「中国、研究用サルの違法取引の危険性に目覚める」と題する記事
SIX TONEというサイトに、「中国、研究用サルの違法取引の危険性に目覚める」と題した長い記事が発表されています。中国の製薬業界における実験動物の需要急増により、野生捕獲されたサルの大規模な違法取引が加速しており、数千匹の生きた霊長類が非臨床試験のために密輸されていることがSIX TONEの調査で判明したとあります。
In China, thousands of wild-caught monkeys are being illegal…
カニクイザルの密猟・密輸の多さに驚愕
昨日ブログに広西桂東霊長類開発実験有限公司の有罪判決について載せましたが、密輸で摘発された霊長類繁殖施設は複数あり、決してこの施設だけの問題ではありません。
記事によれば、製薬会社による薬事申請が急上昇中の中国では、認可されたサル繁殖施設が50カ所以上あるそうですが、サルの生産数をふやすことに苦戦しているとのこと。
サルの成長や繁殖には時間がかかり、マカクザルの子が販売可能になるには2歳になる必要があります。メスが出産適齢期に達するまでには最低4年かかりますが、年に2回以上出産させることはできず、通常は1回に1匹の赤ん坊しか産みません。
新型コロナウイルスのパンデミックにより野生動物の輸出入が止められたため、サルの需給は中国でもひっ迫し、2022年秋にサルの輸入が解禁されたあとも、まだ足りない状態が続いています。
犯罪組織は、野生で捕獲したサルを「飼育下で繁殖したサル」として偽装することで数百万元稼ぐことができるため、違法取引のインセンティブが高い状態が続いています。違法捕獲して密輸なら、育てるコストもかからず、すぐ売れます。
2002年から2015年にかけて、ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区当局は、中国に密輸された合計1,696頭のカニクイザルを押収したとのこと。そして、中国の製薬ブームが始まった2016年以来、密輸されたカニクイザルを15,829頭という驚異的な数で押収しているのだそうです。驚愕です。
ほとんどの積み荷が当局の目を逃れるため、国境を越えて密輸されたサルの数はさらに多い可能性が高いと識者は述べています。
アカゲザルも違法取引されてきた
また、中国の司法データベースによると、中国当局は2002年以来、1,700頭以上のアカゲザルを密猟または不法所持したとして犯罪者を起訴してきたそうですが、これらのサルのうち何匹が実験用を目的としていたかは不明とのこと。確かに中国は動物園のための違法取引も多いのですが、やはり実験用アカゲザルについても大規模なロンダリングが行われている可能性があると見るべきでしょう。
2023年2月、四川省南西部の都市、雅安市の警察は、全国的なサルの密猟組織を解体したと発表。このグループは四川省でアカゲザルを捕獲し、登録された会社を通じて飼育下繁殖のサルとして販売していたとのこと。
また、最近もう一つ注目を集めた事件として、中国で「猴王」(猿王)として知られる王正武の失脚が挙げられています。王氏が設立したバイオ医薬品会社「Hengshu Biotechnology (四川横竖生物科技股份有限公司)」は、国内外の非臨床試験に使用するために数千匹のサルを飼育していましたが、2021年、 四川省の密猟者からの野生のアカゲザルを1頭 2,000元で買っていたことが捜査で判明し、王氏は逮捕されました。同社はそのサルを飼育下繁殖されたサルだと偽り、 7 万元で販売していたと伝えられています。
日本の動物実験は大丈夫?
記事では、カニクイザルがこのままでは絶滅してしまうこと、野生のサルがさまざまな感染症を媒介するリスクなどに言及していますが、どこまで真剣に対策がとられているのか、全く不明で恐ろしい限りです。
中国もそれなりにサルの違法取引は取り締まってきたということはわかりますが、違法取引の汚染がどこまでひろがっているかは、外部からはまったくわかりません。
現在、中国からのサルの輸出は止まっていますが、日本も以前はたくさん中国から輸入していました。
また、日本の企業は中国の施設でサルを用いた非臨床試験を行っていると思います。
はたして日本が行う動物実験も、本当に密猟・密輸のサルに頼ってこなかったと断言できるのでしょうか。深い疑問がわいてくる記事でした。
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