音によるストレスはイルカに生理的なストレスとダメージを与えることが研究者によって発表されています。また、追い込み漁の手法であるイルカの追跡、囲い込み、捕獲が、直接の死亡だけでなく、急性及び慢性の生理学的、行動学的、心理学的影響をイルカに及ぼすという科学文献が多く存在します。)

2)追い込んだ後、必要なイルカを選別するのですが、その時点でイルカ同士がパニック状態になり、体がぶつかり合い傷つくこと。この時点で溺死したり、ショック死したりするイルカもいます。

3)必要数以外のイルカは海へ戻すと言いますが、それまでに加えられたストレスの影響は大きく、海に放されても正常な状態に戻れないイルカも多いと言われています。また、群れの一部が生け捕りされるために、群れの構造が壊されます。群れの構造の変化は、イルカ同士の社会的な関係を変え、繁殖にもマイナスの影響を与えます。「追い込み」はイルカの社会性を全く無視した捕獲であり、何よりも、「イルカの群れ」が「家族」であることを無視しています。この捕獲方法は、WAZAが禁じている「捕獲する際の残酷で慎重に選択しない無差別な方法」にあたります。WAZAは残酷な捕獲方法だけではなく、無差別な捕獲方法も禁じていますが、このことが報道されていません。

こうした野生動物の捕獲は、その捕獲された動物はもとより、捕獲を免れて海に戻された野生の群れ全体及びその動物が生息する生態系にも大きく影響します。追い込み漁は、生態系を破壊する行為だと言えます。

いずれにしても、最大の問題は、「イルカ追い込み漁」の現場を今や誰もチェックすることができないことです。昨年8月のWAZA・JAZA・日本のNGOの三者会合で明らかになったことですが、WAZA関係者もJAZA関係者も、現在行われている追い込み漁を視察していません。今回のWAZAの通達は誰もその現場をチェックしていない中で出されたもので、JAZA関係者が「どこがどう問題なのかわからない」と困惑するのは当然のことです。もちろん、自ら現場の視察を行わずに、「追い込み漁は残酷ではない」と主張するJAZAも無責任であると言えます。

なお、動物にとって何が残酷な行為に当たるかを考えるときの基本は、その動物がどんな生き物であるかという知識です。イルカについては、多くの科学文献があり、生態も解明されてきています。その見地から言えば、イルカの生体捕獲は極めて残酷であり、太地が行なっている防護壁対策は、何の解決策にもなっていません。また、「出血量を抑え苦しまないよう・・・・」と表現されている、「と殺対策」ですが、この方法が誤りであり、さらなる苦痛をイルカに与えているという科学論文が複数発表されています。

(2) シーシェパードは声明で「(太地町の行う追い込み漁は)伝統ではない。お金目当てに決まっている」と主張していますが、この主張についてどう思われますか?

「シーシェパード」は、今回の件については実際には何も関与していません(と言うよりも、日本のNGOは関与させていません)が、太地における「イルカ追い込み漁は伝統ではない」と言う主張は正しいものです。太地町が沖合からイルカを追い込む「積極的な追い込み漁」を始めたのは1969年で、静岡県富戸からそのやり方を教わり始めたものです。これは、同年開館した「太地町立くじらの博物館」のための生体捕獲であり、漁業としての追い込み漁が始まったのは、その数年後になります。このことは、太地町が編集・出版した「太地町史」にもはっきり書かれています。イルカの追い込み漁を伝統とする見解は間違っており、イルカ追い込み漁を捕鯨の歴史と「いっしょくたにする」地元の政治的戦略に、マスコミがまんまと乗せられているといえます。

なお、繰り返しになりますが、太地の追い込み漁は、水族館にイルカ(ゴンドウ)を入れるために経済活動として始まったもので、伝統とか文化とは、無縁のものです。

また、貿易統計を見れば、イルカ1頭が450万~500万円で海外へ売られていることがわかります。食肉用であれば、種によって違いますが、1頭5万~20万円程度の利益にしかなりませんから、単純に金額ベースで考えても、利益目当てとの指摘は間違っていません。

(3) 太地領の追い込み漁は改善努力を重ねてきたにも関わらず、またJAZAに対し去年8月に「食用のための捕殺」と「水族館のための生態捕獲」を分離すれば追い込み漁で捕獲したイルカの購入を認めるとしながら、一転、太地町からの購入を続けるなら除名処分にするとしたWAZAの対応をどうお考えですか?

WAZAの対応は無責任です。これは次の質問への答えと重なりますが、今回の突然の動きに訴訟問題が影響していることは、ほぼ間違いありません。AFDが影響力を持っていると言うことではなく、WAZAにとって「訴訟」そのもの、ましてそれに負けそうだと言うこと自体が国際的な信用を落とし、WAZA内の混乱を招くことになる恐れがあったからです。10年間もの間、自分たちが言い出したことを棚上げしておいて、急に態度を変え、JAZAに対して何も説明がないと言うのはWAZAが自らの組織温存を第一に考えていることの証明であり、イルカ漁そのものの是非とは別の問題としてJAZAに対して極めて無責任であり、その場しのぎの対応だと考えます。但し、もしJAZAがWAZAの通告を受けた後、WAZAに説明を求めることをしていないのであれば、WAZAだけの責任とは言えないでしょう。

(4) オーストラリアのイルカ保護団体AFDが今年3月にJAZAの除名を求め訴訟を起こしたことが、WAZAが方向転換した要因だといわれていますが、どうお考えですか?動物愛護団体1団体にそれほどの影響力があるのでしょうか?また、この訴訟以外にWAZAの方向転換の要因があるとしたら、それは何でしょうか?

前述したように、WAZAの10年を超える有言不実行がAFDによる「訴訟」につながり、自らの言葉を実行に移さざるを得なかったということですが、この10年の間に動物福祉に関する考え、また、人間と動物との関係に関する認識が、世界的に変わってきていることも、大きく影響しています。国際的な動向がWAZAを後押ししたとも言えます。(参照:「水族館に関する世界の動向、及び、イルカ・クジラ類の保護」http://elsaenc.net/aquarium/aquarium_worldtrends/

(5) WAZAの通告に対し、太地町からのイルカの購入を加盟水族館に禁じたJAZAの決定について評価されますか?理由と共にお答えください。

評価するに○

JAZA会長の荒井氏の発言の通り、既に世界的には水族館のイルカは繁殖で増やす時代になっており、日本もそれに習う方向に行くべきで、今回の事件をそのきっかけとして前向きに考える必要があります。

(6) 今回のJAZAの対応は加盟園館の多数決で決められましたが、WAZAに残留することで希少動物の貸し借りや情報交換といったメリットを受けられる動物園が過半数を占める状況での多数決は出来レースだとの指摘があります。このため動物園の団体と水族館の団体に分離した方がいいとの意見もありますが、どうお考えですか?

これは、動物園と水族館それぞれの問題であり、外部の者がとやかくコメントする話ではありません。私共はいずれにしても、動物園・水族館で、現状のような野生動物の展示をすること自体に反対であり、双方を分離したとしても主張に何ら変わりはありません。但し、動物園と水族館の団体分離がイルカを野生から導入し続けるためであれば、時代錯誤な判断です。

(7) JAZA加盟の水族館に番組でアンケートを取ったところ、イルカの展示やショー、そして他の動物に対する愛護団体の圧力やWAZAの制約に拍車がかかるのではないかと懸念する声が上がっています。今後の展開をどうお考えですか?対象となりそうな動物など具体例がありましたらあわせてお答えください。

今回の件で明らかになったことは、「野生動物と人間の関係のあり方」について「動物の福祉」と言う観点から考えようと言う「世論」が日本でもようやく形成されつつあることがはっきりしたことです。今まで水族館のイルカがどこからどうやって連れて来られているのかを知らず、興味もなかった人たちが、ことの事実を知り、本当に今のままで良いのかと考え始めるきっかけを今回の事件が与えたことは間違いありません。イギリスでは、既に20年以上前に世論によって水族館でのイルカ飼育を取りやめています。イルカショーについても、今回、JAZA内部、水族館内部から、ショーが果たして教育的といえるのかという疑問の声が挙がっています。また、JAZA内部に、日本でもイルカの補充を野生の捕獲ではなく、繁殖で行なうべきだという声も挙がりました。イルカだけでなく、「野生動物を人間の勝手な都合で狭い場所に閉じ込め、展示すること」自体の是非を、日本でも考える時が来たと言えます。歩みは遅くとも、今後、日本でも世界の動向に従った変化が起こることと思います。愛護団体の働き(いわゆる「シーシェパード」のような圧力ではない、啓蒙的活動)や、WAZAが行なう動物福祉に関する監視、繁殖技術などの指導が、日本の現状を変えていくのではないかと思います。

なお、高度な認知能力を備え、複雑な社会生活を営み、群れの中で文化の継承が見られる動物は、動物園、水族館に閉じ込めて飼育するのに、最も適さない動物とされています。これに該当するのが、イルカ・シャチなどの鯨類、ゾウ、類人猿です。鯨類だけでなく、動物園におけるゾウの飼育環境はすでに問題にされています。

(8) 同じアンケートで、国際組織・団体との交渉において日本政府の支援を求める声が上がりました。現状、国はどのような支援をするべきだったのでしょうか?また今後はどうするべきでしょうか?

今回の事件に対し、国として支援を考えるのであれば、政府がまずすべきことは太地町に対し、「イルカ追い込み漁」の全てを公開させることです。自分たちの主張を国際的に発信したいのであれば、まず全てをオープンにして、たとえば、残酷だと指摘された部分に対して、「ご覧の通り、ここはこうしているから残酷ではない」とはっきり科学的に反論すべきです。テレビも、もし残酷でないと判断するなら、捕殺の光景を放映して欲しいと思います。何もかも隠したままこそこそと感情論だけで対応していては、誰からも信用を得られません。

なお、(1)で述べたように、残酷ではないことを世界に納得させるには、イルカの生態に基本をおく科学的な証明が必要です。まず、日本政府は、追い込み漁が文化でも伝統でもないという事実を認め、国策としてのイルカ追い込み漁推進を中断し、世界に通用する科学者の意見を聞くことから始めるべきです。この過程を経ることによって初めて、日本政府のとるべき道が示されます。

(9) 太地町のイルカは中国や韓国などアジアを中心に、主に水族館の飼育・展示用に輸出されています。これらの国々はなぜ批判を受けていないのでしょうか?なぜ愛護団体などはターゲットにしないのでしょうか?

批判を受けていないことはありません。海外の動物保護団体が中国や韓国に実際に出向いて、活動しています。私共も事あるごとに日本からのイルカ輸入国に対して輸入しないよう働きかけを行なっていますが、その活動がいかんせん、目立たないのが残念なところです。また、たとえば、中国国内でも鯨類を含める動物保護活動はありますが、なかなか表立って活動できていないのが現状のようです。しかし、中国(台湾と香港を含む)は、自国の水域内でイルカ・クジラ類の捕獲を禁じています。

韓国は、中国と事情が違っています。韓国では、2012年に、「イルカショーは動物虐待である」という韓国の動物保護団体からの主張が受け入れられ、ソウル市が運営する「ソウル大公園」内の「ソウル動物園」でイルカショーが中止になりました。(但し、イルカの生態を説明するためにイルカを泳がせたり、簡単なジャンプをさせたりすることは許可されています。)また、違法に捕獲されたことが分かった「ソウル動物園」のイルカが、リハビリ後に野生に戻され、現在、その内の1頭が、済州島沖で元気な姿を確認されています。

韓国や中国の事情がどうであれ、現在、日本以外の国では、イルカの入手は非常に困難になっています。日本は、中国や韓国にイルカを輸出して、多額の利益を得ており、その輸出数が、近年大幅に上昇しています。いわば、日本の野生イルカの捕獲が、中国や韓国の水族館産業を支えているといえます。このことを考えれば、野生イルカ輸出の元凶として、日本に厳しい批判の目が向けられるのは、当然のことと言えます。

(10) イルカ追い込み漁への非難は、イルカの輸入を脅かすことにつながりかねませんが、なぜ中国や韓国などの太地イルカ輸入国は日本の味方にならないのでしょうか?動物愛護団体やWAZAの対応を批判しないのでしょうか?

中国側が今回の事件をどう捉えているかはわかりません。もっとも、今回の事件そのものがきちんと報道されていない可能性もあります。昨年のWAZA・JAZA・日本のNGOの三者会合で、WAZAのジェラルド・ディック氏は、中国でのイルカ福祉の遅れを問題にし、日本からの中国へのイルカ輸出を批判しましたが、中国にはWAZAに加盟している動物園・水族館は1館もありません。ビジネスのためにイルカを輸入していますが、イルカ事情を把握していないことも考えられます。世界の動向への認識も薄いと言えます。しかし、最近、映画に関連した「ザ・コーヴ」が中国語に翻訳出版され、追い込み漁に反対する人々が増え始めたというニュースがあります。政治的にも日本と微妙な関係にある中国がイルカの入手を巡って日本の味方になるとは、考えにくいです。前述したように、韓国の事情は中国とは違いますし、イルカ問題を積極的に取り上げているNGOも複数あります。日本に味方して「水族館のために野生イルカの捕獲を」というような前時代的な対応をすることは、まず考えられません。

(11) なぜイルカはダメで、ウシやブタはいいのでしょうか?オーストラリアでコアラやカンガルーが殺されたり、フランスでガチョウに無理やりエサを食べさせてフォアグラを生産したりと、世界にも残酷と思える動物への行為がありますが、なぜ日本のイルカだけが非難されるのでしょうか?

現在問題にされているのは、イルカの生体捕獲です。「イルカはダメで、ウシ、ブタはいいのか」という食の問題ではありません。イルカの追い込み漁について語る時、定番のように出てくる質問ですが、ここでは、的外れな質問です。

「食文化については他人にとやかく言われる筋合いのものではない」と言うのがどの国でもあるでしょう。「日本のイルカだけが非難される」と言う捉え方そのものがおかしい話で、そう思っている人は「被害妄想」ではなく、はっきりと自分の主張を表明すればいいだけです。ちなみに、オーストラリアでのカンガルー殺し、フォアグラ、さらに、問題が発覚すればウシ、ブタ等の家畜であっても、厳しい非難や批判を受けています。残酷さが非難されているのは、日本のイルカに限ったことではありません。

なお、イルカ食が問題視されるのは、残酷な殺し方だけでなく、食の安全に問題があるからです。イルカ肉の汚染は科学的に証明されており、専門家による警告が出されています。

(12) インドは「ウシは神聖だから殺すな」と世界に訴えたりはしていません。これはそれぞれの国・地域で文化の差があることを理解しているからだと考えられます。では、なぜ欧米は他国・地域の文化を認められないのでしょうか?

こういった質問は、今回の事件を「捕鯨問題」と混同しているために出てくるものです。もちろん、私共も「捕鯨問題」に対する意見・主張は持っていますが、それをここで展開するつもりはありません。なお、繰り返しになりますが、イルカの追い込み漁は、太地という一地域の経済活動であり、「日本の文化」ではありません。

(13) 韓国ではソウルオリンピックを前に犬食文化が残酷だと非難され、国のイメージを守るため犬食文化が衰退した経緯があります。2020年の東京オリンピックを前に、日本にも非難が集まるようなことがあるのでしょうか?その対象となりそうな具体例は何かありか?

十分ありえます。日本では話題になりませんでしたが、国連は、2007年、続いて2008年を「国際イルカ年」と定め、世界的にイルカの保護を訴えました。最近では、ケネディ駐日アメリカ大使のイルカ漁反対発言も話題になりました。オリンピックは全世界の注目が集まるイベントであり、それに向けて様々なキャンペーンが行われるのはあらゆる分野に言えることです。

ちなみに、国内では既に「TOKYO ZEROキャンペーン」というキャンペーンが「東京五輪が開催される2020年までに、不幸な犬や猫を『ゼロ』にし、まずは東京を世界にほこれる『動物福祉先進都市』とする」ことを掲げて活動しており、多くの有名人が賛同しています。オリンピックを契機として訴える手法は、国内だけでは問題を打破できず、国際的な視線が必要と考える国内の団体によって起こされることもあり、単純に外圧ととらえるべきではないと思います。

(14) 反捕鯨運動について、ベトナム戦争での枯葉剤使用への批判から目をそらすため、アメリカが当時小規模だった反捕鯨運動をあおって活性化させたとの見方があります。今回の反イルカ追い込み漁運動についても、どこかの国家や団体が何かを隠すためにあおっているというようなことは考えられるのでしょうか?具体的な例があるならお教えください。

「捕鯨問題」と今回の追い込み漁に対するWAZAの主張は、はっきり分けて考えるべきです。今回の件は、水族館・動物園の問題であり、「反捕鯨運動」とは関係ありません。ただ、「反追い込み漁」の活動を支持する国は、1972年の国連人間環境会議のころとは比較にならないほど増加しています。(前述の「水族館に関する世界の動向、及び、イルカ・クジラ類の保護」参照)こうした国々が何かを隠すために、何かを企んでいる等とは、到底考えられません。

「今回の反イルカ追い込み漁運動」というのが、何を指すのかが分かりませんが、追い込み漁に反対する活動には、かなり長い歴史があります。エルザ自然保護の会は1976年に設立しましたが、設立当初から追い込み漁に反対して、今に至っています。海外の団体には、これに匹敵する、または、上回る期間、追い込み漁を取り上げて、反対活動を続けている動物保護団体や環境団体があります。エルザ自然保護の会を含めて、こうした団体は、国家の指示を受けているわけではなく、何かを隠して、何かを企てるために活動を続けているわけでもありません。

今回、報道が多かったことを指しているのであれば、煽られたのはメディアの方々のほうということになりますから、私たちに何があったのかを聞くのは筋違いかと思います。

また、動物愛護団体とひとくくりにして呼んでも、各団体の方針や活動は、大きく違っています。他団体、特に交流のない団体については、実情が分からないため、コメントする立場にありません。

(15) シーシェパードや動物愛護団体の活動は、純粋な愛護活動なのでしょうか?団体によって違いがあるようなら、具体的に教えてください。

「純粋な愛護活動」という意味がわかりません。海外の団体と日本の団体の一番大きな違いは活動資金の違いと言えます。欧米の保護団体は寄付による多額の資金で運営されており、どうしても早く結果を求められるため、過激な行動に走る傾向があります。その点、日本の保護団体はボランティア主体で、資金もまったく乏しく、活動も地味ですが、本来の目的を失うことのない活動がなされていると考えます。

(16) 活動中に大破しましたが、シーシェパードは一時、2億5000万円の高速艇を使用していました。どこから、どうやって多額の資金を得ているのでしょうか?

確かなことは分かりませんが、全て個人・企業からの寄付金ではないかと思います。欧米では環境保護団体に寄付することが富裕層としてのステータスになっているためです。また、個人が動物・環境保護団体を寄付によって支えることも、海外では日常的に行われています。

(17) シーシェパードや動物愛護団体が日本をターゲットにするのは、“日本たたき”にうまみがあるからなのでしょうか?その場合、具体的にはどのような構図なのでしょうか?

シーシェパードとは交流がないため、コメントできません。私共は、すべての活動を平和的、合法的、非暴力的に進めることを条件にして、交流する海外団体を選んでいます。そうした団体が、イルカの追い込み漁に反対することで何か特別な「うまみ」(?)を得ていることはありません。「日本たたき」というと、日本に全く非がないのに、一方的に非難されているように聞こえますが、日本には、非難を受ける、それなりの理由があると考えます。

参考までに紹介しますが、国連が「国際イルカ年」を定めた時、モナコのアルバート2世王子は、「国際イルカ年の宣言によって、私たちは新たに海の生物多様性を守ることに関与する機会を与えられました」と述べました。これには、次のような意味が込められています。つまり、『イルカ保護の基本は、イルカを殺さないことであり、野生のイルカを野生のままにおくことです。また、イルカが棲みやすい環境を整えてイルカの生息地を保護することです。この影響は、すべての海洋生物に及びます。イルカの保護を通して、失われていく海の生物の多様性をも護ることができるのです』という意味です。言い換えれば、日本の行なっている「イルカの追い込み漁」は、生物多様性の重要性を無視し、地球規模で各国が取り組んでいる、生物多様性のための活動を妨げることになります。日本が、「野生動物は世界共通の資産」と考える国際的な社会通念を無視し、イルカの追い込み漁を続ける限り、日本への非難は止むことがないと思います。

(18) 独自の伝統文化を守るために日本の足りないもの・弱点は何だと思われますか?また、なぜ足りないのでしょうか?どうすれば伝統文化を守れるとお考えですか?

質問の意図として、「イルカの追い込み漁」が日本の伝統文化であると言う前提があるのでしょうが、今回の事件は、伝統文化としての捉え方はできませんので、この質問自体がピントはずれです。

なお、伝統文化についての考え方ですが、言うまでもなく日本の文化や伝統を守ることは大切です。しかし、もしその文化が人権無視、動物の命への冒涜ともいえる搾取や生き物への激しい苦痛を伴うことの上に成り立つものである場合には、その伝統文化の継承の方法を変えるべきであると考えます。そうした例は、世界各地にあります。伝統文化は、何が何でもそのままの形で守らなければならないものとは、考えません。時代と共に変わるものです。

以上の回答は、日本の168団体の総意として、「海・イルカ・人」「エルザ自然保護の会」「全国動物ネットワーク」「PEACE 命の搾取ではなく尊厳を」「ヘルプアニマルズ」の5団体によって作成されました。

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