牛の死については決して語られない…鹿児島大学共同獣医学部の不適切な動物実験・概要編

鹿児島大学共同獣医学部の不適切な動物実験について、何回かに分けて投稿します。
第一弾は、概要編として、基本的な情報やリンクをまとめました。

鹿児島大学で不適切な動物実験!

今年1月、鹿児島大学共同獣医学部で行われた不適切な動物実験について公表があり、大学が記者会見を行ったことなどが報じられました。

問題の実験は牛の感染症に関わるもので、病原体を封じ込める対策ができている施設で扱わなければならない病原体が検出されていたにもかかわらず、一般的な施設を使って実験がなされていました。

検出された病原体のレベルはバイオセーフティレベル(BSL)2で、危険性としては中程度、例えばインフルエンザウイルスやブドウ球菌、サルモネラ菌などと同等のレベルに分類されるものです。

この実験は、健康な牛に意図的に病原体を感染させるような、いわゆる感染実験ではありません。外部の施設で自然に肺炎を発症した牛を、症状が治まってから大学の施設に連れてきて実験に使う方法がとられていました。

その点で、健康な動物を病気にする一般的な動物実験とは異なり、現実の病気を研究しようとしているとは思いますが、抗菌薬を投与して、それが病変部位である肺に影響を与えているかを確かめる際には、気管支肺胞洗浄という苦しい手段も使われますし、動物実験であることに変わりはありません。

そして、病気の症状が治まったとはいえ、感染牛をわざわざ大学の施設に入れるのですから、当然対策は必要と考えられます。しかし、BSL2レベルの病原体が検出されることが想定されるにもかかわらず、BSL2ではない施設に入れたことが問題となりました。

そして、中には、まだ症状が出ている牛を連れてきていたこともあったそうです。

肺炎既往症の牛の導入であることが、動物実験実験計画書の記載と異なっていたことが問題となりました。

当初は学長指示による予備調査委員会で研究不正に当たるかどうかを検討しましたが、研究不正ではないと判断され、鹿児島大学における動物実験に関する規則違反として処理されました。実験も中止されています。

大学の公表前から読売新聞が積極的に記事を書いていましたが、鹿児島県が⾁⽤⽜飼育数全国2位の畜産県であり、大学で行われる研究で病原体の取扱いがずさんであったことが畜産業に不安を与えるのではないかといったことが問題意識としてあるようでした。

おそらく報道もプレッシャーとなり公表に至ったのではないかと感じますが、1月に大学による記者会見があり、さらに8月7日に、動物実験の機関管理体制を検証し再発防止策を講じたことが公表されしました。

関係者の処分等は、まだこれから検討予定とされています。

大学からの2回の公表事項

公表に書かれず、無視されている牛の死…

大学が再発防止検討のためのワーキンググループを設置するなど、実験動物のことなのに比較的重大に受け止められているなと感じる向きもあるかもしれないですが、実際には死亡した牛のことが全く触れられておらず、ネガティブ情報を隠したいアカデミアの体質を感じます。

鹿児島大学 産業動物内科学分野からの報告によれば、令和3年度(2021年度)、問題の実験で牛1頭が大学搬入後に死亡していることが、はっきりと報告されています。死因は書かれていませんが、もし症状が出ている牛を連れてきていた中から死亡牛が出ていのであれば、さらに問題があるのではないでしょうか。

8月7日公表の大学からの報告では、熱のある牛に治療を行うなどしていたから動物愛護法や実験動物の飼養保管基準には違反していないと大学側が判断したことが書かれています。しかし、そもそも動物愛護法違反までを疑って検討したのであれば、牛の状態は重篤だったのではないかと想像します。

そして、死亡した牛がいたことを隠しながらこのように書かれても、この結論が正しいかどうか判断することはできません。

質問に対しては大学は回答拒絶! 情報公開も墨塗り多し

この問題に限らず、鹿児島大学の動物実験の公表について疑問に感じた点なども含め、23点の質問事項を大学に送りましたが、回答は拒絶でした。(詳細は別途投稿します)

情報公開請求するよう書かれていたので開示請求しましたが、この問題に関することはほぼほぼ墨塗り! 何ページも真っ黒なページが続いています。

牛は元の牧場に戻されたのか?

ちなみに、当会は、過去に鹿児島大学に情報公開請求をして実験計画書を入手したことがあり、当該研究者の10年以上前の実験計画書も持っています。今回の実験に繋がるような当時の実験では、安楽死は「なし」になっており、理由は「学外の牛飼養牧場飼養牛であるため」「学外の牛飼養牧場に無償譲渡するため」等となっています。

つまり、問題の実験のために外部から連れてきた牛についても、殺処分はせず、元の農場に戻すか、別の飼育場に譲渡された可能性がありますが、開示請求したところ、なんと当該研究者の実験計画書は大幅に墨塗りとなっていました。前は開示されているのに!

検証させまいとする大学側の強い意図を感じます。

不適切だと指摘されて問題になったのは令和3年(2021年)の実験でしたが、バイオセーフティレベルを意識していなかった状況は、かなり昔から続いていたのではないかと思われます。

当該教員が行う実習のための動物

また当時は、当該研究者が行う実習のために「継続的に実習に使うため殺処分しない」とされている牛が飼われていました。牛が飼える実験施設は1カ所、3頭までで、牛を入れ替えて実験していましたが、現在は当該研究者が管理者となっている施設では馬2頭のみの施設があるだけです。

当該研究者が行う実習も、以前は牛と馬が使われていましたが、現在は馬のみ使用です。

ただし、ほかの研究者が管理者となっている施設では、牛5頭を飼育できる施設があり、また、鹿児島大学には黒毛和牛200頭規模の入来牧場があるので、牛をまったく飼っていないということではありません。

動物実験委員会側の問題はなかったのか

鹿児島大学の動物実験計画書の承認審査は、全学から集まった動物実験委員会委員によるメール審査でした。今回問題になりましたが、共同獣医学部の特定の施設がBSL2であるかどうかを、果たして全学の動物実験委員会が見抜けるかという疑問も感じました。各委員が所属以外の施設について詳しいとは思えません。

そもそも過去の記録では、動物実験員会の委員で実験計画書の実験内容に関わる問題を指摘する人は、いつも、ほぼ特定の一人だけと言っていいような状況でした。ほかの委員はほぼいないも同じという状況は改善されているのでしょうか。

8月に公表された報告では、動物実験委員会について、このように書かれています。

(3) 部局内で対応が留まっていた要因
・本事案が全学動物実験委員会への報告対象に該当するかどうかの判断基準が曖昧でした。
・動物実験が「機関管理体制」であるという認識が十分ではなく、個々の研究者 や部局の裁量に依存していました。
・全学動物実験委員会においても、動物実験終了後に実験責任者から提出される 動物実験報告書による報告を受けるに留まっており、能動的な状況把握や指導 体制が十分ではありませんでした。
・共同獣医学部の特殊性として、学内規定に基づく管理と「AAALAC 認証制度」に 基づく管理が並立しており、二重管理体制となっていました。
おそらくこうした状況は全国の大学で同様ではないでしょうか。

問題になった動物実験だけが不適切なのかどうかは、闇の中です。

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