皆さん、この動画を見て、どうお感じになりますか。かわいいですか。ギョッとしますか。
生息地破壊だけではなく密猟・密輸によって数を減らしていると言われている野生スローロリスの置かれている状況や、スローロリスが霊長類であること、飼育に適さないことなどを知っている人は、ギョッとするのではないでしょうか。また撮影そのものも動物の負荷になりますし、何よりCMの発しているメッセージが、不適切な擬人化によって安易なエキゾチックアニマルの利用を是認・助長してしまっています。
スローロリスさんもヘルシースナッキング中。
みなさんは、「おいしくモグモグたべるチョコ」でぜひ♪#ヘルシースナッキング pic.twitter.com/KcOldOjxS9— 森永製菓 (@morinaga_angel) 2018年2月27日
スローロリスは全種、2007年にワシントン条約(CITES)付属書Iに格上げされた、絶滅の恐れのある動物です。しかも、生息地の破壊といった要因だけではなく、ペット用の捕獲も数を減らしてきた原因の一つと言われています。密猟・密輸の問題が長年指摘されてきました。
そもそも野生動物自体、生態にかなった飼育ができないという点でもペットにするのは問題ですが、スローロリスは咬まれると独特な強い痛みを生じるため、牙を抜くといった処置までなされるなどの問題もあります。CITES付属書Iといえばパンダやチンパンジーと同じレベルで取引が規制される希少種ですが、今でもペットとしての販売や貧しい飼育設備での飼育が行われています。
このCMのために一体どこの業者のスローロリスを使ったのだろう?と思い問い合わせましたが、森永製菓からは、種の保存法に基づいて登録票を取得している合法な個体であり、繁殖個体だとの回答しか得られませんでした。ただし、登録票があることから、商業利用目的で扱う業者の所有であることだけはわかります。(当たり前のことではありますが、動物園ではない)
しかし現実問題、登録票の個体と撮影に使った個体が本当に同一であると立証することはできません。たとえ登録票に写真が添付されるようになっても厳密には無理だろうと思います。また仮に本当に繁殖個体であったとしても、血統を遡って全てクリーンということがあるとは、信じがたいです。
登録票を別の個体につけるといった密輸の抜け道が使われてきた現実がある以上、森永製菓のような大手企業であれば、商業取引されているすべての個体をグレーもしくはグレー由来の可能性ありと見て、利用を避けるのが賢明な判断のはずです。
また日ごろの飼育環境も、生態への配慮のない狭隘な設備である可能性が高いでしょう。エキゾチックアニマルの商業利用は、コレクション的な感覚でやっている業者による、使い捨てのようなものです。どこかに素晴らしい業者がいるというのなら、名称を言えばよいと思います。公開できないのは理由があることでしょう。
森永製菓のCSRのページには「環境意識の高揚および生物多様性の保全、社会貢献活動の促進」の項目があり、「森永製菓では、環境教育を通じて全社員の環境意識の高揚を図り、生物多様性の保全、社会貢献活動に努めています」との記述がありますが、このような映像を出して問題ないと考えるのであれば、CSRの中身は特に何もない空っぽと感じざるを得ません。
また、動画を見ると足が隠されており、全体の動きから足は固定されているのではないかと感じますが、森永製菓の言い分では、そういうことはしていないのだそうです。
動物に食事をさせるシーンの撮影は食べ物を与えず空腹にさせた状態で行われますが、いつもの給餌の時間に与えており、だから、じっとしているのだそうです。(これらは、あくまで森永製菓の説明です)
そもそも、見知らぬ場所に連れて行き、見知らぬ人たちに囲まれ、強い光を当てられたりする撮影自体も動物にはストレスであって、野生動物(しかも希少種)を安易に利用してよいと考える感覚は理解に苦しみます。
CMの内容も、何ら生態系保全に貢献しません。ただ、かわいい姿で商品を宣伝したいだけでしょう。密輸やペット飼育を助長し、不適切な動物の取扱をするようなCMは作るべきではないと、ぜひ森永製菓にご意見をお送りください。また、動画の削除と、今後のCM利用の中止も求めましょう。
※3/5追記:動画は削除されているようです。今後も使わないのかどうかを確認中です。⇒ご回答をいただきました。報告はこちら。
※補足:動画でスローロリスが食べていたのはチョコレートではなく、バナナなどだと聞いています。そういう意味でも、このCMには「やらせ」的な側面があります。
意見送付先
森永製菓お問い合わせ
※アクション終了につき削除しました。
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