2019年改正動物愛護法解説:飼養保管基準の遵守義務が明確に

2019年動物愛護法改正解説

動物の所有者又は占有者の責務等(第七条):
飼養保管基準に遵守義務があることが明確になりました

 ※下線が改正による追加部分。

(動物の所有者又は占有者の責務等)
第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。この場合において、その飼養し、又は保管する動物について第七項の基準が定められたときは、動物の飼養及び保管については、当該基準によるものとする。

前回(2012年)の法改正で、人の占有下にある動物のアニマルウェルフェアの国際原則である「5つの自由」の理念が盛り込まれましたが、条文に書き込まれたのは3つだけでした。「恐怖や抑圧からの自由」「自然に行動できる自由」が盛り込まれていないため、私たち3団体は、第二条の基本原則に、動物が心身の苦痛を感受する存在であることを書き込み、アニマルウェルフェアの「5つの自由」全てを盛り込むことを求めました。これについては、一切の改正がありませんでした。

また、動物の所有者・占有者の責務を定めた第七条については、動物にとって最大のストレスである輸送の際の配慮に関する条文を入れることを求めましたが、これも入りませんでした。

しかし、家庭動物、展示動物、実験動物、産業動物の4つの飼養保管基準を定める根拠となっている第7条の第七項については、これら飼養保管基準の遵守義務を要望していたところ、改正がありました。現在は、これら4つの基準に遵守義務はない状態ですが、改正法施行後は、第7条の努力義務を果たす場合には、これらの基準を守らなければならないという位置づけになります。

ただし、法改正に関わった2議連(自民党どうぶつ愛護議連と超党派議連)が合意を見た段階あたりでは法案に「当該基準によらなければならない」とあったものが、最終的に国会に提出された法案では「当該基準によるものとする」という書きぶりに変わっていましたので、何らかの圧力があり、表現が弱められたと考えざるを得ません。

しかし法律の要綱には、(第7条の本文は努力義務なのですが、その義務を果たす場合には)これらの基準を遵守しなければならないことははっきり書かれていますので、基準の位置づけが明確になったことに間違いはありません。

動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律案要綱

第一 動物の所有者又は占有者の責務規定の拡充
動物の所有者又は占有者は、その動物について環境大臣が飼養及び保管に関しよるべき基準を定めているときは、当該基準を遵守しなければならないことを明確にすること。     (第七条第一項関係)

理念的な部分では他に、第八条の動物販売業者の責務を動物を譲り渡す者にも拡大し、動物を譲渡す際には譲り受ける者が責務を遵守できる者かどうか確認しなければならない定めを求めましたが、これについても改正はなされませんでした。

決議/附帯決議

衆参両院の決議/附帯決議の中で、飼養保管基準についての言及があります。「遵守義務」と明記されています。

十三 諸外国等におけるアニマルウェルフェア及び脊椎動物の心身の苦痛の感受性に関する調査研究並びに動物の取扱いに係る制度・運用の事例等について、我が国の動物の取扱いに係る制度の在り方の検討に資するよう、情報の収集・整理を精力的に進めること。また、国際的なアニマルウェルフェアの基本原則である五つの自由について十分に配慮して、動物愛護管理に係る諸施策を執り行うよう、飼養保管基準の遵守義務をはじめとした法制度の理解の浸透・周知徹底を図ること。

施行通知により、改めて4つの基準が示された

施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)

第7項に基づき環境大臣が定める基準には4つの飼養保管基準が該当することが、改めて示されました。

1 動物の所有者等が遵守する責務の明確化(第7条関係)

法の目的を達成するためには、全ての動物の所有者又は占有者において、逸走の防止、動物の終生に渡る適切な飼養(終生飼養)、繁殖に関する適切な措置等が必要である。

法第7条第7項は、環境大臣が、関係行政機関の長と協議して、動物の飼養及び保管に関しよるべき基準を定めることができると規定されているが、改正法により、同条第1項に、当該基準が定められたときは当該基準を遵守しなければならないことが規定された。なお、同条第7項に基づき環境大臣が定める基準としては現在、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(平成14年5月環境省告示第37号)、展示動物の飼養及び保管に関する基準(平成16年4月環境省告示第33号)、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月環境省告示第88号)及び産業動物の飼養及び保管に関する基準(昭和62年10月総理府告示第22号)がある。

➡改正動物愛護法に関するページに戻る
2019年改正 動物愛護管理法 2020年 2021年 施行

NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG