イルカ長距離輸送のはじまり―閉館する「京急油壺マリンパーク」の歴史を知ってください

今年5月8日、#EmptyTheTanks #水槽を空にせよ アクションに合わせ、京急油壺マリンパークの写真とともに「老朽化した施設は、むしろ展示業から撤退を」とツイートした。あまりに「昭和」な水族館で、旧態依然であることを伝えたかったからだ。

しかし、その4日後の5月12日、なんと同館を運営する株式会社京急油壺マリンパークが、9月30日をもって閉館することを公表した。

このタイミングには驚いた。廃業の要望書を出したいと考えていた矢先だった。

閉館を前に、改めて現地を訪れたスタッフからのレポートをぜひ読んでほしい。

日本でのイルカの長距離輸送は、この水族館から始まった。そして今、その施設が、歴史の幕を閉じようとしている。

水族館のイルカ購入の歴史も、そろそろ幕を閉じるべきではないだろうか。

イルカ長距離輸送のはじまり「京急油壺マリンパーク」閉館

老朽化した水族館がまた閉館する。関東以北で初めて太地イルカ追い込み猟からイルカを購入した、京急油壺マリンパークだ。

イルカビジネスを加速させた太地からの長距離輸送

神奈川県三浦市にある油壺マリンパークは1968(昭和43)年の京急電鉄創立70周年記念事業として開業された。創立80周年事業では、イルカショーの屋内シアター「ファンタジアム」を開設。いまから42年前、この京急電鉄記念事業のために、油壺マリンパークは太地のイルカトレーニングセンターにイルカのトレーニングを依頼し、購入したのである。

当時、関東以北の水族館は静岡県富戸、川奈、安良里などで捕獲されたイルカを購入しており、和歌山県太地町からイルカを購入するのは関西から西の水族館が主だった。新しいことをやってみたい、既存の水族館とは違うことをやりたい、そんな理由から、近くの静岡ではなく、わざわざ遠くの和歌山県太地からイルカを購入したのだった。

トレーニングや輸送中にイルカが3割から4割死んでしまうことを前提として、イルカは発注よりも多めに用意された。長距離輸送中にイルカ20頭が3割死んで、12〜13頭が残る計算だった。しかし思いがけず全頭生き残って運ばれたため水族館側は喜んだものの、準備されていた仮施設には多すぎる頭数だった。

油壺マリンパークが太地町からの長距離輸送を成功させたことをきっかけに、石川県のとじま臨海公園水族館、青森県浅虫水族館をはじめとする全国の水族館が次々と太地町からイルカを買うようになってしまった。

「フィン」と「ジョイ」初めて太地から関東の水族館に買われて42年

屋内大海洋劇場ファンタジアムのオープン当時から40年以上いる、とイルカショーで紹介されたハンドウイルカ「フィン」と「ジョイ」。彼らは42年前に関東以北で太地イルカ追い込み猟から初めて長距離移動を耐え、購入されたイルカたちということになる。

大海洋劇場と銘打ってはいるが、ショープールの大きさは15×25メートル、深さ4.5メートルしかない。その横に3つある小さなプール(ホールディングプール)はそれぞれ7×7メートル、深さは3.5メートルで、イルカたちはショーの時間以外はこの小さなプールにいるというのだ。インドアが売りの施設は薄暗く、イルカたちが自然光を目にするのはプールの上にある小さな天窓からしかない。

日本初の屋内ショープール施設だった「ファンタジアム」も、今は古さが目立つ

1日に65〜100キロを移動し、100メートル以上深く潜ることができるイルカたちが、42年間も天窓からの光しかない狭い室内プールに閉じ込められたまま、ボールを運んだりジャンプするショーに利用され続けてしまった。油壺マリンパークには全部で6頭※注のハンドウイルカがいるが、すべて太地から購入されたイルカたちだ。

アシカに竹刀を振り下ろす⁉︎ 虐待ともいえる演出

イルカ・アシカショーのステージは、武将コスプレのペンギンの着ぐるみによる三文戦国芝居で始まり、「ものども!」という掛け声にあわせて、イルカたちはジャンプしたり、鳴き声をあげたりする。トレーナーの合図にあわせてアシカはオルガンで「水戸黄門」のテーマを奏でる。ここはいつから時間が止まっているのか…。旧態依然とした昭和な演出に虚しさが増すばかりだった。

アシカに竹刀を振り下ろす殺陣の演技や、ヒレで竹刀を受け止めさせる白刃取りの演技、これを虐待とだれも思わなかったのだろうか。生き物めがけて武具を振り下ろす行為は、飼育する立場にある人間が絶対やってはならないはずだ。この教育に反する行為が批判されることなく上演されてしまったのは驚きだ。


プラスチックのオケのカワウソ、大きなコブのあるサメ、狭すぎる飼育施設

狭すぎるのはイルカのプールだけではない。カワウソのコンクリートの小さく狭い飼育設備には絶句し、思わず「監獄?」と叫んでしまった。何十キロの広い行動範囲を持ち、なわばり意識が強く、泳ぎの得意なカワウソがプラスチックのオケしか与えられいない。それでも観客は可愛いという。カワウソを閉じ込めるのは水族館であり、それを疑問に思わない観客でもある。

注:施設右につながっているプールには行けなくなっている。

魚がぐるぐると泳ぐ円形の回遊水槽はこの水族館の売りのひとつだが、やはり魚たちには狭すぎた。オオメジロザメの鼻先には大きな腫瘍のようなコブができていた。カメラなどの刺激に驚いて何度もぶつけているうちに大きくなったのだという。だが、その痛々しい姿に同情的な声は観客からは聞こえてこなかった。気づいてもいなかったのだろうか。サメのでき物はレザーで切り取って他の施設に移動するとのことだった。

国内初、国内唯一、水族館が集客のために売りとしてきた設備は生きものにとって不十分でしかなく、自然ではない姿を見せていた。イルカやペンギンや、他の生き物たちがよりよい設備のあるところに移動できることを望むばかりだ。だが、42年間も同じプールにいるイルカたちの環境が急変するのも不安だ。人間の楽しみのために閉じ込めれられた動物たちは、生涯人間の都合に振り回され続けてしまう。

太地から初のイルカ長距離輸送の戦犯「京急油壺マリンパーク」は今年、2021年9月末日をもって閉館する。

乱獲やサーカスへの生体販売により絶滅したニホンアシカのパネル。
現在、同じことをイルカにも行っているのだが。

※イルカの頭数について

8月下旬、館内のパネルには以下の8頭が掲載されていた。9月中の電話での問い合わせでは7頭とのことだったが、閉館最終日である9月30日に従業員が6頭と答えているため、記事中の数字は6頭に修正した。

ラフ♀
バニラ♀
レンコン♀
カボチャ♀
クリ♀
ネギ♀

フィン♂
ジョイ♂

参考

その他の写真は、こちらのページをご覧ください。

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