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カンボジア・ベトナムからの実験用霊長類の輸入が増加、中国からは激減

密猟・密輸を経て動物実験用にカニクイザルを集めていた中国の会社から、日本にサルが来ていることを今朝投稿したが、実は去年、中国からのサルの輸入数が大きく下落している。

それに代わってカンボジア、ベトナムからの輸入が増加していた。

(データは貿易統計より。サルの輸入は、ほぼ100%、動物実験用と考えてよい。詳しくはこちら。このページのグラフも新しいものに差し替える予定。)

なぜ中国からの実験ザルの輸入が大きく減り、カンボジア、ベトナムからの輸入が増加しているのか、理由は調べ切れておらず、はっきりわからななくて申し訳ない。

関係はないかもしれないが、去年から今年にかけての実験用霊長類の動向をいくつか挙げておきたい。

実験用のサルを輸入していた企業の倒産

資料を整理していたところ、去年事業停止を行い、今年に入り破産手続きが開始された株式会社日本医科学動物資材研究所のパンフレットが出てきた。

PETAもターゲットにしていたコーヴァンス社(Covance)の実験用ビーグルを輸入していた会社という紹介の仕方をしてきたが、実際にはマウス、ラットはもちろん、サルややブタなども扱っていた企業だ。実は以前、同社のウェブサイトには、日本航空を使って動物を空輸していることが書かれていたが、日本航空は2015年に実験用のサルの輸送は止めている

実験用カニクイザルについては、パンフレットには下記から輸入していると書かれていた。

ベトナム:NAFOVANNY社
中国:広西雄霊長類実験動物繁殖公司
カンボジア:VANNY-BIO-RESEARCH (CAMBODIA) CORP., LTD.(2か所の生産拠点から)

しかし、日本医科学動物資材研究所が10月頭から事業停止していたことは、そこまで輸入数に大きく影響していないのではないか?とも思う。

なぜなら、サルの輸入に際して、国の動物検疫所とは別に自施設内で検疫を行うことができる「指定検査場所」を持っているのは、以下の6か所であり、日本における実験用霊長類輸入の主力はこれらの企業・大学と思われるからだ。

ハムリー株式会社 筑波研究センター動物技術研究所1号棟
株式会社イナリサーチ 第8棟
株式会社ボゾリサーチセンター 函南研究所
国立大学法人滋賀医科大学 動物生命学研究センター
イブバイオサイエンス研究所
株式会社新日本科学
(「平成30年(2018年)動物検疫年報」より)

日本初のBウイルス発症

上記のうち、新日本科学については、去年、Bウイルス感染者の発症が2名発覚しているが、1人目の発表が11月で、2人目が12月。同社が情報を伏せているとの告発が拡散されており、もっと前からわかっていたのではないかと考えられるが、それでも、この件が中国からのサルの輸入の減少に関係があったかというとわからない。

野生のニホンザルも広くBウイルスを保有しているし、実験ザルの中にも感染ザルがいることはわかったうえで、これまで広く使われてきた。日本で発症者がいないのは、野性のサルと歴史的に共存しているため、免疫があるのではないか等々言われてきていた。

また、新日本科学は、プレスリリースには「近年、弊社ではカンボジアと中国において、BV陰性のサル繁殖に成功しており、現在、弊社が国内で飼育する殆どのサルがBV陰性です。」と書いており、もしこれが本当なら、中国とカンボジアに差があるようにも思えない。

ちなみに、新日本科学の日本語サイトの「海外主要拠点」リストに入っている中国の「肇慶創薬生物科技有限公司」は、日本にサルを輸出することのできる農林水産大臣の指定施設だが、「SHIN NIPPON BIOMEDICAL LABORATORIES (CAMBODIA) LIMITED」のほうは指定施設にはなっていない。英語サイトや株主総会資料には、グループ会社(連結子会社)として、カンボジアから以下の2施設が載っており、これらの2施設は、指定施設だ。

TIAN HU (CAMBODIA) ANIMAL BREEDING RESEARCH CENTER Ltd. (ティエン・フー・カンボジア・アニマル・ブリーディング・リサーチ・センターの施設)
ANGKOR PRIMATES CENTER INC. (アンコール・プライメイツ・センター・インコーポレーションの施設)※()内は農林水産省による表記

本来なら問い合わせてみるべきだが、新日本科学は質問には回答しない企業ということがこれまでの経緯でもはっきりしており、この件については保健所に質問を送るにとどめている。(回答はもらえないまま、新型コロナウイルス騒動になってしまったが)

全体の輸入数に影響しそうな会社ではあるが、何とも言えないところだ。

中国の動物実験用繁殖施設へカニクイザルを密輸していたグループの摘発があった

これも影響があったのかどうかわからないが、今朝投稿した通り、中国で去年、動物実験用繁殖施設へカニクイザルを密輸していたグループの摘発が公表された。

輸送中の現行犯での摘発があったのは一昨年だが、密輸グループの構成員について、昨年、検察が起訴している。

このようなことが明らかになった企業から実験動物を輸入するべきではないが、中国の資料を見ていると「広西桂東霊長類開発実験有限公司」の過去のサル取扱数はあまり多くないようだ。だからこそ、密輸のサルが占める割合が高いのではないかと感じるのだが、これも日本への輸出数にどれだけ影響したかはわからない。

トランプ大統領が中国からの輸入関税を上げると、アメリカのサルの動物実験に打撃?

アメリカでは、サルを用いる動物実験も、中国とアメリカの間で起きている関税引き上げなどによる貿易摩擦、いわゆる「米中貿易戦争」の影響を受ける可能性があるらしい。サルに対する関税引き上げは、アメリカの生物医学研究所を海外に移動させるかもしれないとする報道があった。

アメリカの研究機関が使う実験用サルの80%が中国からの輸入に頼っており、もし10%の輸入関税が実行されるとアメリカの科学研究が優位性を失うと、全米生物医学研究協会(National Association for Biomedical Research; NABR)は訴えているそうだ。トランプは研究推進なのに、政策はサルの実験に打撃を与えようとしているというわけだ。

もちろん動物の権利団体であるPETAは、サルの輸入を禁止するか、より高い関税をかけろとの意見。関税が上がれば需要が抑制され、中国での繁殖のペースも落ちるかもしれない。

アメリカの科学者は、中国の科学研究の進展を脅威に思うだけではなく、アニマルライツ運動に勝利をもたらすことが嫌ということのようだ。

ちなみに全米生物医学研究協会は、実験動物の空輸をできるようにしろと政府に働きかけたり、動物福祉法の規制緩和を求める動きを支援したりしている研究者側の圧力団体だ。

もしアメリカが中国に進出すると、日本にも影響があるのか? すでにアメリカは多くの中国のサルを使っているので何とも言えないが、動向として挙げておく。

新型コロナウイルスの影響で中国が実験用サルの輸出を実質、中止?

新型コロナウイルスの影響で、中国政府は、食用を目的とする野生動物の捕獲・取引・輸送の禁止や、野生動物を食べる習慣の根絶などを定める決定をした(詳しくはこちら)。

実験用や展示用などは禁止の対象ではないのだが、この措置により実験用のサルの輸出が事実上、止まっていると報じる記事があった。

実験用、展示用等について、「厳格な審査・批准及び検査・検疫を行わなければならない」とする要件が原因のようだ。

記事を読むと、中国が研究で優位に立ちたいため、海外の研究者のアクセスを断とうとしているのか?という穿った見方もできてしまいそうだが、サルの輸送に慎重にならなければいけない理由は、新型コロナウイルスそのものにもあるだろう。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染実験は、BSL3(バイオセーフティレベル3)での取り扱いになる。少なくとも日本では厚生労働省がそのように通達している。つまり、ペスト菌や炭疽菌を扱うのと同じレベルで病原体の封じ込めを行うことができる、高度な施設が必要になる。

そして新型コロナウイルスは、マカクザルに感染する。中国からの公表を見ると、感染するだけでなく、発症もするようだ。

これは教えてもらって気が付いたことだが、もし万が一、意図せぬ新型コロナウイルスの感染が実験用のサルに蔓延すると、サルを用いた動物実験全体が、非常にまずいことになるかもしれない。新型コロナウイルスの動物での挙動はまだよくわかっておらず、自然に治ってしまうから問題ないとされる可能性もあるが、万が一、サルから人間に感染するということなると、とてもまずい。実験結果にも未知の影響があるかもしれない。

世界中のサル実験施設で、今、サルに感染させないように注意が払われているだろうということだ。

そうなると、むやみに移動させないことも重要であるし、検疫にも神経質になるだろう。

動物を用いた研究から、まずます脱却が求められる時代になったと言える。

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