押収された密輸のホウシャガメが遊園地「おもちゃ王国」の手に。展示は中止になったが…

密輸で押収されたホウシャガメを遊園地が展示?

ワシントン条約(CITES)の管理当局である経済産業省は、密輸で押収されたり、違反が発覚して税関で任意放棄されたりした生きた動物について、日本動物園水族館協会(JAZA)への寄託以外のルートがあることを、これまで認めていない。

業者やマニアへの横流しがあるようだということはずっと昔から聞くが、例えば10数年前(まだPEACEができる前)、経済産業省は正式な回答から逃げまくっていたし、現在は「JAZAに寄託のみ」の姿勢を崩していない。一時預かりを除けば、これらの動物がJAZA加盟館以外の手に渡ることはないというのが、これまでの回答だった。

そんなところへ、昨年12月、驚くべき報道があった。

岡山県玉野市にある「おもちゃの王国」が絶滅危惧種保護拠点「自然学習センター」をつくり、密輸で押収されたホウシャガメ5頭を飼育開始したと山陽新聞が報じたのだ。名前を募集しており、採用者に餌やりなどもさせるという。ホウシャガメはワシントン条約附属書Iだ。一体、どういうことなのだ?

この記事を見て、週明けにさっそく経済産業省に「やはりJAZA以外のルートもあるではないか」と電話したところ、この件については知らないという。通常であれば、警察や環境省から連絡があるはずだそうだが、この件については環境省に確認するとの回答だった。

確かに、記事をよく読むと、「環境省の手続きを経て」と書かれている。

はて、何の手続きだろうか? 記事には書かれていない。

確かに、ワシントン条約附属書Iの動物の国内流通に関する規制を所管しているのは環境省だ。しかし、密輸で押収されたワシントン条約附属書Iの動物は、種の保存法で定められている国際希少野生動植物種の登録を行うことはできない。この登録は商業取引する際に必要なもので、当たり前だが、この登録を行ったら最後、密輸個体が市場に流通してしまうことになる。そのようなことが起きれば、摘発した意味がなくなる。

しかし、今回の山陽新聞の記事の書きぶりだと、国際希少野生動植物種の登録がされておもちゃの王国へ譲り渡されたと、ふつうは感じるのではないだろうか。

環境省にも問い合わせたが、やはり今回の件は聞いていないので調べるとのことで、回答を待たされた。

展示は中止されたが…

今回のホウシャガメは、東京に本拠地がある「一般社団法人エコロジー・カフェ」という組織から、おもちゃの王国が「引き取った」と報道されている。「引き取った」というからには所有権の譲り渡しがあったと感じるのがふつうだが、環境省の回答によると、所有権はあくまでエコロジー・カフェにあるのだという。10年以上前の事件の被害個体であり、CITES違反(外為法違反)ではなく、国内に入った後、種の保存法違反で摘発された事件の被害個体であるため、経済産業省のルートに乗らなかったらしい。

今回の飼育場所の移転については、かなり脱法的な判断がされていると感じるので、具体的な環境省の判断を書くのは止めておくが、これが通じるならあれもこれもとなりかねない事態ではある。エコロジー・カフェについては、以前別の動物の飼育場所移転の際に相談があって、そのとき手続きなしでOKとしてしまったため、今回も同じことだろうとエコロジー・カフェは考え、環境省に相談なく飼育場所を変更したという説明だった。(つまり、山陽新聞の記事は間違っていて、今回の飼育場所移転について、環境省の手続きは何らとられていない。)

しかし、おもちゃの王国に聞いたところ、飼育はエコロジー・カフェの職員が行っているわけではなく、おもちゃの王国の従業員がエコロジーカフェの監修を受けて行っているという。環境省から聞いた説明と異なる点もあり、納得し難いものがある。

なんといっても、「自然学習センター」は、おもちゃ王国の入場料を払って入る場所にある。餌やりや、名前募集などで宣伝して客寄せに使おうとしたのはのは明らかだ。どう見ても、密輸個体が商業利用されている。

こんなふうに使われるなら、種の保存法違反で摘発した意義が失われるのではないか。

JAZA加盟の動物園・水族館でも、密輸被害個体を展示し、こういった違法取引に生態系が脅かされていることについて普及啓発しているケースはある。バックヤードの非常に狭いスペースで飼われるより、ましであろうという話も聞く。しかし、そうした展示ができるのも、経済産業省とJAZAとの契約が正式にあるからだろう。それに、そもそもそれらの場所はもともと動物園・水族館であり、他の動物だって世界中の生態系から奪ってきたものの末裔だが、社会は一定程度存在を認めてしまっている。(認めたくはないが)そういう場所だ。しかし、環境省のやり方では、そもそもなぜエコロジー・カフェだったのかが不明朗だ。

そう思っていたところ、環境省から指導があったのかどうかはわからないが、おもちゃ王国は、これらのホウシャガメの展示を取りやめた。まっとうな判断がされてうれしい。企業は、社会貢献を装って、本業の金儲けに生きものを使うような、あいまいな態度をとらないでほしい。

密輸が摘発されても、野生に戻れない動物たち

野生から連れ去られ、小さく囲われたスペースで過ごさなければならない動物たちは、本当に気の毒だ。さらに寿命が長ければ、気の遠くなるような時間を、そこで過ごさなければならない。違法取引が原因なら、さらに怒りを感じる。

環境省が扱うことになった今回のような密輸被害個体も、経済産業省のように、所有権は国に残したままで飼育のみ寄託する契約を結ぶことが望ましいのではないかと環境省に言ったところ、寄託の予算がないとのことだった。

がっくりきて思い出したが、考えてみれば、この話は昔から問題になっているのである。国が保護飼育するような施設をつくるべきだという意見もある。しかし、犯罪の尻拭いに予算をつけるということは、「違法取引やってください」といわんばかりでもあり、動物福祉に理解の乏しい国では実現が難しいこともよくわかる。

さらに日本は市民セクターがとても弱い国で、本当に申し訳ない気持ちになる。

そもそも悪いのは違法に国内に持ち込む人々なのだが…今回のカメたちが、より快適な余生を過ごせることを願ってやまないが、予算がないならないで、エキゾチックアニマル需要を低減させる「予防」について、もっと真剣に取り組まないのはなぜなのだと疑問に思うばかりだ。

(注:第一種動物取扱業の登録については担当者がいないとのことで確認できておらず、岡山県は個別事例について電話では答えられないとのことで、現時点では未確認です。サイトに登録番号等の掲示はありません。当初の「自然学習センター」発足に関するページは、既に削除されました。)

▼野毛山動物園の展示例


▼盗難の可能性があり、防犯カメラなどの対策が必要なのが現実(写真は野毛山動物園です)

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