2016年に食品安全委員会が立ち上げた評価技術企画ワーキンググループは、動物を用いない新規手法の取扱い等について、これまで検討されてきました。早いもので、もう10年が経ちます。
途中、ベンチマークドーズ法の活用に関する検討が行われてきた際はあまり傍聴やご報告ができていませんでしたが、去年10月開催の第36回から、新たに食品健康影響評価におけるリードアクロスの活用が議題になっており、今年2月16日の第37回から傍聴を再開しました。8月17日にも第38回があり、傍聴しました。
配布資料と議事録
具体的検討の始まった第37回では、正直、動物実験の代替を強く意識しているとは思えないような雰囲気があり、がっかりもしましたが、リードアクロスは、最近日本でも言われるようになってきた新しい評価技術体系としての「NAMs(New Approach Methodologies)」においても重要な技術ですので、食品安全委員会が積極的に取り入れることができるよう、検討が進められていることを嬉しく思っています。
具体的には、「食品健康影響評価においてリードアクロスを活用するための手引き」の案の内容について、専門家による審議が続けられています。
リードアクロス(Read-across)とは
リードアクロスとは、安全性に関する試験データがない化学物質についても(動物実験をしなくても)、代謝経路などがよく似た別の物質の既存データから毒性や性質などを推定・類推できる手法のことです。
(Q)SAR(構造活性相関)と同じような系統の技術ですが、(Q)SARが化学物質の構造の類似から予測する手法であるのに対し、リードアクロスは、それだけでなく、代謝、薬物動態、毒性メカニズム等が類似している参照物質のデータを用いて予測します。
コンピューターを使う、いわゆるin silico の評価方法です。
食品安全委員会は2023年から2024年にかけて研究費を出し、リードアクロスの国際機関や諸外国での受け入れ状況の調査や、活用事例の解析、NAMs関連技術の検討などを実施しました。この調査研究から食品健康影響評価にリードアクロスを活用する際の考え方の提案がなされており、ガイダンス作成に活かされることになります。
その他の食品安全委員会の動き
評価支援チームの設置
去年1月開催の第35回会合で、評価技術企画ワーキンググループ内に評価支援チームが設置されました。これはチームごとに会合を開いていくようなイメージではなく、必要な時に問い合わせれば知識を提供してもらえるような専門家をリスト化しておくようなイメージだそうです。「(Q)SAR変異原性評価支援チーム」と「BMD法評価支援チーム」が設置されました。
広報誌 『食品安全』
広報誌 『食品安全』 第62号に「新しい評価技術【NAMs】への対応(Q)SAR及びBMD法の活用に関する現状と課題」という記事が載りました。

進行中の研究課題について
食品安全委員会が研究費を出して、研究が進行中の課題の一覧はこちらに載っています。
動物実験を減らすことにつながる課題としては、現在、NAMsデータを活用したウェイトオブエビデンス(WoE)評価の体系化に関する研究などの課題が進行中であることがわかります。




