繰り返されるエミューの逸走と死亡。動物園でも! 安易に飼わせる口車に乗らないで

今年4月、新潟県上越市で、個人が飼育するエミューが逃げ出し、2日後に捕獲されるも、直後に死亡しました。飼い主も「気が弱い動物なんで、びっくりさせると死んでしまう、ストレスで」と言っていましたが、実際にエミューは飼育者が逸走させた後の死亡が続いています。
去年10月には、高知県立のいち動物公園で起きていました。ショック死だと明言されています。
そして今月は愛媛県立とべ動物園で、エミューが柵を壊し脱走。やはり捕獲後にショックで死んでしまいました。テレビ愛媛の報道では、「遠足多く何かに驚いたか」と報じられていました(「とべ動物園でエミューが柵壊し脱走 捕獲後にショックで死ぬ 遠足多く何かに驚いたか【愛媛】」5月17日)
当時、エミューの飼育スペースには遠足の高校生らがいて、普段と違う状況だったそうです。脱走の原因は何かに驚いたため。激突で壊れてしまう柵もいかがなものかと思いますが、動物園は遠足の集団がいると本当にうるさい場所で、動物を飼育することと遠足の集団を受け入れることはそもそも両立しないと以前から感じています。

エミューを逃がしすぎ!

エミューはダチョウに次いで体の大きな鳥ですが、このサイズの動物でこんなに飼い主が逸走させている動物がほかにいるだろうか?と思ってしまうほど、よく逸走が起きています。日本でのエミュー脱走事件を一覧にまとめている方がいるので、その記事を参考にリスト化してみました。上記の動物園内での逸走以外にも、こんなにあります。
(参考:哥基犬互联网络集団有限公司「日本におけるエミュー脱走事件一覧」)
脱走期間 逸走させた数 経緯・結果
場所 飼育者
2015年11月中旬~25日 3羽 25日に最後の1頭を捕獲 群馬県高崎市 個人飼育
2015年12月2日 1羽 死亡(ショック死) 群馬県高崎市 上記の飼い主がテーマパーク「赤城クローネンベルク」へ譲渡(移送のためトラックに乗せる際に脱走)
2018年5月22日~1か月 1羽 捜索打ち切り
(行方不明)
岡山県瀬戸内市 宿泊施設「岡山いこいの村」
2018年6月27日~7月7日 2羽 6月29日にメスを捕獲したが死亡(衰弱か)
7月7日にオス捕獲
佐賀県神埼市 個人飼育
2018年7月12日~29日 1羽 捕獲 岐阜県美濃加茂市 個人飼育
2021年9月17日~18日 1羽 捕獲 佐賀県基山町 エコシステム株式会社
2021年10月7日~10日 23羽 捕獲が進み、10日に捕獲した最後の3頭のうち2頭が死亡(1頭はケガによる) 熊本県菊池市 熊本県菊池エミュー観光牧場
2022年3月24日~? 6羽 24日1頭が死亡(車と衝突)
25日4頭が捕獲されたが残り1頭は不明
北海道白老町 牧場(食用)
2022年8月21日? 1羽 見かけた人がX投稿
飼い主が連れて帰った?
広島県福山市 不明
2024年2月7日~17日 1羽 飼い主が発見 福岡市油山 個人飼育
2024年4月28日~30日 1羽 捕獲後死亡(ショック死) 新潟県上越市 個人飼育
どう考えても多すぎで、死亡も目立ちます。
背景には、安易な感覚で始める飼育が広がっていることがあるのではないでしょうか。今年上越市でエミューを逸走させた飼育者の設備も、お世辞にもよいものには見えませんでした。林の中の簡易な囲いを網で覆っているような感じで、あれなら脱走するだろうし、飼育自体がストレスになっているだろうと思わざるを得ません。
エミューはオーストラリアに生息する走鳥類で、臆病だけれども、平原を爆走で逃げることができる鳥です。パワーもあります。
動物園まで非常に狭いところで飼っているので勘違いも広がるのかもしれないですが、広い土地を用意しようとしない日本の感覚で飼う鳥ではないでしょう。

エミューを飼うのに「30平米の庭があればいい」?!

そもそも、なぜエミューなど飼育するのでしょうか。どうも飼育を煽っている人々がいると思わざるを得ません。

去年8月、「CREA」のサイトに、「走り回る30平米の庭があればいい」とタイトルに掲げる、エミューについての恐ろしい記事が出ました。30平米って、例えば3メートル×10メートルです。たった10メートルしか移動できない。そんなところに閉じ込められるエミューのことを思うと胸がつぶれる思いです。

CREA

大型犬とエミューと暮らす会社員のB子さん。なぜエミューを飼おうと思ったのでしょうか。エミュー愛についてもたっぷりとお聞き…

記事を読むと、いわゆる生物系YouTuberが悪影響を与え、安易に飼えるというメッセージを発していることがわかります。

しかも、飼うときに相談したのは、畜産業者。たった30平方メートルのスペースでよいとアドバイスしたのは、産業目的でエミューを飼う業者でした。要するに、養鶏業者に鶏の飼い方を聞いて、バタリーケージで飼うようアドバイスをもらったようなものです。

メディアは、なぜこういった安易で虐待的な飼育を、すぐ煽るのでしょうか。株式会社文藝春秋の「CREA」の意見先に、メールをしました。オーストラリアの水準でもいいとは思いませんが、日本人とは一ケタ感覚が違います。

「『走り回る30平米の庭があればいい』 エミューとシェパード2頭との愛しい日々【写真多数】」との記事を拝見しました。

タイトルに「走り回る30平米の庭があればいい」とありますが、あまりに酷いタイトルで愕然としました。
記者の方は、たった30平米でエミューが走り回れているように感じたのでしょうか?
時速50キロメートルで走ることができる鳥を30平米に囲ってよいと感じるのですか。
これを読んで勘違いしてエミューを飼い始める人が出てきたら悲劇だと思い、メールいたしました。
動物に苦痛を与える問題のある飼育を推奨するような記事を出さないでいただきたいです。

そもそも野生にいるべき鳥を飼育すること自体間違っていますが、飼う場合は広い土地が必要です。
エミューはオーストラリアの鳥ですが、例えばオーストラリアのノーザンテリトリーで
ペットとしてエミューを飼うには、1羽あたり面積が625平米未満であってはならないとされています。
https://nt.gov.au/environment/animals/keeping-wildlife-as-pets/keeping-emus-as-pets

たとえ産業のために飼う場合であっても(通常ペットより緩い基準になってしまいますが)、
例えば繁殖ペアなら最小 400 平米、乾燥地帯であれば2500平米、
一緒に育っていない群れを一緒にする場合1ヘクタール(1万平米)に24羽まで(1羽あたり約417平米)、乾燥地帯で18羽まで(1羽あたり約556平米)と出版されている飼育基準にあります。
https://www.publish.csiro.au/book/5390

野生での様子を見れば、日本でペットで飼える鳥でないことは明らかです。

記事にするには面白可笑しく、話題性があると感じられたのかもしれませんが、
そのような一時の慰みのために動物たちは生涯苦しむことになります。
動物を苦しめて平気な人たちの言うことを安易に信じず、調べるようにしていただきたいです。
記事は取り下げていただきたいですが、それが無理ならせめてタイトルは差し替えていただきたいです。
よろしくお願いいたします。

記事は今でも残っていますし、タイトルも変わりません。マスメディアの無責任さは相変わらずです。どうかこのような記事に惑わされてエミューを飼うことだけは止めてください。
写真は動物園で網を破壊中のエミュー。時速50kmで走ることができると掲示に書かれていたが、とても狭いところに閉じ込められている。ここで走れますか?(智光山公園こども動物園 2024年5月)

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