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動物園・水族館の機能について検討する際の要望書

2013年11月22日

環境省自然環境局
局長 星野一昭 様

動物園・水族館の機能について検討する際の要望書

 先般、環境省において「動植物園等の公的機能推進方策のあり方検討会」が設置されました。この検討会において議論がなされるにあたり、種の保存や環境教育といった、理想を追い求める話ばかりがなされてしまうことを懸念しています。動物園・水族館のあり方について検討するのであれば、まず、それらの施設が本質的にどのような施設なのかを考える必要があります。また、繁殖によって動物の苦しみを継続させることが正しいことなのか、その前提から疑う議論をしてください。そして、そこで苦しむ動物たちの現状を今後どうすべきなのかについても議論がなされることを要望します。

これらのことに関連し、特に以下の点を要望いたします。

1. そもそも動物園・水族館で正しい教育ができるのかどうかを議論してください

動物たちを本来の生息地とは全く違う環境に引き離し、狭い場所に監禁し、多くの人の視線に晒しながら飼育している時点で、動物園・水族館の動物たちは本来の姿とは変わってしまっており、正しい動物像を伝えることは不可能です。いわば偽物の自然を見せているのであり、そのような場で行う教育とは何なのか、根本的な議論が必要です。

「野生では実は動物はこうではない」と知識を言葉で伝えることは簡単ですが、「人間は野生動物を身勝手に扱ってよい」というメッセージを与えてしまっていること自体を正すのは、動物園・水族館の中では困難です。まずこの点を自覚した上で議論を重ねなければ、検討会には開催する意味がないのではないでしょうか。

2.動物園・水族館が特に行うべきではない行為を明確にするべき

動物園や水族館では、動物福祉上・教育上等の理由で不適切と考えられる行為がさまざま行われています。特に以下の行為については問題があり、環境教育とは併存しえないため、なくす必要があることを、明確に結論付けてほしいと考えます。

また、国は、以下のような事業を行う動物園・水族館に対して、種の保存などの事業を委託しないでください。娯楽によって一方で間違った教育をし続けながら、種の保存などを掲げるのは偽善であり、誤った行為が正当化されてしまう可能性があります。

(1) 動物を使うショー(給餌ショーを含む)

動物園・水族館では、ゾウ、クマ、猛禽類、イルカ、アシカ、セイウチ、ペンギン、ラッコなど、さまざまな動物が現在でもショーに使われています。チンパンジーのショーについては、環境省も過去に調査を行ったことがあるはずですが、本来であれば「国際希少種の繁殖のさまたげになるから演芸させてはいけない」といった理由ではなく、野生動物全てについて、調教して芸を人々に見せること自体を誤りと定めるべきです。動物たちを、人間を笑わせるために使ってよいと子どもたちに教えながら、種の保存や環境教育はできません。

また、最近目立ってきている、動物への給餌ショー・給餌タイムについても、野生動物に人間が手渡しでエサを与えるところを見せる、もしくは客にエサを与えさせるなど、不自然な形が目立ち、本来の動物の生態や、人と動物の関係を教える上で不適切なものとなっています。

人に慣れた野生動物を見せることが動物園・水族館にとって重要なのだとしたら、そのことは、種の保存や環境教育と、そもそも両立しえるのでしょうか。動物園・水族館が何を行うべきでないかについても議論すべきです。

(2)  移動動物園

いわゆる移動専門の動物園だけではなく、常設動物園やサファリパークが派生事業として行っている場合もあります。短期間で移動を行うことによるストレスだけではなく、通常の動物園では触らせないような動物でも触ることができるなどの問題があります。設備も簡易で、極端に狭く、野生動物の本来の生息地の環境とは著しくことなります。

ショーと移動動物園については、類似の事業であるサーカスが世界的に禁止されつつあり、参考までに33カ国の禁止条項のリストを添付しました。(資料1:サーカスでの動物の利用を禁止している国一覧

(3) 小動物を触らせる行為(ふれあい)

ウサギ、モルモットなど、本来は繊細で不特定多数の人間に触らせるには不適切な動物を子どもたちに触らせる行為が、「ふれあい」の美名のもとに蔓延しています。1日1時間程度に限定している場合もありますが、数時間~開園中常時ふれあいに供されている場合も多く、動物たちはストレスをため、触られることに対して諦めた状態になっています。ふれあいに出されている間、給餌が断たれている場合もあり、「行動の自由」だけではなく「飢えからの自由」も奪われています。乱暴に扱われていても注意する係員がいないなどの状況も、よくあることです。(資料2:井の頭自然文化園のふれあいコーナーの例)

家畜化された動物とはいえ、ぬいぐるみのように扱うべきではないのにもかかわらず、動物園は娯楽に偏った企画によって誤りを教えています。

3.動物取扱業の規制から動物園・水族館を外すべきではない

日本動物園水族館協会は、かねてより動物取扱業の規制から動物園・水族館を外すべきだと要望していますが、現状では単に規制緩和を狙った主張としか思えず、受け入れられません。

そもそも動物園・水族館が動物取扱業の規制を嫌がるのは、ペットショップ等と同列に扱われることが嫌だということが理由のようですが、動物園・水族館のほうがペット業界より動物の扱いがよいかといえば、そういうわけでは決してありません。動物園・水族館は、そもそも扱う種の数が多く、主役級の動物とそれ以外の動物で扱いに落差があります。また、常同行動や自傷行為、脱毛、ケンカ跡などは動物園こそ見かけます。

また、ペット業界には、業界団体が移動販売を自主規制する動きなども一部で見られますが、動物園業界では、移動動物園は野放しです。ペットショップも生体展示が批判されますが、動物園も展示を行っており、旧態依然の狭い檻が依然として主流です。ショーなどを自ら廃止するような自主規制もなく、野生からの捕獲個体の購入についてもやめさせていません(イルカの導入について、JAZAへの要請書を参照)。

さらに、いわゆる伴侶動物とされる動物種の扱いについては、むしろ動物園のほうが悪いといえます。ペットショップではむやみに客に触らせないような動物を、動物園では数多く過密に飼育し、連日不特定多数に触らせるなどの行為を行っていますし、暑熱対策なども不十分です。

むしろ、入場料無料のため公園扱いとなり、長らく取扱業の規制を受けてこなかった事業者がいたことのほうが問題であり(野毛山動物園など。現在は第二種相当)、動物愛護法上の規制を上回る高い規制を受け入れるつもりがあるのか不明な現時点では、動物園法といった主張も受け入れられません。韓国にも動物園法の動きがあるそうですが、法案にショー禁止が盛り込まれているために業界側の反発があり、成立するかどうかはわからないと聞いています。日本でも、結局そのような動きになるのであれば、動物園法をつくることに意味はありません。

4.動物園が手放す余剰動物の末路について本格的に調査した上での議論を

単に由来表示がされるようになってきたことが理由かもしれませんが、近年、ペットショップで売られる動物園CB(キャプティブブリード)の個体がふえているように感じられます。(資料3:事例集)

従来より、動物園では、いわゆる「余剰動物」が発生し、増えすぎた不要の動物は外部へ放出されてきました。販売を意図した繁殖もあるようですが、そういった余剰動物たちは、動物商を介して個人経営の移動・ふれあい動物園やマニアなどの手に渡っています。それらの場所では、飼育環境や飼育管理は、より劣悪となるのが通常です。過去には、移動動物園が移動先でチンパンジーを凍死させるといったこともありました。

また、モルモットなどのふれあい用の小動物が周辺の学校等へ譲渡されているケースもありますが、学校もまた動物の飼育場所としては不適切な場所です。

つまり、実際には動物園で繁殖された動物は余っており、売却・譲渡された余剰動物の余生に対して、動物園は責任を取っていないのです。

さらに、マウス、モルモットなど、ふれあい用の小動物を園で繁殖している場合には、オスの殺処分を伴います。ふれあいでは雌雄一緒にはできず、メスのほうが性格が大人しいことなどもあって、メスが使われることとなり、不要オスが出るからです。(資料4:井の頭自然文化園の平成24年度統計、資料5:横浜市動物園課への要望書。井の頭はメスのみふれあいに使用。オスは殺処分と学校・他園への譲渡。他の動物のエサにはしない。野毛山は、モルモットについては一部去勢オスもいるが、主にメスを使用。他の動物のエサとして使う。)

このことは、動物園の動物が足りなくなるという主張の影に隠された動物園の素顔の一つではないでしょうか。動物園が特に見せたいと思っている動物の話ばかりではなく、余剰動物がいる現実について、その行く末がどうなっているのか、調査を行った上で議論をすることを要望します。

5.国立動物園は不要です

国立の動物園をつくれという主張には賛同できません。そもそも、自分たちが見せたい動物を税金によって国に繁殖してもらおうなどという考えは、都合がよすぎるのではないでしょうか。例えば、コスタリカは国立動物園の閉鎖を決定しており、国際的な流れにも逆行します。(資料6:CNN記事)

仮に、野生復帰させるための動物の繁殖を国主導で行うとしても、種は国内希少種に限られるはずです。生息地に返せるわけではない動物種をわざわざ娯楽のために繁殖するインセンティブは国にはないはずですし、国が営利事業に加担することは批判を浴びるでしょう。

保護繁殖事業については、多数の人間に見られることに慣らしながら野生復帰を目指すことはできないはずであり、トキと同様専門施設が求められる場合もあるかとは思いますが、そういった保護繁殖施設から動物園に動物を放出するべきではないと考えます。あくまで野生復帰と、そのための生息地保全を目的に据えることを要望します。

6.動物の繁殖は止め、動物園・水族館の削減を目標とすべき

動物園・水族館は展示を行っている以上、「監禁された動物を見て楽しむ」という娯楽機能から脱することは不可能ではないでしょうか。これらの施設では、動物たちは本来の生息地から引き離されており、生き生きとした本当の姿を知ることができるわけではありません。むしろ、嘘を展示し、教育していると言っていい施設です。そして、飼育下繁殖によって本来の生態や形質を失った動物を維持していっても、いわば「家畜化」することによって誤った娯楽を持続させるだけであり、本当の環境教育にもつながりません。

イギリスでは、動物園オーナーでありゴリラの野生復帰で有名なダミアン・アスピノールが「すべての動物園を廃止すべきだ」と言っています。真の自然保護論者にとっては動物園が不要となることがゴールであり、今後20~30年で消えていくべきだとしています。(資料7:EXPRESS記事)

日本においても、野生復帰を目標とする希少種もしくは野生絶滅種以外の繁殖は行わず、動物園・水族館の飼育頭数を縮小していくべきではないでしょうか。野生動物なのですから、繁殖がうまくいかずに数が減っていくのは自然なことであり、それに合わせて施設・管理が至らない動物園・水族館から閉鎖していくべきです。生息地に返せるわけではない展示目的の繁殖を「種の保存」と呼ぶのは、業界による都合のよい呼び方です。繁殖が過剰になっている動物についても、不幸な余剰動物を誕生させることをやめさせるべきです。

かつては、人間を見世物にした時代もありました。しかし、人々が意識を変えるにしたがって、それは過ちだと認識されるようになりました。人々の動物への見方が変化すれば、動物を見世物にすることについても、どこがいけないことなのかが自然に理解されてくるにちがいありません。

未だ過渡期であることは十分承知していますが、国として環境教育や種の保存をうたうのであれば、どうか動物園・水族館の本質を見抜いた上で検討を行うようにしてください。

なお、これらのことを検討するには検討会の開催回数が大変少なく、傍聴も10名ほどに限られるために抽選漏れが出ており、ほとんどクローズドの状態で性急に議論が進められているように感じられます。それによって業界に有利にことが運ばれているとの懸念もあります。この点についても改善を求めます。

何卒よろしくお願い申し上げます。

以上

参考:
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