【書籍紹介】『生命科学クライシス―新薬開発の危ない現場』

『生命科学クライシス―新薬開発の危ない現場』

リチャード・ハリス著  寺町朋子訳 白揚社
ISBN-10 ‏ : ‎ 4826902093
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4826902090

「これまでに発表された論文のなかで、間違っているものがあまりにも多すぎる。」
「無駄 な努力のために医学は停滞している。」

日本のマスコミ報道に日々晒されていると、生命科学は目覚ましく発展しているかのように思い込まされてしまいますが、この本は、そういった作られたイメージをことごとく打ち砕く本です。

追試を行った論文53件のうち再現できたのは 6 件だけという、製薬企業「アムジェン」 による衝撃的な公表を皮切りに、ライフサイエンス論文の再現性の低さはどこからくるの かを探っていく、近年の知見の集大成的な本ですが、そもそも動物実験は信用できるのか?というところにも踏み込んでいる点で注目しました。

脳卒中、鎮痛剤、敗血症、ALS治療 薬などの分野で研究が行き詰っている理由に、動物モデルの「怪しさ」(科学的妥当性の問 題)が挙げられています。 また研究者が持っているバイアス(偏向)についても指摘されており、実験を盲検にする ことが科学性を高める一つの手段として挙げられていますが、日本の動物実験で盲検にな っているものがどれだけあるのだろう?と思うと、もしかして壊滅的なのではないだろうか…と思ってしまいました。

そもそも研究不正(捏造・改ざん・盗用)が多いことも不信感をもたらしますが、都合の よいデータだけ取り上げて論文を書く「チェリーピッキング」や、有意差が出るように統計 分析を操作する「P値ハッキング」なども、一般社会の感覚では詐欺的な行為にあたるので はないかと感じます。 著者はそれでもなお、改善に希望を持っているようですが、科学的に誠実と言える生命科 学研究はどれほどあるのだろうか、果たして本当に改善されていくのだろうか(特に日本 で?)と思わざるを得ませんでした。「科学の成果・進歩」を信じている多くの人に読んで ほしい本です。

この紹介は、NPO法人市民科学研究室「私のおすすめ3作品 2019年」に寄稿した内容です。PEACEで動物実験についてお話しするとき、例に出す動物実験の問題点と重なる内容が多く、おすすめの一冊です。
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