2月14日、文部科学省が「薬学系人材養成の在り方に関する検討会(第5回)・薬学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に関する専門研究委員会(第6回)合同会議」を開催し、新しい薬学教育モデル・コア・カリキュラムのパブリックコメント結果について公表しました。
昨年、文部科学省が、このモデル・コア・カリキュラムの改訂を行うとして検討を行い、12月1日から31日まで改訂案のパブリックコメントが行われていました。
残念ながら現在でも薬学系の教育課程において動物の生体を用いる実習が行われていますが、これに根拠を与えるような記述がパブリックコメント案の中に入っていました。
「D–1 薬物の作用と生体の変化」のセクションのなかの「D–1–1 薬の作用のメカニズム」の部分で、学修目標として「動物実験の実施に際してその必要性を理解し、倫理的配慮を行う。」と明示されていたのです。
これは非常に残念なことです。安全性にしろ薬効にしろ、本来は動物ではないヒトベースの科学で評価を行うべきであり、実際に、動物から離れようとする傾向は医薬品開発においても年々強まっています。
せっかくコア・カリキュラムが改訂されるのに、そういった動向を教えないのだろうか?と不安になりました。
またそもそも実習は、結果のわかっていることを実体験させるためだけに、毎年毎年同じことを繰り返し学生に行わせるものです。わざわざ動物を犠牲にする必要はなく、シミュレーションソフトなどでも学ぶことができます。
これらのことから、PEACEでは、該当部分について修正意見を送りました。
それ以外の働きかけは特にできなかったので心配していましたが、2月14日に公表された修正後のバージョンでは、無事、「(代替法を含む)」が追記されました!
やはり、動物実験を代替していく流れにあることは理解されているのだと感じます。
パブコメ結果と修正版
- 合同会議 資料1 薬学教育モデル・コア・カリキュラム(案)概要
- 合同会議 参考資料5 薬学教育モデル・コア・カリキュラム(案)※パブリック・コメント後の修正(見え消し)
- 最終確定版:薬学教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度改訂版
今回、薬剤師の方で、生きた動物を使う実習に傷ついて退学した学生さんが実際にいることを書いて送ってくださった方もいます。
薬剤師は命を預かるお仕事です。その育成において、生命尊重の教育がなされることを願っています。
薬学部新設は2025年以降、認可申請が認められない
ちなみに、2025年以降、例外を除き6年制薬学部の新設と定員増を不可とすることも決まっています。薬学部が急増していることによって動物実験を行う学部も増えていると感じてきましたが、これで一定の歯止めがかかることになりそうです。
文部科学省は25日、2025年度から6年制薬学部の新設や定員増を抑制する方針を盛り込んだ大学等の設置認可基準を改正する告…
新設薬大の研究生産性が低いという調査結果
薬学部については、2019年、興味深い研究結果が公表されています。2003年以降に薬学部を新設した私立薬系大学の研究生産性は、02年までに設立された旧私立薬系大学に比べて低いという調査結果です。新設私立大の講師以上の教員1人当たりの論文数は、2017年度、旧私立大の半分程度だったとのこと。(第58回日本薬学会・日本薬剤師会・日本病院薬剤師会 中国四国支部学術大会 (2019) での発表)
研究を行った岸本泰司氏(徳島文理大学香川薬学部生命物理化学教授)は、「6年制薬学教育の導入と新設薬学部の増加は、当初から指摘されていた基礎研究力の低下を実際に招きつつある可能性がある」と警鐘を鳴らしていると報道されていました。
「新設私立大において05年から有意に研究生産性が低下しており、これが全体の停滞傾向に寄与していることが考えられる」とも言っているそうですが、果たして無理をして研究する必要があるのでしょうか。
研究生産性を上げようとするのではなく、教育に特化しするか、大学数を減らすべきではないでしょうか。無駄に動物が犠牲になっているように思えてなりません。