食用として販売されているイルカ肉から、日本の規制値の265倍もの水銀が検出される

オーストラリアの非営利団体アクション・フォー・ドルフィンズ(Action for Dolphins)から、日本で販売されているイルカ肉の水銀含有値について、驚くべき公表がありました。

太地町漁業協同組合のウェブサイトから購入したゴンドウ類の肉を日本の検査機関で検査した結果、インターネットで販売されていたイルカの内臓には、日本の規制値の265倍の水銀が含まれていたとのこと。

この検査は2023年10月に実施され、3種類の肉が検査されました。最も水銀濃度が高かったのはハナゴンドウの内臓で、規制値0.4ppmの265倍にあたる106ppmでした。別のハナゴンドウの内臓からは規制値の239倍にあたる95.7ppmの水銀が検出されました。カズハゴンドウの検査結果は6.40ppmの水銀で、規制値の16倍でした。

メチル水銀の濃度も高く、一番濃度が高いものは規制値の7倍以上に達したとのことです。

厚生労働省のガイドラインは、総水銀が0.4ppm、総水銀が0.4ppm、メチル水銀が0.3ppmを超える魚介類は食用に適さないとし、この暫定規制値を超える魚介類は、漁獲を禁止するなど市場に流通しないよう努めることがを規定していますが、現実には流通しています。

水銀とメチル水銀の健康被害として広く認識されているのは、妊娠中の胎児に与える重大な影響です。子宮内でメチル水銀に暴露された子どもは、認知能力や思考能力、記憶、注意力、言語、視覚的空間能力に問題が生じる可能性があることが研究によって示されています

アクション・フォー・ドルフィンズの公表によれば、国立水俣病総合研究センター(水俣市)の水銀研究者である坂本峰至氏は、今回の検査で測定されたレベルは、特に子供たちに健康問題をもたらす可能性があると述べているとのこと。坂本氏は、このような鯨肉を常食していた場合、健康に影響が出る可能性は高いでしょう。子供たちに食べさせるのは良くないと思いますと述べています。

しかし、東京都や千葉県を含むいくつかの自治体が、小学校の給食に鯨肉を出している現実があります。

アクション・フォー・ドルフィンズのCEOであるハンナ・テイト氏は、「私たちは2020年以降、日本で複数の水銀検査を実施しており、いずれの検査結果も政府が設定した規制値を大きく上回っていましたが、今回の結果は、その中で最も高い水銀濃度になります。頻繁に食されるのであれば、この食肉は人の健康に深刻な脅威を与えるものであり、販売から排除されるべきです」と警告しています。

長い間、国内の科学者や関係団体が、イルカや他の鯨類の肉に含まれる水銀やメチル水銀の濃度が高すぎることを指摘してきました。

例えば日本ではエルザ自然保護の会が調査を行っていましたが、海外では環境NGOであるEIA(Environmental Investigation Agency)が詳しい資料を発行しています。

刑事告発でも変わらない…

アクション・フォー・ドルフィンズは、2021年8月、規制値をはるかに超える水銀濃度のイルカ肉を販売したとして、太地町漁業組合を刑事告発しました。警察の捜査の結果、検察庁に送致はされましたが、和歌山検察庁が不起訴処分としたとのことです。今年8月、アクション・フォー・ドルフィンズはこの決定を不服として検察審査会に対し申立てを行いましたが、検察審査会は不起訴処分を支持し、不可解なことに水銀ガイドラインは鯨類には適用されないと主張したとのことです。

主任弁護士である高野隆法律事務所の吉田京子弁護士は、この決定を「馬鹿げている」とし、「厚生労働省は鯨肉に含まれる水銀の危険性を認識しており、日本では妊婦に鯨肉やイルカ肉の大量摂取を避けるよう積極的に警告している」と述べています。

今回の検査結果

  • ハナゴンドウの内臓からは106ppmの水銀と7ppmのメチル水銀、
  • ハナゴンドウの内臓からは7ppmの水銀と1.9ppmのメチル水銀、
  • カズハゴンドウの肉からは40ppmの水銀と2.2ppmのメチル水銀 が検出された。

※これらの肉は、イルカ追い込み猟(鯨類追込網漁業)によって捕殺されたゴンドウ類の肉で、食用に販売されているものです。水銀に関する警告表示すらなく売られています。

▼水族館のショーで華やかに紹介されるハナゴンドウも仲間は肉になった

ハナゴンドウ ビーナ 新江ノ島水族館 えのすい イルカショー

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