霊長類の輸入数および国際取引状況

霊長類は、すべての地域から原則輸入禁止ですが、試験研究用または展示用のサル(厚生労働・農林水産大臣の指定を受けた試験研究機関または動物園で飼育されるもの)に限り、指定の地域から輸入可能です。すなわち、愛玩用の輸入は禁止です。
指定の地域とは、アメリカ合衆国、インドネシア共和国、ガイアナ協同共和国(但し2002年から停止中)、カンボジア王国、スリナム共和国、中華人民共和国、フィリピン共和国(2015年9月~2017年7月まで停止されていた)、ベトナム社会主義共和国で、これらの国からは輸入が可能です。(これらの国以外からは特例となる)
霊長類輸入のほとんどが動物実験用です。展示用の霊長類の輸入はごくわずかと考えられ、時折、例外規定によって指定地域以外からも認められることがあるだけです。
目次
日本の霊長類の輸入数推移(総数)
貿易統計からみた、日本の霊長類の輸入数(総数)の推移です。右下がり傾向にあるものの、ここ数年、やや増加に転じています。
日本の霊長類の輸入数推移(国別)
国別に見ると、下記のようになります。
年度 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 |
中国 | 3429 | 4537 | 5257 | 2911 | 3398 | 3538 | 2142 | 1247 | 1420 | 1942 |
ベトナム | 1098 | 1496 | 1219 | 1252 | 863 | 1107 | 579 | 798 | 820 | 727 |
フィリピン | 550 | 646 | 688 | 552 | 723 | 1007 | 774 | 474 | 495 | 705 |
インドネシア | 346 | 1120 | 478 | 315 | 161 | 162 | 234 | 42 | 64 | - |
カンボジア | - | - | - | - | - | 415 | 1358 | 2022 | 2608 | 3351 |
スリナム | 146 | 35 | - | - | - | - | - | - | - | - |
オランダ | - | - | 1 | - | - | - | - | - | - | - |
アメリカ | - | - | - | - | - | - | - | - | 4 | 2 |
シンガポール | - | - | - | - | - | - | - | 1 | 1 | - |
インド | - | - | - | - | - | - | - | - | 20 | - |
計 | 5569 | 7834 | 7643 | 5030 | 5145 | 6229 | 5087 | 4584 | 5432 | 6727 |
年度 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
中国 | 2650 | 1722 | 1756 | 1446 | 681 | - | - | - |
ベトナム | 492 | 1167 | 1486 | 743 | 1278 | 1812 | 1804 | 1100 |
フィリピン | 125 | - | - | 70 | - | - | - | - |
カンボジア | 1673 | 3113 | 3374 | 2108 | 2820 | 3011 | 3071 | 4505 |
計 | 4940 | 6002 | 6616 | 4367 | 4779 | 4823 | 4975 | 5605 |
※エクセルシートはこちら
補足
国ごとにサルの衛生条件が定められています。
日本にサルを輸入可能な海外の施設の一覧は「農林水産省が指定する施設」のページをご覧ください。
日本へサルを輸出する際の検疫施設として指定されている現地施設の一覧です。農林水産省のサイトでも公表されました。 農林水産省:感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する規則第4条の規定に基づき、農林水産大臣が指定する施設[…]
輸入時に、動物検疫所とは別に企業や研究機関が自施設で検疫を行うことができ、幾つかの施設が指定されています。これらのその施設が日本に実験用のサルを輸入している主力だと考えられます。平成30年時点の一覧については、こちらの記事をご覧ください。
密猟・密輸を経て動物実験用にカニクイザルを集めていた中国の会社から、日本にサルが来ていることを今朝投稿したが、実は去年、中国からのサルの輸入数が大きく下落している。それに代わってカンボジア、ベトナムからの輸入が増加していた。[…]
実験用サル輸入関連年表
2005年7月1日:試験、研究・展示用以外のサルの輸入禁止
2010年:新日本科学がカンボジアから輸入開始
2014年:日本クレアがインドネシア事業撤退
2015年:JAL空輸廃止、エボラでイナリサーチがフィリピン輸入停止
2019年:中国で大型の密輸摘発事件
2020年:コロナ禍 中国がサルの輸出停止
2022年:アメリカでカンボジアからの大型の密輸事件立件
内訳はカニクイザルが多い
霊長類は全ての種がCITES(ワシントン条約)付属書掲載種であるため、取引データベースから種ごとの輸入数内訳を知ることができます。
2018年の輸入数でいうと、カニクイザルが4669匹、アカゲザルが212匹となっており、カニクイザルが圧倒的に多いことがわかります。(※上記の貿易統計の表・グラフは年度で掲載しているので、年の統計とは差が生じます)
絶滅危惧種が実験用に捕獲されている!
IUCNレッドリストは絶滅の危機(EV)に更新された
2020年、IUCN(国際自然保護連合)は、レッドリストでのカニクイザルの絶滅の恐れの程度を、「危急種(VU)」に引き上げました。個体数データは不足していますが、減少傾向にあり、種の将来に対する懸念の高まりが反映された結果です。
そして、2022年3月、これはさらに「危機(EV)」(A3cd)に引き上げられました。カニクイザルは、野生において、非常に高い絶滅リスクに直面しているのです。
実験目的での繁殖のために、野生から収奪し続けることは、正しいことでしょうか?
Established in 1964, the IUCN Red List of Threatened Species…
ワシントン条約でも取引量の多さが検討課題になってきた
カニクイザルは、CITES(ワシントン条約)でも取引量が多いことについて懸念が持たれており、動物委員会で検討がなされています。その際の資料より、国際取引の現状です。
※合法取引の数値に基づいて作成されています。東南アジアから中国への実験用カニクイザルの密輸が国際的に問題になっていますが、その数は含まれません。(下記参照)
実験用カニクイザルの密輸摘発!
アメリカ
アメリカから驚くべきニュースが入ってきました!11月16日、カンボジア政府の野生生物保護の担当職員が、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港で身柄拘束され、なんと容疑は実験用カニクイザルの密輸等だというのです!これまで長[…]
中国
▲中国の報道の動画中国でカニクイザル2735匹のベトナムからの密輸の摘発がありました。これまでで最大規模だそうです。主犯が捕まり、サルたちの行き先は広西梧州市の動物実験用にカニクイザルを繁殖する会社だったことが明らかにな[…]
中国では、昨年、動物実験用の繁殖施設へ向けてカニクイザル2735匹がベトナムから密輸されていたと報じられ、PEACEのブログでもこのことをご紹介しました。(こちら)この事件では主謀者の呼び名は「阿六」と報じられており、広西チワン族自[…]
EUは野生捕獲されたサルを使用禁止に
EUでは、野生由来のサルの実験利用ができなくなります。詳しくはこちら。
ヒト以外の霊長類の動物実験利用は「原則」禁止EUでは、2010年の実験動物保護指令により、ヒトを除く霊長類全てについて、実験利用が原則禁止になりました。ただ禁止は「原則」であり、使用の特例については、3段階で規制されています。 […]
実験動物の空輸問題
実験動物を国際輸送するエアラインに対し、輸送を止めるよう働きかけるアクションが活発に行われています。詳しくは各ページをご覧ください。[sitecard subtitle=エジプト航空・ワモスエア url=https://animal[…]
動物実験に使われるサルたちについての記事一覧です。目次実験用ニホンザルを繁殖する国家事業[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/experiments/[…]
最新の動向は活動報告ブログ<動物実験カテゴリ>をご覧ください動物実験について知ろう[caption id="attachment_21728" align="aligncenter" width="640[…]