鹿児島大学共同獣医学部の不適切な動物実験について、何回かに分けて投稿します。第一弾は、概要編として、基本的な情報やリンクをまとめました。鹿児島大学で不適切な動物実験!今年1月、鹿児島大学共同獣医学部で行われた不適切な動物実験につ[…]
鹿児島大学共同獣医学部の不適切な動物実験 関連情報
時系列まとめ
鹿児島大学共同獣医学部では、令和3年度(2021年度)から行われていた牛を用いる実験について、翌年「病気の牛を施設に入れているのではないか」といった指摘があったが、そのときの対応等が全学動物実験委員会に報告されていませんでした。
令和7年(2025年)2月に、さらに動物実験の適切性に関する告発があり、学長の指示による予備調査委員会において調査した結果、大学が承認した動物実験計画書と異なる実験が実施されていたことが認定されました。
令和7年(2025年)5月、大学として当該動物実験の中止措置を講じています。
同年12月から報道がなされ、翌令和8年(2025年)冒頭に大学が公表を行いました。これにより問題が広く知られるようになりました。
詳細な時系列は以下のようになっています。大学が公表した表をもとに、報道や記者会見などを追記して再構成しました。
| 令和 3 年(2021年) 5 月 | 令和 3 年 5 月 動物実験計画書①を動物実験委員会(以下「全学動物実験委員会」という。)で審査のうえ、学長が承認(令和 3 年 5 月11 日付け)。 |
| 令和 3 年(2021年) 7 月 | 実験開始。 令和 3 年度:7 月 8 日~10 月 27 日 令和 4 年度:7 月 30 日~11 月 8 日 |
| 令和 4 年 (2022年)11 月 | 共同獣医学部動物実験委員会に「健康動物のみ搬入を認められている施設に、呼吸器疾患に罹患している牛を導入しているのではないか」との指摘。共同獣医学部において、実験責任者に実態聴取。 呼吸器疾患に罹患していないが、搬入 1 ヶ月前に肺炎治療を完了し、搬入時には症状を呈していない牛を使用していることが判明したので、「肺炎既往歴の牛を使用する」ことを動物実験計画書に記載するよう実験責任者に依頼。 |
| 令和 5 年(2023年) 3 月 | 対象動物を「臨床的な健常牛とともに、肺炎罹患後、臨床的に回復している牛」と記載した動物実験計画書②を新規申請。 |
| 令和 5 年(2023年) 5 月 | 上記動物実験計画書②を全学動物実験委員会で審査のうえ、学長が承認(令和 5 年 5 月 31 日付け)。 |
| 令和 5 年 (2023年)7 月 | 実験開始。 令和 5 年度:7 月 22 日~8 月 29 日 令和 6 年度:10 月 3 日~10 月 27 日 |
| 令和 7 年 (2025年)2 月 | 動物実験の適切性に関する懸念(病原体取扱施設の適正性、動物実験計画書①②に記載のない肺炎の動物で実験を実施)について告発を受理。 |
| 令和 7 年(2025年) 5 月 | 大学が承認した動物実験計画書①②と異なる実験が実施されていた(実験実施場所が適切ではなかった、肺炎症状の疑いがある牛を使用していた)と大学として判断し、実験中止(令和 7 年 5 月 15 日付け)。 ※後日の聴き取りでは、肺炎が疑われる症状があった場合は、抗生剤を投与し、改善後に実施したこと、臨床的には肺炎と診断できるレベルではなかったことを確認。 |
| 令和7年(2025年)5月~7月 | 共同獣医学部における検討。 |
| 令和7年(2025年)7月10日 | 共同獣医学部長から、学長あてに報告。 |
| 令和7年(2025年)7月~9月 | 全学動物実験委員会委員による検討(外部有識者との意見交換含む)。 |
| 令和7年(2025年)10月17日 | 全学動物実験委員会(令和7年度第2回)開催。 動物実験に関する再発防止策検討ワーキンググループ(以下「再発防止検討 WG」という。)の設置及び動物実験の自己点検票の改定を承認。 |
| 令和7年(2025年)11月25日 | 全学動物実験委員会(令和7年度第3回)開催。 外部有識者2名出席の上本事案が動物の愛護及び管理に関する法律に違反しないか審議。 |
| 令和7年(2025年)12月19日 | 上記審議における委員からの意見を受けて、実験責任者へ事実関係の確認を依頼。(12月25日回答) |
| 令和7年(2025年)12月28日 | 読売新聞報道 「鹿児島大学が不適切な動物実験、感染症の安全基準を満たしていない施設で肺炎に感染した牛を使う…経緯を調査」 「鹿児島大学で不適切な動物実験、県内の肉用牛飼育数は全国2位…専門家『感染を広げないよう細心の注意を』」 |
| 令和7年(2025年)12月29日 | 読売新聞報道 「肺炎の牛で不適切実験、鹿児島大学・共同獣医学部に問題点を指摘する情報提供あったが…本部は把握せず」 |
| 令和8年(2026年)1月5日 | 鹿児島県知事 年頭知事記者会見で記者が質問 |
| 令和8年(2026年)1月7日~2月17日 | 全学動物実験委員会(令和7年度第4回、メール審議)開催。 実験責任者からの回答を踏まえて、本事案が動物の愛護及び管理に関する法律に違反しないかを審議。 委員からの意見により2月10日に全学動物実験委員会委員による実験責任者へのヒアリング結果も踏まえて、同法律に抵触する行為はなかったと判断。 |
| 令和8年(2026年)1月9日 | 「共同獣医学部における動物実験に係る不適切な取扱事案について」を公表。午後、記者会見。 読売新聞報道 ⽂部科学省 松本洋平⽂部科学⼤⾂記者会⾒で記者が質問 |
| 令和8年(2026年)1月10日 | 読売新聞報道 「『管理体制見直し図る』副学長ら執行部会見 鹿大の不適切動物実験」 「鹿児島大学で肺炎の牛を使った不適切実験、畜産関係者『万が一感染させたらどうなるか』憤る」他社報道もあり |
| 令和8年(2026年)1月12日 | 鹿児島テレビ報道 「鹿児島大学共同獣医学部で不適切な実験 安全基準を満たさない施設で肺炎に感染した牛を扱う 大学会見『病原体拡散は確認されず』」 |
| 令和8年(2026年)1月26日 | 再発防止策検討WG(第1回)開催。検証及び再発防止策について検討。 |
| 令和8年(2026年)2月17日 | 再発防止策検討WG(第2回)開催。 検証及び再発防止策について検討。 |
| 令和8年(2026年)2月26日 | 全学動物実験委員会(令和7年度第5回)開催。外部有識者2名出席の上、検証結果及び再発防止策とりまとめ。 |
| 令和 8 年(2026年) 8月 7日 | 「動物実験に係る不適切な取扱事案に関する機関管理体制の検証結果について(報告)」の公表 日本経済新聞報道 |
| 令和 8 年(2026年) 8月 8日 | 読売新聞報道 「肺炎に感染した牛で不適切実験、鹿児島大学『安全性への認識不足、情報共有が不十分だった』…検証結果公表」 |
検出された病原体
・Mycoplasma bovis(マイコプラズマ・ボビス)
・Pasteurella multocida(パスツレラ・ムルトシダ)
牛呼吸器病症候群(BRDC)の主原因となる重要な病原細菌だが、家畜伝染病予防法における法定伝染病等に指定されているわけではない。
どこから研究費を得ていたか
鹿児島読売テレビの報道によれば、問題の実験は、日本中央競馬会(JRA)から6年間で約1億円の助成を受けて行われている事業の一環として行われており、大学はJRAや関係省庁にも今回の事案を報告したとのこと。
事業実施 期間(年度)
「薬剤耐性(AMR)に配慮した牛肺炎に対する抗菌薬療法確立事業」H30~R2(2018~2020)
「肺炎罹患部位における抗菌薬濃度解明事業」R3~R5(2021~2023)
JRA 事業評価報告書(各年度版)より助成実績額を抜粋
「薬剤耐性(AMR)に配慮した牛肺炎に対する抗菌薬療法確立事業」への助成額
3年間で1700万円で自己評価はA
「肺炎罹患部位における抗菌薬濃度解明事業」への助成額
3年間で約5000万円(正確には下記表のとおり)で自己評価はA
| 年度 | 助成実績額(円) | 備考 |
| 令和3年度(2021年度) | 17,000,000 | |
| 令和4年度(2022年度) | 16,495,000 | |
| 令和5年度(2023年度) | 16,197,000 | 3年間合計額より計算 |
| 計 | 49,692 ,000 |
42.肺炎罹患部位における抗菌薬濃度解明事業
https://jra.jp/company/social/animal-life/livestock-promotion-project/pdf/chi_r03.pdf
研究結果
少なくとも以下の場所で研究結果が報告されています。
令和 3 年度肺炎罹患部位における抗菌薬濃度解明事業における調査結果
令和 4 年度肺炎罹患部位における抗菌薬濃度解明事業における調査結果
令和 5 年度肺炎罹患部位における抗菌薬濃度解明事業における調査結果
https://k2088185.wixsite.com/kagoshima-university
記者会見
鹿児島県知事と文部科学大臣の会見で、この問題について質問が出ています。
鹿児島県知事 年頭知事記者会見(令和8年1月5日)より抜粋
(記者)
昨年末,鹿児島大共同獣医学部で牛の肺炎に関する不適切な実験が学内で行われていたことが分かりました。
実験が行われていた郡元キャンパスは市街地にも程近く,県は和牛日本一をうたってPRされている中で,畜産県鹿児島のお膝元で起こった今回の事態に対して,知事の受け止めをお伺いできればと思います。
(知事)
その和牛の肺炎の不適切な実験というのはちょっと私あまりよく認識しておりませんでしたので,確認をしたいと思いますが,やはり畜産県でありますから,やはりそういったいろんな取組ということについては,コンプライアンスというのは大変重要だと思いますので,どういった肺炎の不適正な中身とか,そういったことについてはまた確認して考えたいと思います。
(記者)
確認された後に,例えば大学に対して何か要請をされたりとかというのは,今後の検討になられますか。
(知事)
それは中身とか,あるいは法令上の,国なのか,県がどのような形でそれに関われるのか,そういったことも含めてしっかり検討したいと思います。
⽂部科学省 松本洋平⽂部科学⼤⾂記者会⾒録(令和8年1⽉9⽇)より抜粋
鹿児島大学で行われていた不適切な動物実験に関してお伺いをします。大学が承認し た動物実験が計画と異なって肺炎の牛を使った実験が行われていたということが明らかに なりました。実験の信頼性というものが疑われることになった、あるいはなって畜産など医 療面を支える人材を育成する大学でこうしたことが起きたということについて大臣の御所感をお伺いします。また今後、文部科学省として対応をお考えでしたら大臣のお考えにつ いても合わせてお伺いします。
鹿児島大学におきまして、大学として承認した計画と異なる動物実験が実施をされ、当 該実験は学長の指示により昨年5月に中止をされたというふうに承知をしております。文部科学省として、承認した計画と異なる実験が行われたということは大変遺憾に思っている ところであります。文部科学省告示の「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本方針」(注)を遵守すること、また大学における動物実験の管理体制を検証し、再発防 止策を講じること、これを昨年の7月に我々のほうから指導をいたしているところでもありま して、現在、大学側で当時の実験管理体制の検証が行われているというふうに承知をして おります。鹿児島大学が国民の理解や信頼を得ながら適切に研究を進められるよう、今 後も必要に応じて我々として指導助言を行ってまいりたいと存じます。
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